第7話 冒険者
チンピラの腕をつかんだのは皮の防具をまとった男だった。
「な、なにしやがる!」
「何って、強盗犯を捕まえているだけだぞ?」
チンピラが腕を抜け出そうとしているがビクともせず、そのままその腕にだんだんと指が食い込んでいく。
「がっ!」
「まあ、おとなしくしろよ。」
捕まえていた腕を後ろに引き、チンピラの体制を崩すと体重をかけて、壁へ押し付ける。
ドン!
チンピラの頭が少し壁にめり込んでいる。これが壁ドンか?
そのまま、チンピラは意識を失ったようで、地面に倒れこむ。チンピラを制した男は後ろ手にチンピラを縛り上げていく。
「すいません、助かりました。」
「おう、大丈夫だったかボウズ。しても災難だったな」
「はい、そういえばあなたは?」
「ああ、俺はアイン。冒険者だ。」
「冒険者?」
「ん?冒険者を知らないのか?ボウズどこからきたんだ?」
正直に説明するのはまずいと思い、多少嘘を交えて話す。
「貴族の使用人として働いていたら、いきなり城に連れてこられて、なんか使えない職業と言われて、金を渡されてほっぽり出されたんですよ。」
「なんだそりゃ?そこまで城の連中は腐ってやがるのか。そりゃ、気の毒に・・・。」
俺の恰好は召喚される前に恰好でバイトの制服。Yシャツに黒いズボン。チンピラの粗末な服に比べるのと上等なはず。これなら説得力があるかな?
「で、ボウズこれからどうするんだ?」
「追い出されたので、元の場所には帰れないでしょうし、何か仕事を探さないと・・・。」
「ふむ、ボウズ何ができる?」
「仕事で接客、料理などをしていたんですが。」
「ん!そうか、ならちょうどいい。ランクは落ちるが、知り合いの店で働いてみないか?」
「その店ってなんの店ですか?」
「飲食店なんだが、親子3人で回していて、奥さんが病気で倒れてしまって、今、てんてこ舞いなんだよ。」
「そうなんですか、それは大変ですね、俺でよければ働きたいです。」
「おっし、そうと決まれば、さっさとこいつを引き渡して、店に行くとするか。」
ウッキウキで縛ったチンピラを肩に背負い、歩きだすアイン。その背中を追いながら聞いてみり。
「そういえば、冒険者ってさっき言ってましたが、こいつは捕縛依頼でもあったんですか?」
「いいや、ねえよ。これについてはこの国の体制が問題でな。まず、城の連中は金にならないことには手を出さない。」
「え、じゃあ犯罪者はどうなるんですか?」
「特例のことなんだが、この国だけ、冒険者が犯罪の証拠さえあれば、捕縛して報酬をもらうことができるって制度がある。」
「この国だけということは他の国は大丈夫なんですか?」
「ああ、他の国はちゃんとしてる。魔王に対抗するためにまとまらなくちゃいけないからな。だが、この国はな魔王に対抗するための召喚魔法が使えるってことで他の国から支援金を奪い、後は異世界人任せにすればいいと城の
連中は贅沢三昧。犯罪者なんて気にしないんだよ。」
ああ、道理で王があんな恰好しているワケだ。
「っと、到着だな。」
「ん、ここは?」
目のまえには木製のロッジハウスがあった。
「ここは冒険者ギルド。ここでこいつを引き渡すワケだ。というワケでついてきて証言してくれ。」
「はい、わかりました。」
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