昼の青春
昼休み。午前の授業が終わったばかりでまだ誰もいない食堂への廊下を俺は一人で走っていた。全力で走って、俺の楽しみな時間を一秒でも長くする。心臓を震わせながら全速力で食堂に駆け込む。すると食堂にはすでに加奈がパンを買いに来ていた。
「裕太、随分急いで来てるみたいだけどどうしたの? そんなに急がなくても絶対パンは買えると思うんだけど……」
「いや、ここまで急がないと買えないね……。現にお前が持ってるチキン南蛮ドッグは一日で2つしかないじゃないか。あと数十秒遅かったら終わってた……」
「そうだね。……でも、そんなに走らなくても私が買ってあげてるから大丈夫なんだけどね。ほら、今日はどこで食べる?」
俺は加奈からチキン南蛮ドッグを受け取り、ゆっくりと呼吸を整える。そしてとりあえずどこで食べるかを考えながら、校舎を移動していった。
「でもさ……、私達なんで一緒に昼ごはん食べるようになったんだろうね……」
結局俺達は本校舎から離れた旧校舎で食事をとっていた。俺は加奈からの質問には答えずに黙々と自分の食事を食べ進める。いつもそうだ。恥ずかしくていつも加奈からの話を受け流してしまう。今日で高校二年生も終わりだというのに、自分はどうしようもないやつだな。一気にパンを食べ進めると俺は勢いよく加奈の前に立った。
「どうしたの? 何かあった?」
「いや、今日でこの関係を終りにしたいんだ。この一緒に過ごすだけの関係を。加奈、俺は優しくて明るい君が好きだ、昼だけじゃなくてずっと一緒に過ごしてほしい」
空き教室にこだまする告白。加奈は春に染まった顔でゆっくりと微笑んだ。
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