3 ダイヤモンド女王が嫌いな夫人に問う
〈**代アメリカ副大統領夫人ラヴィニア女史に問う〉
サァラ・クルゥ?
いけ好かないひとでしたわ。
もう夫も政治から遠ざかっておりますし、自由に言ってもよろしいでしょう?
昔、私あのひとを学院に居たころ、当初はずいぶん張り合おうとしましたのよ。
でも第一印象は「何って暗い子!」でしたわね。
それなのに特別室をわざわざ当時の学院長がポケットマネーでおべっか使って入れたりして。
とは言え、まあ二枚舌もいいところでしたけど。
まああの学院長は、先を読む目がまるで無かったですわね。
その上、生理的にサァラのことが嫌いでしたから。
だからサァラがお父上の友人、一度は逃げだしたというカリスフォード氏に見つかるまでは、それまでのおべっかの裏返しで当たる当たる。
まあ私もそれを見て笑っておりましたのよ。
でもあのひと、文句言わずに黙々と言われる通りに仕事をしていましたの。
今となっては、よく続いたな、逃げ出さなかったな、と思いますがね。
まあ逃げたら屋根の無い暮らしになることを読んでいたんですね。
だから辛い仕打ちと言っても耐えてたんだと思いますよ。
そこは私、あのひと嫌いですけど、今となってはよくまああれだけ天地がひっくり返ったような境遇になったのに順応したな、って。
それから長い時間が経って、私はアメリカに戻って参りまして、こちらの社交界にデビューした後に、彼女とは再会してそれなりに親交は深めましたが。
ええ、基本的には私今でも本当に! サァラのことは嫌いなんですのよ。
だってあのひとは、人を人と思っていないんですもの。
あの院長は、サァラが消えてから、それまで見下していた妹教師の癇癪を怖れる様になりましてね。
そういう時、階段に座ってぶつぶつつぶやいていることがよくありましたの。
私その頃、興味を持って耳を傾けたことがあるのですけど。
サァラのせいだ何もかも! というのが大半でしたわね。
そしてその中で、時々つぶやかれていたのは、
「いつもいつもあんな時にもずっと自分がプリンセスのつもりだったなんて、いつも皆を見下して!」
まあ実際そうだと思いますのよ。
彼女が結局結婚しなかったのは、そのせいだと私は思うのですわ。
だって、サァラにしてみれば、自分は常にプリンセス。
あとは基本下々のもので、自分と同じ位置に居るのではないんですから。
ベッキィ…… レベッカにもお聞きになりまして?
彼女はもう、最初からお嬢様お嬢様、サァラが落ちぶれた時もお嬢様とこっそり呼んでましたもの。
そして呼ばれる側もそれを許していたという神経は、私には到底理解できませんわ。
求婚されれば基本的にどんな男でも一応付き合ってみた、と?
そりゃあ無理でしょうね。
隙も無い、そして自分を無意識に見下している女は絶対に異性として好かれないのですよ。
たとえダイヤモンド鉱山の共同主になれたとしても、自分の心が壊されるくらいだったら、と男達は逃げ出すんですよ。
気付いていないのはサァラだけじゃなかったのではないかしら?
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