第51話 ※勇者side 魔剣奪還依頼

宰相は勇者のいる部屋へと赴く。

勇者の部屋の前には二人の兵士がいるが、兵士程度では勇者の相手にならず、監視と雑用要員であった。


 「宰相、お疲れ様です。」

 「うむ、勇者様はおるかね?」

 「はい、今日は他に二人もいるようです。」

 「では、はいるとしよう。」


コンコン


 「誰だ?」

 「宰相のディンスにございます。緊急の連絡があり、参りました。」

 「よし、入れ。」

 「失礼いたします。」


ドアを開け中に入ると、ベッドにはメイドに膝枕でくつろ勇者。騎士の中でも顔が整ったものにおやつを食べさせてもらっている剣聖と賢者がいた。

勇者は寝転がったまま、宰相に問う。


 「なんのよう?」

 「勇者様のために魔剣を用意いたしました。」

 「俺にふさわしい魔剣だって、いいなそれどこにあるんだ?」

 「それがですね、奪われてしまいました。」

 「なんだと!」


驚きとともに起き上がり、宰相に向かって殺気を放つ。宰相は殺気にやられそうになるが、顔には出さず、話をつづける。


 「奪った相手はこの国での一番の悪党と恐れられるリンガともうする者にございます。このリンガは勇者様に魔剣を献上されると聞き、自分こそが魔剣にふさわしいと奪っていったのでございます。」

 「俺よりふさわしいだと、勇者の俺もなめられたものだな。」

 「はい、まことに許されざることにございます。ですので、魔剣の奪還を勇者様にしていただきたいのです。」

 「奪還か。」

 「はい、勇者様はまだ、この国では無名にございます。いくら、国から認められても民には伝わりません。そこで、今回の魔剣の奪還とともにリンガを討てば、英雄として凱旋することができます。」

 「凱旋ってパレードみたいなもんか・・・。いいな。」

 「もちろん、剣聖様と賢者様にも民達に感謝されることになりましょう。これは歴史に名を遺す偉業となりましょう。」


騎士達に夢中になっていた二人も偉業の話を聞き、やる気をだす。

 

 「一般人のイケメンが押し寄せてくるかもよ。」

 「プレゼントももらい放題・・・。ふふふ。」

 「おっし、俺達勇者パーティが悪党を倒してやろう、準備しろ!」

 「はい、かしこまりました。」


これで勇者の誘導は終わった。後は聖女・・・。


その後、聖女の自室を尋ねる。

部屋の前には自分の見たことのない兵士がいることに気づく宰相。

 「ん?見たことのない顔だが。」

 「一週間前ほどに配属になったもので、宰相様に挨拶することもなく、申し訳ありません。」

 「いや、よいよい。聖女様は?」

 「室内で読書をしております。」

 「そうか。」


コンコン

 

 「はい、どなたでしょうか?」

 「宰相のディンスにございます。入ってもよろしいですかな?」

 「はい、どうぞ。」


室内に入るとテーブルには本が重なっており、今しがた呼んでいる本にしおりをはさんでいる聖女がいた。


 「お久しぶりです、宰相様。」

 「お元気そうで安心いたしました、聖女様。今回は依頼に参りました。」

 「依頼ですか?」

 「今回、勇者が極悪犯を討伐にいくこととなりまして、聖女様にも来てもらおうかと思いまして。民の安寧のためにも参加してもらいませぬか?」

 「そうですか、私でよければ協力いたします。」

 「ありがとうございます。では、これから準備に入りますので、明日およびするまでに身支度をお願いいたします。では、失礼いたします。」


用件をいった後、すぐに宰相は外へとでた。

部屋に一人になった聖女は不安に襲われた。


 「極悪犯ですか。この世界は命の価値は低い。最悪、殺すことになるんでしょうが、私達は大丈夫なんでしょうか、先輩・・・。」


先輩、カサネに向けた言葉は誰にも伝わらず、宙へと霧散していった・・・。

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