二度目の雪が降った 2022.2.10
朝早くから雨が降っていた。肌を刺すような冷たい雨だった。天気に左右される職場では致命的な天気だが私はワクワクしていた。
雪が降る、と先週あたりから予報が出ていた。天候が悪くなると仕事はかなり忙しくなる。殺伐とするしみんなも疲弊する。私自身も疲れるには変わりない。ただ、私は雨も好きだし雪も好きなのだ。
実家では雪は降るものの、年々雪の量は減っていた。東京で雪が降ることももう稀で、上京してきてから月日が経つが、そこまで苦労した経験はない。たまにだから雪を楽しめている、というところはもちろんあるが、雪の日の厳かな空気を毎年冬になると願っていた。
今年は東京に降る雪は二度目だ。これを書いている今も弱まってはいるがふわふわした雪がしんしんと降っている。
同僚は呆れ顔で、明日を憂いている。私はといえば、職場で大喜びはできなから心の中で、もっとふれふれと思っている。
雪やこんこ霰やこんこ、帰り道で歩きながら口ずさんだ。
幼稚園の頃、母親の車の中ではいつも童謡が流れていた。今では一番と二番がごちゃごちゃになっているものや、タイトルが全くわからないものもあるけれど、日々感じる風や匂いで呼び起こされる歌があったりする。
犬は喜び庭駆け回り猫はこたつで丸くなる、私は猫っぽいと言われるが、この歌の中でいえば大きな犬だ。
本当は誰も踏んでいない雪の積もった道を探して歩き回りたいし、雪が本当に積もったらそこに倒れ込んでしまいたい。
雪の道を歩くのは苦手ですぐ転びそうになる。ただ大人になってからゆっくりと歩くことが減ったように思う。少しの時間くらい、足元に注意をして、歩幅を狭めて、じっくり歩いてもいいのではないかと思ったりもするのだ。
ベランダから空を眺める。雪が降る空は暗く低く近くに感じる。普段遠いと思うものも、見る場所、時、状況が違えば違う表情を見せてくれる。どこか一方だけではなく、色々な表情を知りたい、と思う。
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