第36話 鍛冶屋
報酬をもらい、ギルドを出た俺は以前、装備をレンタルした店へと足を運んだ。
「すいません!」
「いらっしゃい。って、カサネのボウズか。レンタルの期間ならまだ余っているだろ?」
確かに一度借りてから、レンタル期間を増やしていて、まだ返却にはなっていない。
「今回は相談がありまして。」
「相談?それを買い取りたいってとこか?」
「愛着ありますし、いつかはと思いますが、今回は鍛冶屋を紹介しくれませんか?」
「鍛冶屋だと?知り合いにはいるが、材料費と加工費あるのか?武器をつくるとなると結構するぞ。」
「いえ、武器ではなく、料理器具がほしいと思いまして、その材料はこちらです。」
俺はバッグから出すように両手に銅と鉄を出す。
「ほお、これはカッパーゴートの角と鉄鉱石か。この素材だと西門の岩山か。」
「はい、今日、とってきました。」
「この大きさなら、余った金属渡して、安くつくれるだろう。よし、いまから行くか。」
店主とともに店をでて、鍛冶工房のある区画の奥に入る。
そして、到達した工房はシンプルな見た目をした外観で作品のたぐいは見当たらず、武器をつくっているとは思えない内装だった。
でも、奥からはハンマーを叩きつける音が聞こえるから、ここが鍛冶屋だと実感する。
「この店はお得意様限定でな。ウチに卸してもらって、買ったやつが気にいったら、ここの紹介がされるってわけだ。」
「俺は認められたってことでいいんですか?」
「そうじゃなきゃ、ここにいないだろ。」
店の内装をみながら、会話していると奥から女性がでてくる。
ふくよかで気のいいおばちゃんといった感じだった。
「おや、ガッドじゃないか?」
「おっす、メイル。今日は依頼にきたぞ。」
「依頼ってこの子かい?ふーん、その防具使ってどれくらいだい?」
「2週間ってとこだな。」
「ふんふん、2週間の間にずいぶん使いこんだ感じね、これは合格かね。さて、どんなのが依頼だい?」
「今回作ってほしいのはコレですね。」
あらかじめ、書いておいた調理器具の絵を見せる。
フライパン、深鍋、フライ返し、トング、お玉、泡だて器、ジューサー。他にもあるが今回はここまでにしておく。
「へえ、料理のためにこの工房使おうと・・・。初めてだよ、そんな依頼。よし、乗った!」
「いいんですか?」
「この店ね、オーダーメイドっていっても暇なのよ。ガッドのとこを利用している人しか来ないからね。それにいままで作ったことがないものに挑戦するのもいいじゃないか。」
「それで、素材なんですが、これです。」
先ほどとおなじく、両手に銅と鉄を出す。
メイルさんは出された銅と鉄を食い入るように見つめる。
「カッパーゴートの角は、このまま使える状態の銅だね。鉄の方も余計なもんがあまりないから、十分つくれるね。ダンナに呼んでくるよ。」
そういうとメイルさんは絵を持って、奥の鍛冶場に呼びにいった。
しばらくするとハンマーの音がやみ、奥から中学生くらいの背をしたゴツイ体の髭もじゃな男が出てくる。
「ドワーフ?」
「おう、俺はドワーフだが、お前がこれを依頼した小僧か。」
「はい、カサネっていいます。」
「カサネだな。じゃあ、これの構造を詳しく話せ。」
俺の目のまえに泡だて器とジューサーの絵をつきだしてきた。
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