第38話 ※スポンサー

 「失礼いたします。旦那様、例の武具屋より販売許可の書類が届いております。」

 「お、久しぶりに来たね。で、どんな内容かな?」


退屈な書類との格闘のさなか、でてきたのは自分好みの店の書類。

どんな面白いものを作るのかウキウキしながら、執事より受け取る。

書類に目を通すと、スキル玉のアクセサリーだった。

 

 「スキル玉のアクセサリーか。武器なら見たことあるが、アクセサリーは初めてだな。」

 「効果は消化、発動すると自分の回りの汚れを吸収してくれるとのこと。」

 「なんだ、掃除いらずじゃないか。で、使用上限は?」

 「ないとのことです。」

 「ない?どんなスキル玉でも限界はあるだろう。」

 「なんでもこのスキル玉は魔力も吸収することで壊れるまではいつまでも使えるようです。」

 「マジかあ。」

 「マジにございます。」


報告を聞いた男は目を手でおおい、空を仰ぐ。

報告を終えた執事はすまし顔である。


 「これは貴族にばれるワケにはいかないな、暗部増員も考えないといかないな。」

 「このスキル玉の提供者も監視せねばいけませんからね。」

 「で、提供者の特徴は?」

 「提供者は黒髪の青年だそうで、最近、冒険者になったとこのこと。」

 「黒髪?そういや、今回、呼んだ勇者の中に黒髪のがいたらしいが。」

 「はい、二人ほどいたそうですが、一人は追放されたと。」

 「ハズレジョブでも引いたのか」

 「いえ、冒険者ギルドからの報告によりますと剣士、実技試験でもAランクのアインに勝つなど、城を追放されるようなものではないかと。」

 「偽装スキルの持ち主だと?」

 「この町には調査系スキル持ちがダンナ様しかいませんからね、欺くのはたやすいかと。」

 「ふむ、この青年はどこにとまっている?」

 「銀狼の休み処ですね。」

 「元Sランクの銀狼のところか。今度、行ってみるか。」

 「行くときに護衛はどうしますか?」

 「そうだな。ギブソン、お前の息子はどうだ?」

 「実力はついていますが、護衛経験はさほどございません。」

 「あの店で手を出す輩など実力を図り間違えたザコしかいないだろう。護衛の経験にもなる。」

 「かしこまりました。息子に伝えてまいります。」


執事が退室して、男は窓の外を眺める。

 

 「日本人・・・か。この国の行く末を左右することになるかもしれないな。」


執事は息子に会いに訓練場へ向かう。

訓練場の扉を開けた際、正面からナイフが飛んでくる。

それを人差し指と中指で止め、横へと投げる。

そのナイフに先には黒い影、その影はナイフをかわし、執事につかみかかる。

執事は身をかがませ、手を回避すると黒い影の無防備は腹に掌底を当てる。

黒い影は掌底の衝撃でポーンと執事の後方へと飛んでいくが、空中で回転し、足から着地する。

黒い影が態勢を立て直し、前を向いた時には首にナイフをそえる執事の姿があった。

 

 「これで終わりですね、まだまだ負けるワケにはいきませんよ。」

 

ニコリと笑うとナイフを首から離し、クルリと掌で回転させ、黒い影にナイフの柄を差し出す。


 「ちぇっ、まだまだ無理か。」


ぶすっとした顔でナイフを受け取り、ナイフをしまう黒い影。


 「さて、キリヤ、あなたに任務を与えます。」


空気がガラリと変わり、執事の真剣な顔をみた執事の息子キリヤは姿勢をただし、その後の言葉を待つ。

 

 「今回、当主様がある店を訪問すつことになった。あなたはその護衛としてつきなさい。」

 「それは影としてですか?」

 「いいえ、あくまで護衛としてです。」

 「表に顔を出していいのですか?」

 「ええ、かまいません。今回、接触する相手には友好的にお付き合いさせていただくことになりそうですからね。」

 「珍しいですね、御当主様が入れ込むなんて。何かあるんですか?」

 「今後の私達の動きも変わるかもしれません。」

 「それは・・・。」

 「まあ、確定したワケではありませんが、重要な任務になることでしょう、頼みましたよ。」

 「はっ!命に代えても・・・。」

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