第8話 砦の人々

 丘の上の見張り台には今日も、数人の当番兵が立っている。全員集合の合図があったとしても、さすがに見張りまで居なくなってしまっては不味いので、ここの持ち場にいる兵だけは動かないことになっているのだ。

 ユッドが見慣れない少年と一緒に登ってきたのに気づいて、一人が声を掛けてきた。

 「あれ? お前、行方不明って聞いたのに戻ってたのか。その子は誰なんだ」

 「ああ。ちょいと厄介ごとに巻き込まれてた。さっきの招集もその件だよ。こいつは、カリムの知り合いんちの子だ。ちょっと景色見せてやろうと思って」

 「ふーん」

見張りの兵は、それ以上は何も聞かず、視線を元の方角に戻した。ユッドの説明を不審に思った様子もない。

 他の仲間たちから距離をおいて、ユッドは、見張り台の端まで歩いた。

 風が吹き抜けてゆく。

 少し登っただけだが、丘の上からは周囲一体が見渡せた。ごちゃごちゃとした砦の建物はもちろん、その先に広がる川の東西の、対象的な風景もはっきりと。

 「あれは…」

リュカが見つめているのは、川の東側にある細い街道と、その先に広がる畑と村だった。

 「あー、あれが、ここからいちばん近い村。」

 「村…人間の住処…ですよね」

 「そ。ここは砦で、基本は戦える奴と、メシを作るとかの世話役しかいない。子供とか、若い女の人とか居ないだろ? 村に行けば、いる」

 「……。」

無言のままに見つめる少年の視線はやけに熱心で、何がそんなに気になるのか、ユッドには不思議だった。

 「そんなに、村が気に入ったのか?」

 「あ、いえ。妖精族の住処とは、ずいぶんと雰囲気が違うな、って…。」

振り返って、リュカは僅かに俯いた。

 「その、…村も、この砦も、そこにいる人間は種類が違うだけで、見た目はほとんど同じ…でしょうか」

 「んっ?」

 「僕は、ここでは人間だと思われているようですから。」

 「あー。そういう意味なら、そうだな。地方によって外見はちょっとずつ違うけど、あんたは間違いなく人間にしか見えないな。」

少年の言わんとしている意図に気づかないまま、ユッドは、大きく頷いた。けれど、相手は浮かない顔のままだ。

 「…どうした?」

 「やっぱり、そうなんですよね。この外見、妖精族”らしく”はない、…ですよね。」

明らかに沈んだ様子で、彼は、ちらと見張り台の反対側にいる、さっき声を掛けてきた若い兵のほうに向けた。

 「フィリメイアは何も言いませんでしたが、僕はおそらく、同族の中ではかなり浮いていると思うんです。見た目も…それに、力も。」

 「気にしてんのか」

 「少しは。流石にこうも誰も疑ってくれないと、自分が何者なのか自信が無くなりますね」

 「うーん。難しい問題だなあ…。」

ユッドは、思わずあごに手をやって考え込んだ。

 「だけど、その外見のお陰で余計な説明せずにあんたを砦に入れられたわけだし。人間じゃないってなると、疑ってかかったり、意地悪言う奴は絶対出る。それよりは、いいんじゃないのか?」

 「確かに…。」

 「あと、たぶんさ、分かる奴には分かるんだよ。カリムの爺さんは見抜いてたじゃないか。それにフィリメイアも言ってたけど、あんた自分の縄張り持ってるんだろ? あの立派な森。外見とか気にしなくても、それで十分、誇れるんじゃないのか?」

 「……。」

 「オレなんて次男だしさあ、優秀な兄貴もいるから、継げる家も持ってない。なんにも取り柄もないし…。それにさ、妖精族の間じゃどうか知らないけど、あんた人間の基準だとかなり見た目がいいほうなんだぞ。少なくとも、人間には好かれると思う」

