チャプター3 佐村河内横溝、62歳の夏。


 歩くとき、手がぶらぶらして邪魔だと思うことがよくあった。

 自分の手足を切り落としたい衝動しょうどうられながらも、老人は平静を装うのに必死だった。


 また耳が聞こえすぎて、他人の噂話うわさばなしが悪口に聞こえ、気になって仕方ないことがあった。


 生きてゆく上でなぜ耳があるのか。本気で邪魔だと思った。

 ゴッホの気持ちがよくわかった。


 10年前のあの日、白髪混しらがまじりの老人の右手にはやはり黒光りするおのが握られていた。


 男の顔はとてもけわしく。それにしてもけわしすぎる表情をしていた。


 眉間に深く刻まれた2本のシワが、男が神経質なことを深く物語っていた。

 おのにはべっとり血のりが付着し、青いダンガリーシャツを紫色に染めた。


 血しぶきがあごあたりにも飛び散っていて、とても正気のさたではなかった。


 佐村河内横溝が殺人を犯すのはこれで2度目だった。

 殺し方も極めて酷似こくじしていて、いつもお決まりのおのと散弾銃を用いた。


 女性は既に頭を斧で割られて即死していて、ただ単に死体を損壊しているにすぎなかった。


 頭の右半分は爆風。散弾銃の実弾で吹き飛び、原型は無惨にも形をとどめていなかった。


 ぽっかりと半分、空洞くうどうになった頭蓋骨には脳の一部がべっとりとこびりついている。


 まださわると温度を感じられるほど、湯気だって見えた。

 男は生ぬるい脳みそを指先ですくい、何度も口元に運んだ。

 佐村河内横溝は満足げな笑みを浮かべ、死体を物のように蹴り飛ばした。


 壁にもたれた、むくろが、床下に崩れ落ち、グシャッという。

 男は脳の一部を2本の指先ですくい、再び口元へ運んだ。


 かに味噌みたいな甘い味がして、佐村河内は指先を根元まで何度もしゃぶった。

 そして服を脱がせ、死体をもてあそんだ。


 老人はマザーファッカーだった。

 15の頃、母親を強姦し、精神病院に入れられた過去があった。


 もう一度、母親の胎内たいない。子宮に戻りたいという欲求を捨てきれず、母親の子宮に両手首を突っ込み、母親は出血多量でその日の夜、帰らぬ人となった。


 怒ったのは父親だった。

 佐村河内横溝を施設に送り、父親が亡くなるまでのあいだ、一度も面会を許さなかった。


 佐村河内横溝が父親と再会したのは、父親の死後。火葬場でだった。

 佐村河内は結婚をせず、生涯独身を貫いたのには訳があった。


 親戚、身内の理解が得られなかったのも理由の一つだし、仕事をしていなかったのも大きな理由になった。


 統合失調症の症状は重く、幻覚、幻聴からもなかなか解放されなかった。

 佐村河内横溝は、けして異性にもてなかったわけではない。金なら親から受け継いだ遺産がたんまりあり、何不自由ない生活を送っていた。


 けれど男の異常粘着気質な性格が災いして、女性はいつもセックスを始めて数回で佐村河内から逃げ出した。


 しつこいセックスも、病的なSMチックなバイオレンス・セックスも、どこか女性に恐怖心を植え付けるものばかりで、女性にとって快楽とはほど遠かった。


 あるときは首を絞め、女性が気を失ってしまい失禁した。

 またあるときは女性が腹上死しそうになり、あわてて救急車を呼んだこともあった。


 針で乳首を刺すピアッシング。

 グリセリン浣腸液を大量に流し込むスカトロも、女性には恐怖でしかなかった。

 そこに愛などあるはずもなく、相手が壊れるまで楽しみ尽くす、異常な性欲があるのみだった。


 なすびのような太鼓腹たいこばらが、浅黒い男の表情によくえた。

 薬を多用した副作用で髪も顎髭あごひげも所々ゴマ塩のようで、顎髭あごひげは胸に張りつくほど長く、まるで白くなった赤ひげをみているような、そんな容姿をしていた。


 頭のてっぺんはバーコード禿げで、頭皮が薄く透けていた。

 ホリの深いマスク。白くにごったよどんだ目。深く刻まれた3本のひたいのシワ。


 古代ギリシャ人を想わせる、どこか神経質な面構つらがまえで、男は女性を斜め右45度からながめるのが好きだった。


 女性の唇に異常なほどの性愛があり、血が出るほど、女性の唇をみ、吸った。


 よどんだ瞳から繰り出す狡猾こうかつな視線。

 たるんだ口元、ほうれい線。

 虫歯でギザギザになった前歯。

 するどく、とがった鷲鼻わしばな


 男の有り余る金の匂いに、女性が簡単に吊られてしまうのは、夏の虫が明るい炎の中に自ら飛び込むのとどこか似ていた。


 佐村河内は精神疾患せいしんしっかんわずらっていた。

 統合失調症をわずらい、学生時代から入退院を繰り返していた。


 仕事は今まで一度もしたことがなく、代々受け継がれた先祖の遺産で、食いつないでいた。


 退院しては入院を繰り返し、入院しては退院したいとだだをこね、ここしばらくは病院にも顔をださなくなった。


 病状は一向に改善されるきざしを見せず、ややもすると悪くなっている感じすらした。


 始末が悪いのは、男が大富豪で、金の力ですべてを思うように自在にあやつれたことだ。


 何か不祥事を起こしても、今まではすべて金の力で、親が解決してくれた。

 何か問題を起こしそうになれば、佐村河内の親族が、裏から表から手を回して横溝をささえた。


 たとえ殺人を犯しても、男は自分が処罰されることはないだろうと、ある意味確信していた。


 人の命が生命保険と同じ1億円で買えることも、金の力で情状酌量じょうじょうしゃくりょうの余地があることも、佐村河内は当然のことながら知っていた。


 あとは実行に移すだけだ。

 最初の殺人の時は偶然が重なった。


 佐村河内は再びXデーを夢見た。

 待ちに待ったその日は、刻々と近づいていた。


 殺人を犯し、もう一度、人肉を食べたい。

 その欲求は日増しに募るばかりだった。


 人を殺したいという欲望は、してはいけないことだと思えば思うほど、佐村河内のトラウマとなり意識の下でモンスター化した。


 殺人が2度目ということもあり、男の心に少しだけ余裕が生まれたのも事実だった。


 佐村河内横溝、63歳。

 男はまたしても完全犯罪を目論もくろんだ。


 8年前のある日。夜更けにかけ。

 男はキャバクラに勤めるある女性に声をかけ、食事に誘った。

 2度目の殺人は、こうしてまくけた。


 男の目は興奮と酒の勢いでギラギラと輝き、それにも増して深くにごっていた。

 「お嬢さん。私は株で生活をまかなっている投資家です。葉山に別荘があり、不動産もたくさん持っている。よかったら一緒に食事でもどうですか? 素敵な夜をご一緒しませんか?」


