第16話 神のきまぐれとスキルの検証
「ふーん、アレが僕のつくったスキルを持っている子か。うーん、もう少し刺激がほしいな」
研究室のような暗い部屋の中でカサネ達のいた空間を映す液晶画面のようなものを見つめる白衣姿の男。
「そうだ、たしかこの辺に・・・。あった!」
ゴチャゴチャとした室内をゴソゴソと探し、一冊の本を手に取る。
「そして、これをそーれ!」
部屋のドアを開け、本を外へと放り出す。本は外に出たときにフッと消えていった。
「これであの子に近い場所に送れたな。さて、あの本がどういう変化をしてくれるか楽しみだなあ。」
これからのあの世界に何か起きるのをウキウキしながら、彼はまた作業に戻っていった。
「待ってくれ!」
俺はその言葉とともに眠りから覚めた。夢はしっかりとわかっている。
「・・・。ともかく確認しよう。」
自分の回りに透明な枠があるのを意識する。たしかに枠が見える。次に枠内の自分のいるベットを意識する。
ベット あまり人が寝ていなかったのが年季の入っている割にふかふか。
解説の機能もちゃんとできているようだ。次は小さいものをアイテムリストに入れてみよう。手頃なところで、枕か。
枠の端っこにある枕を入れる意識をすると枕が消える。
「アイテムリスト」
アイテムリストを確認すると枕が確認できた。確認したところで枕を出してみる。
うん?
「なんかキレイになってないか?」
入れる前には少し汚れていた気がする枕が汚れが落ちて白くなっているように見える。ふと枕の置いてあったところをみてみるとうっすらとほこりが見える。
「汚れと生き物はアイテムリストからはじかれるのか?」
そうなると実用性がグンと上がる。掃除なんて簡単そうだ。だが、
「このスキルは他人にばれるとまずいな。辺りを気にしながら、いける時だけやるとしよう。」
他にもアイテムリストにだし入れして、汚れをまとめ、掃除していった。
ある程度の掃除ができたところで、部屋をでて、下へ降りると、仕込みをしているジャンさんの姿があった。
「おはようございます。」
「おう、おはよう。はやいな。」
「普段、この時間に起きるようになっているんですよ。」
「えらいもんだ、冒険者なんてな、酒が入って、昼に目覚めるくらいな奴が多いから、見習わせたいとこだな。」
「ははは、俺も手伝いますよ。何すればいいですか?」
「じゃあ、これを切っておいてくれ。」
そう言って渡されたのはキャベツ。解析でもキャベツと出る。野菜はどこも共通の名前・・・。なんでだろうか?それとも自動的に変換されているのか?まあ、それはおいておこう。
「千切りですか?」
「いや、ザク切りだな、後で炒める。」
「炒めるですか。他の作り方ってしないんですか?」
「他ってなんだ?」
「茹でる、蒸す、揚げる・・・。色々とありますよ?」
「聞いたことないな、貴族はそんな調理法があるのか?」
「え!ええ、ありますよ・・・。」
貴族がどう料理してるかなんて城の料理くらいしかみてないからよくわからない。でも、焼き物がほとんどだった気もする。そこからは説明しながら、仕込みをしていく。
「ほお、冒険者の頃は凝った作り方なんて、外じゃ出来ないから、そんな方法があるとはわからなかったな。よし、明日は休みにして、市場にいくぞ!」
「そんな急に休んでいいんですか?」
「冒険者なんてもんはな、食べられりゃなんでもいいのさ。それに一日休んで、知らない美食にありつける方がいいに決まってる。」
「できる限り頑張りますね。」
ワイワイと会話ていると階段から降りてくる足音が聞こえる
「ふわあ、おはよう・・・。」
寝ぼけ眼のシャルちゃんがそこにいた。髪がところどころ跳ねている。
「おはよう、やっと起きたか、カサネは起きているのにお前は朝弱いなああ。」
「はは、おはよう、シャルちゃん」
目をこすりながら、こちらを確認したシャルちゃん。段々と目が覚めてきて、顔が赤くなっていく。
「カ、カサネさん、違うんです、違うんですよ!」
アワアワして、否定しながら、階段を上がっていくシャルちゃん。その後ろ姿をみながら、俺はジャンさんと笑っていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます