冬の夜の散歩  2022.1.27

 冬の夜の散歩が好きだ。久々に夜の散歩に出掛けてみた。

 暑さと寒さのどちらが苦手かといえば、どんどん身体的には夏の暑さで、心的には冬の寒さだった。夏の太陽が強すぎるとくらくらしたし、冬の曇った空は憂鬱を連れてくる。

 冬の寒い夜が前まではとても大好きだった。むしろ夜は完全に私の味方だった。心が弱い時にも味方だったが、仕事の関係で朝起きなくければならなくなってから、ちょっと夜の方が冷たくなった気がしていた。

 

 冬の夜には想い出が多すぎて、それだけでエッセイが一年分くらい書けそうなくらいの想い出がある。夜の好きなところは、昼とは全く違う表情を見せるからだ。

 いつも通る道もオレンジの灯りが灯って、違う場所に連れて行ってくれる気がする。冬の夜は特に空気が冷えるから景色がはっきりと見える。

 

 家の向かいの自動販売機でコーヒーを買う。

 手に取った瞬間は熱くて持てないくらいだけれど、外の空気ですぐに冷えていく。ぽてぽてと音がするような力のない歩き方をしていても、頭の中はスッキリしていく。

 少し遠回りをしながら、最近見つけた幹線道路沿いのタバコ屋まで歩く。

 時間が経つにつれ風も強くなってくる。首にスヌードをぐるぐる巻にして真っ直ぐに歩いていく。

 駅から自宅に帰る少ない人たちとすれ違う。みんな一様に顔を赤くして足早に歩いていく。私はその速度の半分も満たないくらいの速さで歩く。

 タバコ屋は閉まっているが、真新しいベンチは空いていて、何人かが立ちながらタバコを吸っている。冷えてしまったコーヒーを飲み干して、新しく自動販売機で飲み物を買った。

 しばらくその場に居座って、歩いていく人たちを眺めていた。

 

 久しぶりに出た冬の夜は、意外に私に優しかった。

 やっぱり私にとって、夜は特別な時間なのかもしれない。音楽も聞かず、スマホもいじらず、夜の風と一緒に歩いた。

 

 家に入ると、何だか安心したような、もっと遠くに行きたいような不思議な気分になった。今日は足元と人ばかり見ていた気がする。今度はもう少し、空を見上げてみようと思う。


 朝が少しずつ早く明けるようになってきた。

 夜が来る時間も少しずつ長くなってきた。

 あと数ヶ月で寒い寒い真冬も終わる。もう少し、冬の夜を感じたいと思った。


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