 女性は金銭的に恵まれない境遇のため、日昼は不動産屋で営業事務をしていた。

 目鼻立ちが整っているが、けしてお金持ち風ではなく、育ちの良さは感じられなかった。


 女性は幼い頃、両親と死別していて、身寄りがなく孤児だった。

 金に不自由する生活にいい加減うんざりしていた女性は、どこかに棚からぼたもちころりんがないか、いつも目を光らせていた。


 そういう訳ありの女性を見つけるのは、佐村河内横溝の天性てんせいといってよかった。


 後腐あとくされなく遊べ、ぼろ雑巾のように捨てることができる女性。

 すべては計算のうちだった。


 「なぜ私を誘うのですか?」

 女性は人なつこい笑みを浮かべ佐村河内の次の言葉を待った。


 男の身なり、持ち物から、男が金持ちであることは容易に推測できた。

 「生き別れた娘の若い頃にどこか似ていましてね」

 彼女は金に困っていて、もうじき大家からアパートを追い出されることになっていた。


 けれどまとまったお金もなく、どうしたらいいのか思案に暮れていた。

 女は疲れていたこともあり無防備に老人を信じてしまい、不遇な身のうえ話を老人に話して聞かせた。


 酒の力も大きかった。

 女性は老人が自分の美貌びぼうかれたものだとばかり思っていて、なんとか老人を利用できないものかと考えた。


 「アパート、もうじき出なくちゃいけないんです。大家おおやから退去命令受けていて」

 佐村河内は少し考えたフリをして、

 「よかったら、マンションを世話しましょう。 いまいてる部屋が六本木に3つある。よかったら使ってもらえませんか? もちろん無料でいい」


 金回りがよさそうなのは外見だけで、その実、彼女は生活費にすら困っていた。

 こんなにうまい話に乗らないわけがなかった。


 「本当ですか? 幾らで貸してもらえるのですか?」

 女性は念押しした。

 「もちろん無料です」

 女性は驚きを隠そうともせず、老人に条件を尋ねた。


 「半年、私と愛人契約を結んでいただきたい。まあ難しい話はあとにしましょう。まずはブランドもののバッグを買って差し上げよう。シャネル、ヴィトン、エルメス。何がお望みかな?」

