希望の星みたい 2022.8.2
先日大学時代の友人の結婚式に参列した。本当は去年に式を上げる予定だったのだが、コロナ禍によって挙式を延期せざるを得なくなってしまった。
しかも一度でなく、数回延期になってしまって、本人は落胆していた。勿論私も残念な気持ちにはなったけれど、この先に楽しみが待っているのだなぁという気になっていたので申し訳ないと連絡が来るたび、楽しみにしてるから大丈夫だと返事をしていた。
式の前の数日は雨が結構降っていて、当日も雨予報が出ていた。折角だから雨が降らないと良いなと思っていたけれど実のところまったく心配をしていなかった。なぜなら新婦である友人は、強力な晴れ女だからだ。
私たちは卒業してからもよく遊んでいる部活の同期で、新婦である友人と私を含め、七人のグループLINEがある。最近の回数は少ないものの、四季折々にはご飯に行こうと企画するくらい仲がいい。
そして、そのみんなでどこかへ出かけようとするとほぼ必ずと言っていいほど、晴れるのだ。朝から雨が降っている日は彼女が遅れて参加する日だったりするし、彼女が来ると帰ることには何故か雨が上がっているのだ。
式の数日前、グループラインで予報を変えると意気込んでいたから、頑張りすぎるなと言ったのに、式場に着く頃にはカンカン晴れだったのだ。やってくれたと思いながらも心がとても華やいだのだった。
やっぱり彼女は彼女らしい。
式本番も彼女らしく飾らず、シンプルでいて、かつ華やかな素晴らしい式だった。
私たちはバンドしたり踊ったりするユニークな部活に入っていた。良い意味で大学生感のない時間だった。どっちかというとスポ根高校ドラマみたいな印象が残っている。ぶつかり合ったり泣いたり笑ったり青春のど真ん中にいた。
今はパートナーとお店をしている先輩と、介護士として働く交流していた大学の男の子と三人で、披露宴の前に雑談していたときだった。
「まゆちゃん、今もバンドやってるの」
そう聞かれ、定期的にライブをしているわけじゃないし、オリジナルも休止してるけど、この前もライブに出たし、やってるってことかなと思って
「ベースは弾いてますよ」
と、答えた。すると二人ともにこにこ笑顔になって
「素敵!最後の希望の星みたいだよ!」
と、言ってくれた。
コロナ前までは年に一回同窓会みたいに、その男の子の出身校のみんながライブを主催してくれていたのだ。社会人になってひさしくとも、大学生に戻ったように馬鹿騒ぎをしていた。二人の言葉でライブの光景が昨日のように思い描けた。
コロナ禍でライブができなくなり、皆家庭を持っていたりしてライブや演奏や楽器とは少しだけ違う場所で生活している人も多いからだろう。だから私をその中の最後の希望の星と言ってくれたようだった。
「続けてくれる人がいると私も嬉しい」
そう言って先輩は笑ってくれた。
久しぶりに会えただけでも嬉しくて、式でも幸せな気持ちになれたのに、そんな言葉をもらえて急にくすぐったいような気持ちになった。皆それぞれの仕事や生活や社会があるし、いろんな想いを抱えているだろうに、私の周りには私を否定するどころか、遠巻きにする人が一人もいない。それがとてつもない幸福だと分かってはいたものの、結婚式場というその場の誰もが幸福な場所で、幸せを再度実感できたことが私には大きな感動だった。
式場を後にして、数人で渋谷に向かった。
その中の友人の輝く星を辿る旅だ。直訳してしまえば推しを巡る旅だったのだが。
誰かの希望の星。
そんな風になれるなんて、私の人生もまだまだ捨てたもんじゃないかもしれない。そう思えた一日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます