農家な時間 ~冬は一日が短い~

こんにちは&こんばんは!

田舎で農家の嫁(見習いをしている)小烏です。

ちなみに、残念ながら新妻ではありません。

夫のUターン(義父の死で)で、農家一年目をやっています。


 山間部の小さな米農家なので専業では食べていけず、夫は地元のシルバー人材センターの事務をしています。

つまりサラリーマンの兼業農家です。

義両親もやはり専業では厳しかったようで、以前は夫婦でちいさな工場こうばをしていました。


 周りの農家もほとんどは兼業農家。

そして実際に農作業しているのは80歳前後の後期高齢者。

前期高齢者の方々は、まだ現役でお勤めをされているのです。

専業でされているのは大手メーカーさんに作物を納めている大規模トマト農家さんくらいです。


 さて、義母は先祖代々この地で百姓をしている由緒正しい農家の娘です。

嫁いだ「小烏」家も代々の農家。

米のほかに「タバコ」の葉の栽培や「養蚕」、牛飼い(と、このあたりの人が言う、子牛を産ませて出荷する仕事)をしていたようですが、一家の主がそれまで勤めに出たことはありません。

農業以外の仕事を始めたのは義父が最初だそうです。


 とはいえ農業をしながらなので朝食前に田んぼ仕事をして、朝食後二台の軽トラで山の中ほどにある工場こうばへ。

昼前に義母が一足先に帰宅して昼食の用意。

昼はかたずけを義祖母に任せて、二人でまた工場こうばに。

夕食の準備のために義母がまた一足先に帰る、という生活だったそうです。

当時まだ元気だった義祖母 が子育て(孫育て?)と畑を担っていたと聞きました。

だからでしょうか。

夫は義祖母が骨折で入院した時、大泣きしていました。


 さて、夫婦二人でやっているその工場も今時いまどきのように時計に合わせて始業・終業ではありませんでした。

時計とは関係なく、その日の予定が終われば終業。

暗くなって手元が見にくくなったら終業。

外仕事の農業と同じです。


 つまり、小烏家の日常は時計でなく、お日様によって動いていたのです。

明るくなったら畑や田んぼに出て、暗くなったら帰る。

義母にはそれが身に染みているようでした。


 それがわかったのは、去年の冬、同居してしばらくたった頃のこと。

厚い雲に覆われ小雨もパラつく、どんよりした寒い一日でした。

義実家の夕食は夏は7時過ぎ、冬は6時過ぎくらいに食べ始めます。

小烏は夕食の準備を始めた所でした。

もう外は暗くなっていて、義母は居間のコタツに入って相撲を見ていました。

その義母がもそもそとコタツから出てきて、食卓に座りました。


  アレ?こんな時間から?小烏は思いました。


 炊飯器のスイッチを押したばかりで、まだ鍋のひとつも煮えていません。

しばらく椅子に座っていた義母は、冷蔵庫から作り置きの入ったタッパーを取り出して食卓に並べました。

台所のテレビをつけ、タッパーのサツマイモの甘煮をつまみながら相撲を応援しています。


 ????

コタツが飽きたのかな?

お腹がすいた?

それとも何か話があるんだろうか?


 その時義母が口を開きました。


「もうこんなに遅いのに、お父さん(夫のこと)はどうして帰ってこんの?

今夜会合?」


 時計を見るとまだ5時前。

夫の業務は5時15分までです。

しかもワンオペ。

当時引き継いだばかりの仕事は残業が多く、定時に帰ったことはありません。


 「お義母さん、5時になっていないのでたぶんまだ仕事中です。」

「え?まだ5時?

そげかね。あんまり暗いからわからんかったわ。」


 義母は台所のテレビを消して、居間に戻りました。


 その後も何度かこういうことがありました。

おそらく、義母の生活リズムでは「暗くなったら帰宅して夕ご飯」とプログラムされているんだろうなと思います。


 そして今日も、食卓にタッパーを並べ、取り皿を並べ、お箸を用意してテレビを見ています。

ご飯が炊けるまであと、30分。

夫はまだ仕事。

ご飯はまだですよと、声掛けするかどうか悩む嫁なのでした。
















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