 アメリカンエクスプレスのブラックカードを女性に手渡した。


 お金に困った女狐めぎつねを見極める能力。金になびいてきそうな女性を見つける能力は天性のものを持っているのが佐村河内横溝だ。


 佐村河内横溝は、アメックスのブラックカードを女性に持たせ、

 「自由に使っていい。ここに500万、仮のわくがある。なんなら、あなたに全部差し上げてもいい。ただし私と愛人契約を半年交わしてもらう」

 若い、まだ20代の女性は、ブラックカードにいちころだった。


 その日は、アドレスを交換してその場を別れた。

 翌日、女性はまず手始めにヴィトンのバッグを買うことにした。


 話がうますぎるので、カードが偽物にせものではないかとうたがった。

 しかし心配は無用で、購入したバッグは本当に自分のものになった。


 ブラックカードなので、店員の愛想も受け答えもとてもよく、かえぎわ、またお待ちしておりますと何度も頭を下げられた。


 次いでエルメスのバーキン。シャネルの時計。カルティエのリング。

 欲しいものを5点、買い込んだ。

 どれもクレーム1つなく、自分のものになった。


 ついに夢が具現化したのである。

 女は喜んだ。


 手放しで喜び、男からの連絡を待った。

 しかし佐村河内からの連絡はなかった。


 男が電話してこないのをいいことに、女性は更にブルガリの貴金属を3点買い、その日の夜、こちらから佐村河内に愛人契約をしたいと申し出た。


 佐村河内にも断る理由など1つもなかった。

 タダより恐い物がないことをまだ女性は知らなかった。

 この老人を利用しようなど、100年早いことに気付かなかった。


 3日後、女性は老人が提供した賃貸マンションに転がり込み、家具の一切を新調した。もちろん引っ越し費用もタダ。


 賃料もタダのお姫様待遇だった。

 至れり尽くせりだった。


 女性は喜んだ。

 金に不自由していたからなおさらだった。


 欲しい物を買うのをひかえていた日常から、ある日をさかいに目の前に大富豪の王子様? (実際は老人ですが)現れたのだから現実を見失った。


 自分の美貌びぼうかれたとばかり勘違いした女性は、半年くらいなら我慢できる。


 そういって佐村河内横溝の毒牙どくがにかかった。

 場合によっては結婚してもいいかも。

 利用するつもりが、ケツのケバまで抜かれることになろうとは、その日の女性は夢にも思わなかった。


 どこか、ねっとりからみつく佐村河内横溝の視線から、女性は危険を察知すべきだった。


 ただあまりにも日常を平凡に過ごしてきた女性は、危険予知能力が低く、まさか自分が男の毒牙どくがにかかろうとしているとは思ってもみなかった。


 いいカモを見つけた。女性は内心ほくそえんだ。

 利用できる者は親でも猫の手でも利用するのがこの女性の流儀でもあった。


 うまくすれば、これでキャバクラから一生いっしょう足を洗える。

 昼も夜も働く生活から解放されるかもしれない。


 すえは籍を入れてもいい。

 あと10年もすれば、老人はどうせ先に死んでしまうだろう。


 あとは死ぬのを待つだけだ。

 そうすれば、老人の遺産すべてが自分に転がり込んでくる。


 怠惰なセックスを我慢しさえすれば、あとは老人の目を盗んで浮気したっていいのだ。好きな男とホテルでしっぽり決め込むことだってできる。


 金さえあれば。

 金さえあれば。

 彼女は素直に喜んだ。


 一週間後、女性は青山のブティックを数軒、はしごし、佐村河内と遅い夕食を食べた。


 赤、白、ロゼのワインで食卓を3色に飾り、神戸牛のステーキを2枚食べた。

 翌日も、明後日も。


 場所を変え、表参道。銀座。

