第46話 ゴブリンの巣

洞窟の入口から見てみると入口付近は暗く、奥にはかすかにオレンジ色の光が漏れている。

奥で、火を焚いているんだろう。

これだけ暗いと灯りが欲しいが、気づかれる可能性が高い。少し我慢して慎重に進んでいこう。

俺は解説を使いながらジリジリと進んでいく。

洞窟は見たところ岩が見えるだけでコケも生えていない。いや、生えていないワケではないが、えぐれている後がある。


 (ゴブリンって雑食か?)

 『ここは食料がとれにくいからな、コケも食料なんだろう。』


10m進んだところで解説に反応あり。


 落とし穴

  たて50センチほどの穴がある。


こんなところに落とし穴か。ゴブリンにも罠をしかけるくらいの知能はある?前に戦った奴は棍棒振り回すだけだったけどなあ。

落とし穴を回避して、奥へと進む。

段々と火の灯りが近付き、広間が見えてくる。

壁に張り付き、覗き込んでみるとゴブリンの群れを発見する。

焚火を囲んで、踊っていたり、棍棒でチャンバラをしていたり、眠っていたりしている。


 (やっぱ、ゴブリンはゴブリンか。リム準備はいいか?」

 『おうよ、パラライズ!』


宙に浮かぶリムのページが開き、電撃がゴブリン達に放たれる。

 

 バリッ!


広場全体に電撃が落ち、ゴブリン達の動きが鈍る。

そこに俺は剣を持ち、突撃する。

最小限に振るうのを意識して、料理人の目をもって、首の動脈に向けて剣を踊るように振っていく。

俺の動きが止まるころにはゴブリン達は地に伏していた。


 (これでゴブリンはやったか。)

 『お疲れ。』

 (おう、お疲れ。じゃあ、はぎとるk・・・!?)


その時、広場の奥から火が飛んでくる。

俺はとっさに横に全力で飛ぶ。が、火は焚火に直撃し、燃えた木の破片が飛んでくる。

少し、足にやけどを負う。リムの少し本の端がこげている。


 (くっ!やられた。火を使うゴブリンがいたのか。)

 『アツッ!?こいつなめるな!』


リムが反撃でパラライズを放つ。が、横から飛んできたゴブリンの死体に当たり、不発に終わる。

 

 (な、何!?)

 『やばい、いまので魔力が。もう打てないぞ。』


こちらの動揺を見たのか暗がりから独特の笑い声を上げながら、ボロ布をまとい、杖を持ったゴブリンとこちらの体格と同じくらいの丸太を持った通常よりも体格のいいゴブリンが現れる。

俺は解説結果を見る。


 名前 ゴブリンマジシャン

 スキル 火魔法


 名前 ホブゴブリン

 スキル 繁殖 腕力強化 指揮


こいつらはゴブリンの上位か!落とし穴をつくらせたのは多分指揮の能力。そして、火魔法・・・。リムの救援は期待できない。後はキリヤだが・・・。いや、ここは一人でなんとかする。

ゴブリンマジシャンが杖をこちらに向ける。杖の先端から火が出始め、火の玉になって飛び出す。

それを回避しつつ、近付こうとしたが、横から丸太の一撃が落ちてくる。

これは絶対に回避しないとやられると思い、大きく回避。マジシャンとの距離が開く。

そこにまた火がこちらに向かう。

どんどんとゴブリンマジシャンから離れていく。どうにかしないと壁に追いつめられる。ここはあれを使う。

俺は剣をアイテムリストにしまい、ある鞭を取り出す。

これはスキル玉「パラライズ」を仕込んだ鞭。頭の上に丸太を構え、振りおろそうとするホブゴブリンの顔めがけて鞭を振るう。

 

 ビシッ!バリッ!


 「ギャッ!?」


当たった瞬間パラライズが発動。通常の大きさのゴブリンよりは効き目が薄いが、衝撃で腕から丸太が落ち、頭に当たる。


 ゴン!


 「ギャッギャ!?」


これでしばらく頭がふらつくはずと俺はゴブリンマジシャンに向かうが、その目のまえに火が迫る。

俺はアイテムリストからスライムゼリーを取り出し、ぶつける。


 ゴウ!


スライムゼリーは燃え尽き、火の勢いが減ったところで顔を腕でかばいつつ、火に突っ込む。


 ジュッ!


少し熱いが耐えられないほどではない。そして、開けた視界には動揺するゴブリンマジシャン。

俺はアイテムリストから左手に円型の武器を取り出す。円月輪ともいう投擲武器をダラスさん頼んだものだ。それをゴブリンマジシャンに投げる。

ゴブリンマジシャンは動揺しながらも横に回避。すぐさま、杖をこちらに向ける。

俺は左手を左に振る。すると投げた円月輪がクンと曲がり、ゴブリンマジシャンの右肩へと刺さる。これは円月輪につけていた細いワイヤーを活用した結果だ。


 「ギャア!?」


突然の痛みに杖を離すゴブリンマジシャン。俺はその隙を見逃さず、ふとももに巻いたスキル玉「脚力強化」の効果を発動。

ゴブリンマジシャンの顔にとび膝蹴りを放つ。


 ゴッ!


鼻がつぶれる嫌な感触を感じる。ゴブリンマジシャンはこの攻撃で後ろに倒れる。俺は態勢をすぐに建て直して、鞭を剣に持ち替え、首めがけて、突きさす。

首に深々とつきささる剣。ゴブリンマジシャンは声も出せぬまま、死んだ。

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