 「そう…なんですか?」

 「ああ。妖精族って美人ばっかりだっていうけど、そういうところは”らしい”と思う」

少年の表情が少し明るくなり、はにかむように少し、笑った。

 「…それなら、悪いことではないのかもしれません」

再び視線を風景へと向けたリュカは、しばらく周囲を見渡していたあと、ふと、何かを思い出したような、はっとした表情になった。

 「――そういえば、少し聞きたいことがありました。」

 「ん?」

 「さっきの、カリムという人と…その…兵士長という人の他に、昔からいる人は、どのくらい残っているのでしょうか」

質問の意味を理解するのに、僅かに時間を要した。

 だがユッドはすぐに、聞きたいことに気づいた。

 「あんたの森のことを知ってる人、って意味か? だったら多分、ここが今みたいにピリピリした空気になる前だろうから、最低でも、十五年以上前になるのかな。そんな昔からいるのって、カリムと兵士長くらいだけと思う」

 「……。」

その答えには、満足していなさそうな雰囲気だ。少し考えて、ユッドはさらに言葉を継いだ。

 「あー、もしかして、昔の知り合いを探してたりするのか? だとしたら、それはちょっと探せないかもしれないな。古参は、十年前の戦いでほとんど戦死してるはずだから」

 「え?」

少年の表情が僅かに、動いた。

 「”大侵攻”だよ。竜人族が大挙して奇襲かけてきた事件。川向こうが廃墟ばかりになっちまったのは、その時なんだ」

言いながら、ユッドは振り返って反対側の、住む者の居なくなった荒れ果てた平原の方に視線をやった。

 「想定外の大群で押し寄せてきて、どうしようも無かったらしい。村も町も次々焼かれて、人間は根こそぎ殺された。もちろん人間の側も応戦はしたが、数が同数なら不利になるのは人間のほうだからな。この砦はルーヴァ川の防衛線で辛うじて持ちこたえたけど、出撃した兵はほぼ全滅。生き残ったのは、ごく僅かに運の良かった人間だけ。――そのうちの一人が、ラーメドさんだって話だ。カリムはたまたま、その前の戦いで負傷して生き残ったから現場は見てない、って言ってた。」

 「その人は…どうやって生き残ったんですか?」

 「そりゃ戦って、だろ? 当時からすっごい強かったらしいから。どういうわけか竜人の毒が効かないらしくて、人手不足になったあともこの砦が落ちなかったのは、ラーメドさんのお陰だって言われてる」

 「……。」

ユッドとしては当たり前だと思っている知識を語ったつもりだったのに、少年は、どこか浮かない表情だ。

 「…もしかして、知り合いなのか?」

はっと顔を上げて、リュカは、大げさなほど首を振った。

 「いえ。顔を見たことがあるくらいで…大した関係では」

それだけ言って、彼は口を閉ざした。妙な雰囲気だ。かと言って、軽々しく聞ける雰囲気でもない。

 どうしたものかと言葉に詰まっていた時、少し離れた鐘楼台の上から、交代の時間を告げる鐘の音が響き渡った。

 はっとして、ユッドは太陽を見上げた。さっきより随分傾いている。――もう、こんな時間だ。


 見張り台の上にいた兵士たちが大きく伸びをして、やれやれというように肩を回した。

 梯子の下から、交代の兵士が登ってくる。さっき声をかけてきた兵士は、ちらりとユッドたちのほうを見た。

 「俺は交代で降りるが、お前らはどうする?」

 「あ、オレらも降りるよ。こいつを今夜泊める部屋を準備しないといけないし」 

 「へー泊まってくのか? ここはお下品な連中も多いから、気をつけてやれよ。ははは」

下らない冗談を飛ばしながら、若い兵士は交代の兵士と入れ替わるようにするすると梯子の下へ消えてゆく。

 「次の場所へ行くか」

言って、ユッドも後に続いた。場所を変えれば、少しは空気も変わるだろう。




 見張り台をあとに丘を歩きながら、ユッドは、さっきの気まずい雰囲気を変えようと、自ら砦の中の説明をしていった。

 「この丘の上は見晴らしがいいし、砦の入り口からも遠いだろ? 敵が侵入してきても襲われにくい場所なんだ。だから、重要な施設はだいたいここにある。司令室とか、上級士官の宿舎とか。空を飛んでくるんでもなきゃ、敵は砦のふもとから来るはずだからな。」