 名の知れたショッピング街に自家用車のロールスロイスで乗りつけ、数軒すうけんハシゴした。


 老人は女性を心からもてなし、買物かいものに付き合った。

 荷物はすべて運転手に持たせ、金は出すけど口はださなかった。


 まさに金持ちを絵に描いたような老人は、身寄りがいないと言って、将来を嘆いて見せた。佐村河内の演出は完璧だった。


 そんな王女のような生活が2週間続き、女性は男に招かれ、ベットに誘われた。

 男の愛撫はそれはそれは念入りで、ラブジュースをすべて一滴も残さず舌でからめとるような、濃厚なものだった。


 本番行為をなぜしないのか女性は不思議に思ったが、それ以上の詮索せんさくはしなかった。


 そして女性は地下室のコンクリートでできた薄暗い部屋にまねかれた。

 そして肌に食い込むほどの力で縄を縛り上げられ、縄でがんじがらめにされた。


 女性は特殊な性癖せいへきもあるものだと信じて疑わず、そのときも男のいいなりだった。


 男はよどんだ瞳を女性に向け、洋服を丁寧に一枚一枚、はさみで切り刻み、乳首に針のピアッシングをした。


 女性は痛みに耐えながらも、プレゼントと痛みを天秤てんびんにかけ、これくらいでを上げるわけにはいかない。

 自分に言い聞かせた。


 老人は既に女性を食べることを考えていて、どう料理するか、どの部位をどのように食べるか。そのことばかり考えていた。


 パンツの綿でできた部分の匂いを何度もぎ、女の見ている前で射精した。

 どうも様子がおかしいと感じたものの、縛られていたのでどうすることもできず、女性は声も出さずただ従った。


 それから猿ぐつわをはめられ、むちで何十回と打たれた。

 女性の背中はミミズれにれ上がり、充血した幾筋もの線を斜めにえがいた。


 乳首に2本目の針を刺し、バギナにも釣り針状のはりを刺した。

 女性が異常を感じ、首を左右に振るが、佐村河内は女性の声に耳を貸そうともせず手を緩めなかった。


 オレが悪いんじゃない。

 こいつが死を望み、オレのところに舞い込んできたのだ。


 殺してほしくて、こいつがオレのところに飛び込んできたのだ。

 男は古ぼけた麻袋からチェンソーを取り出し、スイッチを入れた。


 モーター音が狭い拷問室に鳴り響き、ガソリンの匂いが辺りに立ちこめた。

 女性の右腕を浅く切りつけた。


 皮膚が裂け、血しぶきが上がった。

 女性は涙目になり、何か叫んだが、またしても猿ぐつわで声がかき消された。


 今度は足をチェンソーで刻み、女性の体をしばる縄を切断した。

 縄をほどき、晴れて女性は自由の身となった。


 足から吹き出た血がアスファルトに血だまりをつくった。

 女性は貧血と恐怖で今にも倒れそうだった。


 「冗談はやめてください」

 女性は泣き叫び、猿ぐつわを自力ではずした。


 「やっぱり逃げまどい、死の恐怖におののくところを仕留めたい」

 男は何やら訳のわからぬことをつぶやき、逃げ惑う女性を後ろから足早に追った。


 次いで壁に立てかけてある斧を手にして、チェンソーを床に置いた。

 女性に更に近づいた。


 そして斧の刃で女性の脇腹わきばらを叩いた。

 脇腹から腸が吹き出し、血がほとばしった。


 ぐ。ぐえ~。

 悲鳴とはほど遠い重厚な叫び声を上げ、女性は脇腹を左手でおさえた。

 女は男が本気で人を殺そうと思っていることに初めて気付き、出口にかけより、鍵をこじあけようとした。


 震える指。

 失禁。


 「むだだ。鍵はわしが持っている」

 その背中に遠慮なく斧を振り上げる男。佐村河内横溝。


 女性は瀕死ひんしの重傷だった。

 「許してください。なんでもします。お願いです。殺さないでください」

