画家が画材を選ぶように 2022.6.6

 散々好きな人やものが多いと書いているけれど、私はどうやら自分が好きなものを

「好きだ」

 と素直に表現することが苦手なようだ。人に

「◯◯が好きなの?」

 と聞かれても何故か

「まぁ好きっちゃ好きだけど、そんなでもないよ」

 と、答えてしまうのだ。

 これは一体どう言う心理なのだろう。

 おそらく、好きなもの、否定してしまう、などと検索すれば、あなたはこれです。と答えらしきものが出るのだと思うが、そう言う深層心理みたいなものとかなんの裏返しだとかが別に知りたいわけではない。なんて素直じゃないんだろう、と思う。


 私の中ではいくつか素直になれない理由がある。

 私の好きなものの一つを、私以上に好きな人がいるだろうと思っているとか、多分なんだかちょっと恥ずかしいとか、語れるほどではないと好きの深さを勝手に測っていたりとか、そういった理由だ。見栄を張りたい訳でもないし、誰に貶されても構わないと思っているくせに、なんだか素直に認められないのだ。


 メイク好きの同僚に、最近メイクをすることに興味がある、と言う話をしてみた。

 彼女は嬉々として色々私に教えてくれたし、私も純粋に聞いていてとても楽しかった。本当にメイクが好きなんだね、といった時に彼女はこういった。

「プロの画家が画材にこだわるように、いいものにこだわりたいんです」

と。

 なんかめちゃくちゃかっこよかったし、同僚のことをいつも素敵だなと思っていた自分に合点がいった。自分にはない素直な彼女に私は憧れていたのである。

 プロと一緒にしていいかわからないですけど、と笑っていった彼女がとても素敵だった。

 

 好きなものを好きと言える。ちょっとずつでもいいから、小さなことでもいいから、これが好き、ともう少し自信を持って言えたらいい。そう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る