失われた情熱編

第3話 オーロラの夜明け 

あらすじ

 あなたは、余命半年と宣告されたとき、心に誰を思い浮かべますか?


 この世に生きていく上で、本当に大切なもの。

 それは目に見えないものだ。


 目に映らないものだけが、人々の記憶や心に永遠に残り続けることができる。

 たとえ体が焼かれ、わずかな骨片に変わろうとも、その思いはかわらない。


 太平洋戦争における神風特攻隊は、死の直前、

 『お母さん』

 そう言って敵の航空母艦に突っ込んだそうです。


 あなたはもし、今日、世紀末を迎えるとしたら、最期の晩餐ばんさんを誰と過ごしたいですか?


 桜世高校ソフトボール部2年生。

 ピッチャーでエース。

 純真爛漫じゅんしんらんまんな関根香世の物語。


 彼女は、頭脳明晰めいせき

 色黒で、スタイル良し。

 顔よしの、学校で人気のスーパー女子高生。


 髪は肩ぐらいまであり、むかしの聖子ちゃんカットをしていた。

 目は大きめで、くりくりしていて、瞳のエリスが青く光っていた。


 身長は158センチ。

 長い腕と細いカモシカのような足から繰り出すライジング・ボールは、高校生にはなかなか打つのが難しかった。


 口は適度に大きく、歯並びも良い。八重歯とエクボが魅力的で、鼻は控えめで形良く上を向き、口元は耳元へ引っ張られるように口角があがっていた。


 そんな彼女に試練が訪れた。

 いつからか始めた、シンナー遊びに夢中になり、タバコの引火がもとで全身に重度のヤケドを負ってしまう。


 美貌びぼうで鳴らした顔はヤケドで溶け、ただれ、見るも無惨な、みにくい姿に変わってしまう。


 天国と地獄を一瞬にして味わう、香世。

 まずは彼氏が気味悪がって彼女から離れ、そして友達を失い、わがままから家族とは会話が成り立たなくなる。


 やがて自暴自棄になった関根香世は、自殺未遂を繰り返す中、一冊の本と巡り会う。


 彼女が辿り着いた先にあるものは?

 果たしてそこは天国か地獄か?


 光か闇か?

 彼女を待ち受けていたものとは?


 彼女は一縷いちるの望みに導かれ、すんでのところで死ぬのを思いとどまった。


 彼女は自分の使命を天から授かった。

 てんの声に耳をすませ、あまのかわを遠く見上げた。

 育子の死には、彼女への贈りものが込められていた。

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