Chapter12「突入」
星屑の国、その海辺にて四人は集まる。
遂に出立の時が来た。
目的は、星殺しの神により封じられた人々の解放。
その為にカミシロに突入し、武勲を立てて聖域に入る許しを得る。
「────それが表向きの理由だが、そうは問屋は下ろさねえわけだな」
「うん、教皇たちの動きがより露骨になってるし、ルフト=ホシツキもかなり弱ってる。
・・・なんか、嫌な予感がするんだよ」
「・・・星殺しの神を、呼び覚ますつもりなのかも」
「・・・だとしたら、俺たちのやろうとすることが全然変わってくるな」
そうなると、もはや聖域内は味方じゃない。
ならば、どうすればいい?
味方と思わせるのか。
あるいは、最初から敵対者とすればいいのか。
「・・・でも、嫌な予感がするんだよ。このまま情報出るまで待っていたら手遅れな気がする」
「なら・・・乗り込むしかねえな」
鈴の一言に、士郎が乗った。
よって決断する。これからカミシロに乗り込むことに誰も異論はない。
士郎がブラストスライガーに乗り、ほか三名は船に乗り込んだ。
腹は決まった。ブラストスライガーは浮上する。
そして火を吹かして前進を開始、船はそれに引っ張られて海上を駆ける。
速度は充分、真っ直ぐにカミシロへと向かうのだった。
「いやぁ早い早い、快適だね」
「船を牽引してもこのパワーか。遺物の揃った昔はどんだけ強かったんだろうな」
海の上を快適に駆ける船。
それに乗る三人は心地よい潮風に当たっていた。
「ともあれ・・・見えたぞ」
「・・・うわ、真っ黒だ」
「真ん中のでっかい木だけ綺麗なのが尚更不気味だなぁ」
呪われた島国、カミシロ。
その島はヘドロのような黒に覆われていた。
大地も木々も、そして水さえも泥だ。
あれでは確かに近寄ろうなどとは思わない。
本能的に「あれはダメだ」と言えてしまう。
あれに飛び込んで、いったい何が得られようか。
きっと、カミシロに一度は狙いをつけようとした国々はそう考えて近寄らなかったのだろう。
そう考えているうちに、遠くに見えていた島は徐々に視界にハッキリ映るようになる。
「・・・ブラン?」
ブランは、少年の姿から戦闘形態・・・すなわち青年の姿に変化して静かに、しかし三人に聞こえるように
「来るよ」
「え────」
何が、と言おうとした瞬間
「─────っ」
クリスティアの頬に、光弾が掠めた。
何処からだと、把握する頃にはクリスティアを除く三人は戦闘態勢に入っていた。
士郎は紅の装甲、ブラストアーマーを纏い
鈴は二丁の拳銃を手に、白と黒の翼を広げて船から浮き上がり
ブランは人狼の爪を立て、船の上に立つ。
そして、何処からの攻撃か。
その回答は言うまでもなく
島の海岸に立つ、悪意の怪物からだった。
「熱烈歓迎だな。これがあの国の挨拶か?」
「お構いなく、て言っても聞いてくれないかな!?」
「郷に入っては郷に従え、という奴だ。捕まってろ」
そう言っているうちに、また怪物からは光弾の弾幕が襲いかかってくる。
「士郎!わたしが迎撃する!」
「
鈴の
「上出来だ」
その間に士郎は光弾をバイク上で回避しつつ、赤い機械式の大剣「ブラストディザスター」を銃形態に変形させる。
「まずはこいつだ」
荷電粒子エネルギーの光弾の発射。
怪物の光弾をかき消しつつ飛翔する弾は、怪物の一体を貫く。
一人倒したと、普通なら判断するが
「やはり立ってくるな」
胴体に風穴が空きつつも、ゆっくり立つ姿を見て舌打ちする。
やはり、通常弾では足りない。
「士郎!
「まだ取っておけ!コイツには、これがある・・・!」
ブラストディザスターに魔力弾が装填され、すぐに最大出力がチャージされる。
バイク上で構え、狙いを怪物の群れの端に向ける。
そして────
「
緑色の膨大な荷電粒子エネルギーが放出された。
怪物を一体ずつ巻き込むようにソレをなぎ払い、消し飛ばしていく。
「やった!」
「まだだよ」
「え」
クリスティアが喜んだのもつかの間、ブランが静かに告げる。
そう、まだ怪物は湧いてくる。
「うええ!?」
数は先程の倍。弾幕は更に激しくなった。
先程より遥かに雨あられとなったソレを、もはや鈴の
「どうする!?士郎!」
「・・・鈴、創造を発動しろ。俺も使う」
「それで・・・?」
「特攻だ」
「「・・・え?」」
「ちょいちょいちょぉおい!?正気!?ねぇ正気!?」
「クリスティア、うるさい」
「いやいやいや!死んじゃうって!」
「ごめんね、クリスティ。しっかり捕まってて!」
「うそおおおおん!?」
いま船はブラストスライガーとは繋がっていない。
「
速度はなんと、ブラストスライガーで牽引していたのと同等。
「忘れてた!こいつらみんなその気になれば国のトップクラスレベルのバケモンだったああああ!」
失念していた鈴と士郎の力。
黄金獅子の軍勢が軒並み強力過ぎて忘れがちだが、その戦いで覚醒した士郎と鈴と紫苑は国の最高戦力並の力量を持っている。
つまりまぁ、クリスティアは必然的にその力に庇護されつつ振り回されることが確実であり
「合図が来たら、全力で押すから!」
「いやだああああああ!?」
船を投げ飛ばすレベルの事など容易いわけで。
クリスティアは悲鳴を上げるのだった。
その一方で士郎は、回り込むように弾幕を回避しつつカミシロに向かってバイクを走らせる。
「そろそろだな」
『MAX HAZARD-ON』
「
紅い装甲は漆黒に変わり、瞳は真紅に輝き、バイクから飛び降りて自動で帰還するのを一瞥しながら士郎は陸に着地した。
「相撲と行くか────!」
『HAZARD FINISH!』
ハザードデバイスの最大出力。
パワーは更に圧倒的なものになり、そのまま全力で怪物の群れに駆ける。
怪物から最大の障害と認められた士郎は、厚い弾幕を向けられた。
しかし、士郎にとってはもはや遅い雨粒でしかなく
「おおおッ!!」
紅い閃光のように駆け抜けて、怪物を次々に押し込む。
十数体の怪物を纏めて捕まえ、そのまま砂浜に叩きつけた。
「─────来いッ!」
上空に荷電粒子エネルギーを打ち、合図を送る。
これで後は────
「
「待ったぁあああああ!?」
「────よいしょおおお!」
「ぎゃああああああああ!?」
鈴が船を、全力で押して海上を滑らせた。
馬車が下り坂で全速力を出すかのような殺人的な最高速度で、一気に怪物がまとめて倒れている方へ向かっていき。
「じゃあ飛ぶよ、クリスティア」
「へ?ちょ、お姫様だっ────」
最後まで言う事を許されず、陸に上がる直前にブランはクリスティアをお姫様抱っこでかかえて船から飛び出した。
砂浜に着地、ブランとクリスティアは無事に上陸。
そして
「士郎!」
「任せろォ!」
超高速で砂浜に上がり怪物をまとめて引き潰した船は、士郎が受け止める。
これも圧倒的な力で受けきり、完全にブレーキとしての役割を完遂した。
船もまた無事に(?)上陸、晴れて四人はカミシロの地に踏み込んだのだった。
「何が無事だ馬鹿ああああああ!!」
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