第12話 アインの来店
厨房で火の番をしてくれていた常連さんにお礼をいい、仕事を再開させる俺たち。
「そういや、カサネよ。お前泊まるとこどうするんだ?」
「近くに宿ってありますか?」
「近くにはないな。城近くは高いし、それに夜になるとここいらは危ないぞ。お前自衛できるか?」
「自信ありませんね。」
「じゃあ、住み込みでいいじゃねか。その方が娘とカミさんが喜ぶし。」
「いいんですか?」
「部屋も余ってるからな。後で鍵を渡すぞ。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、そろそろ客が来る時間だから、娘を呼んできてくれ。」
「わかりました、いってきます。」
その後の仕事は前の時間よりも慣れもあるのかスムーズにことが運び、客足が少なくなってきたころ、アインさんが現れる。
「シャルちゃん、おやっさん、帰ってきたぜ!」
「あ、アインさんお帰り~。」
「おう、ご苦労さん。いつものでいいか?」
「ああ、よろしく。で、カサネの働きぶりはどうよ?」
「うん、助かってるよ。ね、お父さん。」
「ああ、いい感じだぞ。娘とカミさんが認めるくらいにはな。俺もだが」
「マジか、銀狼が認めるか。俺の目に狂いはなかったというワケだな。」
「狂いはなかったって、路地裏で助けてもらっただけで判断したのは数秒じゃないですか。」
俺はアインの前に水の入った水とフォークなどをおきながらいう。
「こら、ここは年上の顔を立てるとこだろうが。」
「感謝はしてますが、受付嬢のリナさんにも言われてたでしょう、思いつきで行動してるって。」
「なんだ、またリナに呆れられたのか、アイン。その様子じゃまだまだなんだな。」
「お、おやっさん、別に俺はリナのことなんて・・・。」
「はやく、なんとかしないととられちまうぞ。と、コレ、アインの分だ、配膳頼む。」
「はい、わかりました。」
ぶつぶつと言い訳を繰り返すアインの前に料理を置く俺。
「ああ、もうとりあえず喰って忘れるに限る!」
もうめんどくさいとばかりに料理に口をつけ、ガツガツ食べ始める。それを見つつ、横でテーブルをふいていたシャルちゃんに小声で質問する。
「アインさんって、リナさんのこと好きなの?」
「うん、幼馴染みたいだよ。でも、距離が近すぎて、告白しづらいみたい。」
「ふーん、思いつきで行動とか言ってるけど、俺助けてくれたのってもしかして。」
「点数稼ぎかも?」
まあ、助けてもらったのは善意だろうし、打算ありでもこうして働くことができたんだから、ヨシとしよう。
シャルちゃんと話している間にさっさと食べ終わったアイン。
「食べるのはやいですねえ。」
「冒険者っていうのはな、食べれる時にはさっさと食べないといけないんだよ。野営時なんて気が抜けないしな。」
「大変ですね。冒険者って。」
「そんな中、食にこだわるものがいて、引退後に店を持つおやっさんみたいなのもいる。」
「そういや、ジャンさん達ってどんな冒険者だったんですか?」
「ジャンさん達はな、特に魔物討伐をメインにやっていた冒険者でな、素早い身のこなしから放たれるするどい攻撃、銀髪から銀狼って呼ばれていたワケだ。討伐が終わった後に討伐した魔物を使って料理つくることが多くてな、新人時代にはお世話になったもんよ。」
「へえ」
「ちなみに俺は料理ができん!」
「威張っていうことじゃないだろうが、まあ、稼ぎになるからいいがな。
「じゃあ、そろそろ俺は帰るわ、ごちそうさん。」
「あ、アインさん!」
「ん?」
「ありがとうございました!」
「おう!」
にかっと笑ってアインは去っていった。
「さて、最後の客もいなくなったところで、メシにするか。」
「「はい!」」
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