いくらダイヤモンド女王でも嫌なものは嫌だったんだ。

江戸川ばた散歩

1 ダイヤモンド女王に結婚について問う

「サァラ、婚約を破棄させてくれ」

「まあフレッド、何故なの? もしや、あの可愛らしい方のこと?」

「それもある。だが君のそのいつも全て判っている様に見られると、僕は息が詰まりそうなんだ……!」

「私にはそのつもりは全く無かったのだけど…… でも貴方がそう思うなら、きっとそうなのね。いいわ」

「そういうところだよ! まるで真綿で首を絞められる様だった。彼女は君ほど賢くはないが、暖かい家庭を築けるだろう」



〈フォーチュン・タイムス誌上におけるミス・サァラ・クルゥの独占インタビュウより〉


 ……ええ、以上が私の婚約破棄の事情です。

 私としては、その時、彼が言うことをさっぱり理解できませんでした。

 と言うか、今でも理解できません。

 彼がそんな思いをしていたというなら、何故私にその都度言ってくれなかったのでしょう?

 そうしたら、私もそれ相応の対応をしたと思いましたのに。

 でも彼は言えなかったのですね。

 何故なんでしょう?

 でも彼が望むなら、と私はその時はそうしました。

 仕方ありません。

 私も好かれないひとにわざわざすがりつくような真似はしたくありませんでしたから。

 でもそれ以来、確かに男性とのご縁というものはありませんね……

 とは言え、私は各地に孤児院を設置致しまして、両親を亡くしたり、何らかの理由で育ててもらえない子供達を保護する活動をしておりますので、家庭を持つことができない寂しさとは縁はありませんわ。

 私も両親を早くに亡くしておりますので、彼ら彼女らの辛さは多少なりとも判るつもりですの。

 この人生の中では一瞬かもしれませんが、私自身、十歳からそこらの頃、故カリスフォード氏に発見されるまでの一年くらいでしょうか。

 借金を抱えた親無し娘ということで、それまで通っていた学院で無給で働いておりましたから。

 その時、芯から身体が疲れても食べ物を与えられない時にはなかなか寝付けないことなど、まだ思い出すとぞっとすることですの。

 でもその時のおかげで、私の腹心レベッカ嬢と真の友情を結び、今もずっと一緒に活動してくれておりますの。

 本当に男性には縁がありませんのよ。

 大概この様に言われて断られてしまうのですの。そうでなければ、私の資産狙いですか。

 資産狙いでも、私は構わないのですけどね。実際そういうひとも時おり居ましたのよ。

 もう明らかにダイヤモンド鉱山目当てだというひとでも。

 だけど何故か、そういうひとも途中で飛び出してしまうのですの。

 不思議なものですわね。

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