2 ダイヤモンド女王の友に問う
〈腹心のレベッカ嬢が語る〉
サァラ様は――ええ、ご本人は敬称などもうつけないで欲しい、とおっしゃるんですが。
それでも私からしてみたら、あの方は私を学院の小間使いから、鉱山の女王の側仕えに昇格させてくださった恩人ですもの。
亡くなったカリスフォードの旦那様にお願いなすって、私をもあの酷い職場からお引き取り下さって。
サァラ様は友達と言ってくださりますが、いえいえ私からしてみれば、決して友情ではなく、私が感じているのは忠誠です。
そこはどうしようもありません。
あの方が当初のお嬢様として学院にいらした時、お部屋の掃除中、つい心地よさげな椅子に座って、そのまま寝てしまっても、怒ることも、当時の雇い主の女史に言いつけることなく見逃してくれ、お菓子を下さった時から、もう私はこの方に一生お仕えしようと思いましたもの。
……あの方のご結婚ですか。
あれは――どうしようもありませんね。
基本的にあの方は求婚されれば受けてきたのですよ。
どんな方でも。
ええ、不思議な程誰の申し込みでも。
境遇が人を左右するものではない、というのがあの方の信念ですから。
自分に求婚する度胸があるならば、何かしらの良いところがあるのだろう、と常にその相手の良いところを探して誉めていくのですよ。
すると、次第に相手の男がですね、途中で逃げ出してしまうのです。
こればかりは、私がどう言ったところでサァラ様は理解できないところだと思います。
私も結婚は結局致しませんでしたが、どうにもあの方の男性に対する様子を耳ているうちに、男女関係ってどうなのだろう? と思ったところはありますね。
とは言え、サァラ様ご自身が現在幸せならば、私は別に構いません。私はあくまで忠実なあの方のしもべですから。
あの方がどう思おうと。
*
〈長年の友人である某夫人に問う〉
サァラが何故結婚しなかったかってことですよね。
何故でしょうね。
私の様な凡人からすれば、あのひとの壮大な計画に相手が耐えられなかったのじゃないか、とかそう思ってしまうんですが。
あ、そうそう。確かこのたびのもの凄い不況で資産を一気に無くした人々へも援助を行うとか。
うちは彼女から早いうちに銀行の破綻とか聞かされておりましたの。
「今のうちに銀行から資産は引き出して金に換えておくべだわアーメンガァド」
って、昔の様にファーストネームで呼んで注意してくれたんですよ。
あのひとは本気の注意の時には、私の名前の方を呼ぶんです。
古風で風変わりなこの名をあのひとはとても好いていたから、私が結婚したのち、公的な場では**夫人と呼んでましたが、そうでない時は、心を込めてこの名を呼んでくれるんですよ。
ええ、今も大好きです。
でもやっぱり私は頭が良くないから、あのひとの言うことの半分も理解はできないのですよ。
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