 オシッコを漏らし、しゃがみ込む女性を佐村河内が、立ったまま見おろす。


 「カワイイ奴だ。許してやろうじゃないか」

 「本当ですか」

 女は泣き崩れ、両手で顔を覆った。

 手指がブルブルと小刻みに震え、武者震むしゃぶるいが止まらなかった。


 「お母さん。お母さん。恐いよう」

 すすり泣く女性。

 女性は気が動転していて、なぜお母さんとつぶやいたのか自分でもよくわからなかった。


 泣き声が佐村河内をひどく興奮させた。

 「駄目だ。やっぱりおまえには死んでもらう。おまえには死がふさわしい」

 勃起したペニスを女性の前にもたげ、

 「しゃぶれ」

 なんでも言うとおりにします。女性の口に押し込もうとした。


 女は一旦いったん、佐村河内のペニスを受け入れたが、しばらくして拒絶した。女性はえぐれた内臓。飛び出た腸を左手で押し込み、肩で息をした。


 フーフー、荒い息をして女性が座り込み、青白い顔して佐村河内を見上げた。

 瞳には恐怖がありありと刻まれている。

 女性がブルブルと小刻みに震える。


 「生きたいか。そうか、逃げ惑え。おまえには死をもって償ってもらう。もっとわめけ。叫べ。泣き叫べ。叫んで、もっと生きることを望んだ極限の状態で、おまえを殺そうじゃないか」

 男がおのを振りかざすと同時に、頭の上に置かれた3本の女性の右手指がはじけ飛び、女性はギャーと声にならない悲鳴をあげた。


 「もう悪いことはしません。悪い男にもついていきません。お願いです。助けてください。なんでもします」

 もはやこれを冗談というには、むごすぎた。


 現実に起きていることだと認識した女性は、佐村河内横溝に、命乞いのちごいをした。


 「神風よ吹け。天に召します我らの父に、この女性の命をささげる」

 老人は呪文のように同じ言葉を三回つぶやき、ふと目を閉じた。


 女の出身地もちも、男は何も知らなかった。

また知る必要もなかった。


 男は、おのに付着した血潮ちしおしたでなぞり、血の味を嗅覚きゅうかくとともに楽しんだ。


 指の痛みに耐えかねた女性は嗚咽おえつして、涙で顔をグシャグシャにした。

 女がいやがればいやがるほど、佐村河内横溝の心には火がついた。


 女性は執拗しつような攻撃から身を守るために3本の指を犠牲にし、そして最後に頭を叩き割られ万事休す。絶命した。


 鈍い音が室内に響き、男は小刻みに震える自分の指に青い生暖かい息を吹きかけた。あとは完全犯罪するのにどうすればいいか、それだけを考えればよかった。


 その前に屍姦しかんでもするか。

 最後はとどめに散弾銃で頭を吹き飛ばし、遺体に馬乗りになった。


 頭のない遺体に馬乗りになり、男は余興よきょうを楽しんだ。女のアナルをつらぬいた。


 役に立たないペニスをアナルに押し当て、亀頭のないペニスでアナルセックスに酔いしれた。


 ペニスを穴の入り口に押し当てただけの見せかけのセックスだったが、男はとても満足した。


 射精しても射精しても、勃起力ぼっきりょくは衰えなかった。

 男は死体の上にまたがり、大量のうんこをぶちまけ、ようやく平常心を取り戻した。


 今から8年ほど前の出来事、2回目の殺人現場での出来事だった。

 佐村河内横溝は、残虐の限りを尽くし、2人を惨殺さんさつし、死体を屍姦しかんし、遺体を風呂場でハンマーで砕き、富士山麓にくだいた骨を遺棄いきした。


 肉は冷蔵庫に入れ調理して食べ、殺戮さつりくの現場を思い出してはオナニーにふけった。


 男が3人目の女性を拉致しようとして、強姦目的で起訴されたのをきっかけに、事態は急転直下した。

 《続く》

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