隣を歩く少年は、黙って頷きながら聞いている。

 「オレは新兵だから丘の下の兵舎にいるんだ。今夜、あんたに貸す部屋もそっちで都合するつもりだけど、狭くても文句言わないでくれよ。」

 「階級の差によって待遇が違う、というわけですね」

 「まあな。あんたら妖精族には、そういうのは無いよな」

 「いえ、ありますよ。」

リュカは苦笑した。

 「もしかしたら、人間よりも身分が厳しいかもしれないですね。領界の中では領界主が最上位。領界は領界主によって維持されているから当然ですね。その次が、次代の領界主候補となれる器を持つ者…これは領界主の子供であることが多いです。それ以外の者、特に羽化前の幼体と男には、何の権利も無いんです。男の子供は、成体になる頃には追い出されることが多いです」

 「なるほど、領界ってのは人間で言う一つの国みたいなもんだって、前に言ってたもんな。王や王子がいちばん偉い、ってのは人間の世界でもそうだけど…。」

いつしか、少年の表情からは、さっきまで見せていたぎこちない色が消えていた。ユッドは少しほっとして、このまま、リュカの気分を損ねない会話を続けよう、と考えていた。


 だが、思いがけない横やりが入った。

 話しながら、建物の間を抜けて見張り台に向かう小路に入ろうとしたとき、向かいからやって来る、馬の手綱を引いた若い兵士とばったり出くわしたのだ。

 「げ」

 「クレストフォーレス。何だ? その子供は」

ユッドが何か言うより早く、相手は、鋭い一瞥とともに言葉を投げつけてきた。

 同期の、――というのは士官学校の卒業とこの取手への配備が同時期だったからなのだが――兵士で、同じ士官候補生でありながら、一足飛びに新兵の段階を超え、今では古参兵たちと同じ丘の上の兵舎に部屋を構えている。

 ユッドが普段身につけているのと同じ、背中と胸の部分にルナリアの紋章が縫い取られた鮮やかな青と灰の上着は、王都の軍学校を卒業した者が揃いで身につける、一種の制服のようなものだ。ただしこちらは、ユッドのものと違ってパリっとした糊が効いて、汚れもない。

 「客人だ。事情はカリムに聞いてくれ。許可は貰ってる」

むっとしながら、ユッドはぶっきらぼうに答えた。

 昔からいけ好かない相手なのだ。

 異性受けのいいた整った顔立ちに、そつのない振る舞い。頭も切れるし、学校の成績は実技も座学も常に上位で、おまけに、名門貴族の家の出だ。そのくせ、お飾りの軍人にはなりたくないなどと言って、自ら志願して前線に配備されることを望んだ。

 生来の英雄気質なのだ。まさに、ユッドなどとは正反対だと思う。

 しかも言うこと成すことがいつも気に障るほど正しく、いつも上から目線で接されているような感覚があった。それもあってか、学校にいた時からして、ろくに会話を交わしたことがない。

 「それよりサニエル、いつも忙しいあんたがこんなところで立ち話とは珍しいな。オレなんかと楽しくお喋りしてくれる暇でも出来たのか?」

厭味のつもりだったのだが、相手は余裕たっぷりの表情でそつなく答えた。

 「まさか。部外者が砦に入り込んでいないかを口頭確認しただけだ。許可を得ているならない問題ない。さて、私はこれからロジェール司令をお迎えに上がる任務に出なくては。」

言いながら、サニエルはちらりとユッドの方に視線をやった。

 「お前のほうは、そのお客人の”接客”をしっかる務めることだな。」

言い返す暇も無かった。

 嫌味を言い返されたのだとユッドがようやく気づいた時には、サニエルはもう、丘を下り降りていってしまった後だ。

 「――何だよ、そっちこそ竜人に出くわして泣くんじゃないぞ!」

相手がとっくに見えなくなってしまってから呟いて、ユッドは、憮然とした顔で口をつぐんだ。

 「さっきの人、ユッドと同じ服でしたね」

子供、と言われたこと自体は気にした様子もなく、リュカは、ユッドの過剰な反応を不思議そうに見上げている。

 「お知り合いですか?」

 「昔なじみで、学校の元同級生。何かと頭が切れるし腕も立つし、オレなんかと違って重宝されてる奴さ」

ユッドは小さくため息をついた。

 サニエルに対しては、羨ましさと妬ましさのような感情がないまぜになって、いつも必要以上に身構えてしまう。自分でもそれに気づいているから、余計に嫌になる。

 「この砦に送り込まれてくる連中には、二種類いるんだ。ここからずっと東にある王都で士官学校に通って訓練を受けた士官候補生と、職業として募集されて集められる、元農民とかの雇用兵だ。実戦経験が無ければどっちも同じさ。最初は新兵の扱いだ。士官候補生はさ、一度前線基地に出てれば、配属帰還が終われば王都に戻った時に上級職に優先的に就ける。どうせあいつだって、そうするつもりでここへ来たんだ」

 「ユッドは? 違うんですか」

 「オレは…、」

思わず口ごもり、無意識に腰の剣に手をかける。

 「オレは…戦うために来たんだ。だって、誰かがそうしなけりゃ、このままじゃ負けちまうんだ。黙って、いつ来るか分からない全滅に怯えてるなんて嫌だ」

はっ、としたようにリュカの瞳が大きく見開かれた。

 「…自分に何が出来るか分からなくても?」

 「ああ。当たり前だろ」

 「それなら、僕と同じです」

少年は、頬を緩めて微笑んだ。

 同性と分かっているのに、思わずどきりとするような透明感のある笑顔だった。

 (――あれ? 今…)

何故なのかは分からない。まるで人間の表情だ、――と思った。

 言葉や風習をただ学んだだけでは、こんな表情は出来ない…近くで人間を観察して覚えた? いや、それなら、あのフィリメイアだって同じはずなのだ。 

 微かな違和感に首を傾げながら歩いていた時、ふと、リュカのほうが足を止めた。

 「あれは、何でしょうか?」

 「あれって?」

指した先には、地面に固定された木の台の上に斜めに傾けられた荷車の上部のようなものが縛り付けられた装置がある。

 「ほら、あの、木で組み上げたようなもの」

 「あれは…」

投石機だ、とはすぐに気がついた。

 だが、昨日までそんなものは、この砦には無かったはずだ。

 「おかしいな、いつの間に投石機なんて配備したんだろう。――あ、カリムがいる。聞いてみよう」

投石機のすぐ側で、さっき砦の入り口で別れた老兵が他の兵士と会話している。

 リュカとともに道を下って近づいていくと、カリムが気づいて振り返った。

 「おう、ユッドか。どうした、もうひと回りしてきたのか」

 「大体は。それより、どうしたんですか? この投石機」

 「ああ、それがな。昨日納品に来たいつもの武器商人が、試供品代わりだと言ってそのまま置いてったんだ。で、試しに組み上げて見た」

 「何だそれ。そんな強引な売り込みなんて…。それに、なんでこんな中途半端な場所で組み立てたんですか? どうせなら丘の上で組み立てたほうが良かったのに」

 「ん? 何でだ」

 「敵が攻めてくるならルーヴァ川の向こう側からですよね? てことは、丘の反対側に向けて設置しないと意味がない。丘の上で川の方に向けて置いておけば、平原に敵を見つけたときに打ち込めます。ここからじゃ、敵を攻撃する前に丘に建ってる兵舎を壊すことになりますよ。」

