ブックカバーの付け方 2022.8.4
二月からほぼ毎週火曜日の二十時に、バンドメンバーであるこめいちゃんとTwitterのスペースで、お喋りをしている。いつも一時間があっという間に経ってしまうので、タイトルは「今夜もしゃべりたりないっ!」だ。
しゃべりたりない女子トークをそのままお届けするというコンセプトで、毎週お互い好き放題に喋っている。スペースとはTwitter上で行うラジオみたいなもので、録音もできるため次の週まではアーカイブが残っている。
初めは二人でその日のテーマを考えながら進めていたが、なんとなくやり方に慣れてきて、週ごとに司会を決め各々がテーマを持ってくるというものに落ち着いた。
色々なコーナーもやってみたいのだが、一つのテーマで話が盛り上がりすぎるので、結局すぐ一時間が終わってしまう。
今週はわたしが司会の日だった。最初は夏のデートの話とかどうだろうと思っていたのだが、夏といえば…と考えていると、大好きな夏の本フェアの話がしたい!と思った。小説の中身の話も捨てがたいが、もう少し全体像の話がしたくて、本屋での過ごし方を提案してみた。
こめいちゃんも本が好きなので、色々分かち合えるところがあってとても楽しかった。以前アメトーーク!で放送していた「読書芸人」の中でピースの又吉さんが、新宿のブックファーストの歩き方を紹介していて、人の本屋での過ごし方に興味があったのだ。
そしてトークの終盤にブックカバーの話になった。わたしは最近もっぱら、ブックカバーだけもらって自分でつけるのだが、そこには妙なこだわりがある。
誰でも新品で買うときに汚されるのは嫌だろう。しかしわたしはそれが極端に気になるのだ。わたしから本を受け取る店員さんの受け取り方から戦いが始まっている。
選び抜いた本をレジは持っていく。レジではまずバーコードの部分を店員さん側に揃えて出す。表紙から渡してしまうと、本をひっくり返すという動きが生じるからだ。なるべく最小限の動きでとどめたい。
バーコードの後で店員さんは本を机に置く。その置き方もとても気になる。そんな雑な人は全くいないのだけれど、とても気になってしまう。
ここまででなんだかとても疲れている。多分息を凝らして見つめているのだろう。ここまで無事にきたとする。そしてここからが本番だ。
紙のカバーにも好みがある。紙のカバーの両端を折って本の表紙をカバーに差し込むタイプのがどうも苦手である。その差し込む瞬間に表紙の端がはずみで折れたりするのだ。その瞬間を目撃してしまうと心がヨロヨロと萎んでしまう。
実はわたしも本屋でバイトをした経験がある。だからスピードが大事なことは理解している。わたしも同じように誰かの心をヨロヨロにしたことがあるかもしれない。
だからたまに神様みたいな店員さんに出会うと本当にお供物をしたい気持ちになってくる。素早いのに丁寧で美しく、力が入り過ぎておらずマジックのようなのだ。
そんな店員さんに会えた日は重い本を持っているはずなのに足取りが軽くなるのだ。
スペースでも話したが、以前は丸一日本屋だけを梯子する日を作っていた。本屋の時間は異様な速度で過ぎていく。太陽が頭上に輝いている時間に入ったのに、一軒目を出るころには陽が傾きかけている。ひどい時は2軒目で夜が訪れる。
人を待つことは苦ではないタイプの人種だが、きっと近くに本屋さえあれば何時間も待つことが出来るだろう。
店員さんもレジでわたしの圧に辟易していると思う。だから最近は本屋にも増えてきたセルフレジで本を買うようにしている。
本棚からわたしの指で抜いた本を自分で買い、持ち帰り、一人の静かな空間でカバーをかける。わたしにとってその時間は、恍惚としたとてつもなく幸せな時間になっている。
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