第11話 家族認定
その後、落ち着いたころには恥ずかしさで顔があげられなくなっていた。
「なにかあったんでしょう?話してみてください。」
「い、いえ、、これ以上心配かけるワケには。」
「看病のお礼くらいに考えてもらっていいですから。というか気になって眠れなくなります。」
「わかりました、話します。」
「俺、両親がなくなってから妹と兄弟二人で生きてきたんですが、妹は病気でこの間亡くなりました。生前、寝込んでいる妹にお菓子をつくって持って行くときが心休まる時でした。先程の二人が妹との思い出に重なりまして・・・。」
「それはどういっていいか、ごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「いえ、謝らないでください。大事なことを思い出せたんですから、むしろお礼がいいたいです。ありがとうございます。」
少し気まずい空気が漂う。
「あ、あのこの店にいる間でいいので、私のこと妹と思ってもらっていいですよ。」
「い、いや、何いってるのシャルちゃん!」
「私、一人っ子だから弟か妹がほしかったんです。でも仕事が忙しいからそんなわがままも言えるワケないし・・・。でも、カサネさんならいいかなと」
「そういわれてもさ、ほらシルビアさんも困っているだろう?」
「私からもお願いできませんか?この店に来るのは主人と私の知り合いが多いのでシャルと同じくらいの子っていないんですよ。」
「んぐッ!で、でもジャンさんもいきなりそんな提案しても許可してくれませんよ。」
「いや、いいけど?」
「えっ!?」
ジャンさんの声が聞こえたので後ろを向くといつの間にかドアを開け、そこに寄りかかっていた。
「い、いつの間に。」
「上から鳴き声が聞こえたからよ、厨房の様子を常連にみてもらってここに来てよ、今の話聞いてたんだよ。まあ、なんだ、頑張ったな。」
ジャンさんは優しく、俺の頭を撫でていく。親が生きていた頃、俺が妹の世話をしている時に申し訳なさそうに俺の頭を撫でていた感触とは違い、大きく、固い感触だったが悪い気がしない。
「ジャ、ジャンさん、いいんですか?まだ、採用にもなってないのに。」
「採用もなにも、カミさんと娘が認めてるんだ。採用しないと後で血の雨を見ることになる。」
「あら、やだ。病人に何言ってるのよ?」
シルビアさんが笑顔で言ってるが、なぜか冷や汗が止まらない。
「と、ともかく、病人に無理をさせるワケにはいかないからな、そろそろ仕事に戻るか、なあカサネ?」
「は、はい。そうですね、じゃあ、俺もいきますね。」
「しょうがないわね。体が治ってから話の続きをしましょうか、アナタ?」
後ろから聞こえる声に二人でビクビクしながら、俺たちは厨房へと逃げ出していった。
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