 「ははあ、なるほど! そいつは考えてもみなかったな。そうやって使うのか、さすがは士官学校卒だな。」

カリムは大げさに感心しながら頷いた。

 「ま、試しに組み立てただけで、実際に使ってみるつもりはない。次回の納品の時に返品するつもりだし、このあと解体する。こんなもん、竜人族相手にゃ使えんだろ」

 「確かに、…そうですね」

カリムの側にいる、農夫あがりで馬の世話役として雇われている男は、ただにこにこと笑っているばかりだ。

 兵士でもなく、剣よりは鋤の扱いのほうが得意で、投石機が何をする道具なのかもよく判っていない。見たことのない大掛かりな装置が珍しい、というだけで、カリムとユッドの話している内容も、半分も理解していないだろう。

 リュカは、木組みに近づいて、物珍しそうに太い心棒に手をかけた。

 「これは…どうやって使うんですか? ”投石”という名前からして、石を投げる道具なんですか?」

 「そう。でっかい石を投げて、城壁越しに中の人間を攻撃したり、城壁の向こう側から外に密集してる敵を攻撃したりするのに使う。棒の先に、台みたいなのがついているだろ? その中に石とかレンガとか、投げたいものを突っ込んで手を離す。そうしたら、反対側の重しで勢いよく棒が下がって、テコの原理で台の中身が勢いよく投げ出される、っていう仕組みだ。」

 「なるほど…。面白い道具ですね。」

 「まあ、兵器の構造や使い方は、一通り学校で習ったからな。ただ、こういうのは人間同士の戦いで使うもので、竜人族との戦いで役に立つとは思えないな。」

 「ま、こういうものは実用というよりは飾りだな。士気が上がれば何でもいい」

カリムは、あっけらかんとして言う。

 「うーん、まあ…そういうことなら。」

少なくとも、良くわからないまま笑顔で投石機を見上げている厩番のような素朴な元農民の雇用兵が相手なら、この手の大型兵器は、効果的な鼓舞材料になるのかもしれない。


 ユッドが立ち去りかけた時、ふと思い出したように、カリムが言った。

 「おお、そうだ。その子の今夜の宿だが、兵舎のほうにはさっき、話しを通しておいたぞ」

 「ありがとう」

時間はあっという間に過ぎ、日は既に西へと傾いている。

 「暗くなる前に宿舎の位置を教えとくよ。その、…あんま居心地のいい場所じゃないだろうけど」

 「構いませんよ。ここは近くに水の流れもありますし、寝心地が悪ければそこへ行きますから」

リュカは平然としている。

 「案内をお願いします」

 「……。」

異種族の集落に泊まるなど初めてだろうに、妙に落ち着いている。昨日のユッドのうろたえぶりとは正反対だ。

 新兵の兵舎、ユッドの普段寝泊まりしている場所は、最初に訪れた砦の入り口のすぐ近くにある。

 定時の見回りに出ていた兵たちも、巡回から戻ってきている。カリムが皆に伝えただろう、川のこちら側で竜人族と遭遇したという情報は、既に伝わっているようで、若い兵たちの顔にも、いつにない緊張感がある。

 (…これから、どうなるんだろうな)

ふと、ユッドは心の中で呟いた。


 安全なはずの川のこちら側で、敵に遭遇して死にかけたこと。

 人間慣れした、変わった妖精族に助けられたこと。

 その妖精とともに、砦に戻ってきたこと――。


 それらは、ほんの数日のうちに起きた出来事だった。

 何かが、これまでとは決定的に変わろうとしている。これで終わるはずがない。

 胸の奥がざわついていた。明日から、元通りの日々に戻れるとは思えなかった。


 そして、その予感は、その夜にうちに現実のものとなった。

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