第47話 VSホブゴブリン
ゴブリンマジシャンをトドメをさし、息を吐き出した、その時、風圧を感じる。
とっさに身をよじり、ゴブリンマジシャンの上から体をどける。
グシャッ!
そこには丸太に潰されたゴブリンマジシャンの姿があった。
「ガアアア!?」
もう自分以外のゴブリンがいなくなったことに激昂したホブゴブリンが丸太をめちゃくちゃに振りながらこちらにしかけくる。
丸太を振るたびに岩が砕け、ゴブリンの死骸がつぶれ、俺の足の踏み場がなくなっていき、後ろのゴブリンの死骸に足をとられる。
(し、しまった!?)
目のまえには横振りでせまる丸太。なんとか剣の腹を前に出し、それに左手を添えることで防御することができたが、当たった瞬間に左腕から嫌な音がした。
ゴッ!ピシッ!
多分、左腕の骨がおれたんだろうが、そんな痛みも丸太の勢いで後ろへ飛ばされ、壁に背中を打ち付ける痛みがまさった。
この世界に来て、初めての大きなダメージで、そのまま、壁を背にして座り込んでしまう。
そして、ホブゴブリンはというとやっとまともに攻撃が当たったことに上機嫌になり、ゆっくりとこちらに近付いてきていた。ホブゴブリンといえど、本性はゴブリンのままらしい。
『畜生が!』
リムがそれを阻止しようと本の角で頭に突撃しようとするが、それを軽く腕を振ることでいなし、リムは地面に叩きつけられる。
(リム!?)
『くそ、パラライズが使えれば・・・。』
リムが動けなくなると、ホブゴブリンはリムを無視して、そのまま俺の前に来る。
そして、丸太を振り上げ、全力で振り下ろそうとしてくる。
ここは覚悟を決めるか。
俺は一か八か丸太をアイテムリストに入れるのを意識する。
すると、俺の頭に直撃する瞬間に丸太が消え去る。いきなり消えた丸太に腕の勢いも受け、前に態勢を崩し、俺の目の前にホブゴブリンの顔が近付く。
俺はホブゴブリンの目に向けて、右手に持った剣を突き出す。
ズブ
「ギャアアアア!」
剣は右目に突き刺さり、ホブゴブリンは後ろにのけぞりながら、剣を抜こうとする。
俺はその剣をアイテムリストに入れ、右手だけで地面から起き上がり、震える足でなんとか前に踏み出す。
そして、右手に剣を出し、料理人の目で見えた胸の切り込みやすい部分に剣を今できる力を持って突き刺す。
だが、ホブゴブリンが暴れるせいで上手く刺さらない。これ以上は無理と判断し、剣は差したまま、後ろに下る。
その間に鞭を出し、剣の刀身に巻きつけるように振る。
後はパラライズを発動する!
バリ!
剣を通し、ホブゴブリンの内部に電撃が浸透する。これで倒れるか?
電撃が終わった後、ホブゴブリンが前のめりに倒れ、勢いで胸に刺さっていた剣が胸を突き破る。
なんとか倒すことができた俺は大の字に倒れこんだ。
しばらく、休んでいると影が差す。
「大丈夫か?」
「いや、限界。」
キリヤが様子を見に来たようだ。
「そうか、お前にしてはやった方だ、認めてやろう。」
そういって、飲物を俺の口に突っ込んできた。
いきなり突っ込んでくるから、歯にあたりジーンとした痛みを感じたが、その痛みは引いていく。
「!?」
「ポーションは初めてだったのか?普通、飲んでるだろうに。」
ポーション、薬草と水を原料に魔力を入れながら煮詰めると作れる薬。飲めば、ある程度の怪我が回復する。現に左手の骨折、足の怪我が回復してきたと感じた。
「おお、これがポーションか。まだ、治ってないから、自分のも飲んでおこう。」
俺はアイテムリストよりポーションを取り出し、飲んでいく。2本も飲むと手を握るのも違和感がなくなるくらいになった。ファンタジーっぽい。
「で、キリヤさんどうするんですか?」
「どうするとは?」
「俺のスキルと魔導書について・・・。」
洞窟での戦いはほとんど見られたと考えていいだろう。よく見ると、岩壁にナイフが突き刺さっているのが見えた。あの位置は先ほど俺の頭に丸太が振りおろされる高さ。もし、あのままであっても丸太は外れていたのかもしれない。なので、脅されるようなことはないと思う。
「お前のスキルについては主に聞いているし、魔導書があるということも事前に調べてある。まあ、実力は知らなかったが・・・。主の害にはならないと判断した。」
「そうですか。とにかく、リムも回復してやらないと、って魔導書にポーションって効くのかなあ?」
「さあな、やってみればいい。」
俺はリムに近付き、ポーションを垂らしてみる。
すると、本が少し治ってきたような気がする。
俺は勢いよく、ポーションを一本まるごとぶちまける。
絵面的にポーションの緑色に浸かった本というのがなんとも言えないが癒えていくのがわかり、ほっとする。天日干しすれば、なんとかなるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます