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ジャッキーはどうなったの、と、ルイがその問いを口にすることはなかった。訊きたい気持ちは山々だったのだろうに、黙って蛇男に抱かれていた。無防備に蛇男の胸に預けられた身体は、細くて小さいのに不安になるほど柔らかい。その矛盾した感触が、蛇男の胸をどうしようもなく締め付ける。

この町に流れてきた真冬の朝、朝靄に溶け込んで消えて行きそうにうつくしかったあの女の子。彼女の願いならば死すら受け入れようとまで焦がれたのは、安娼婦の娘でしかない彼女になぜか、犯しがたいまでの処女性があったからだ。真冬の朝日より白かった彼女の肌に、ミンジュはあの日から今までずっと狂い続けている。その白さが今もなお、数えきれないほどの男に抱かれてきたはずのルイに、少女時代の残滓として残されているから。

「殺したのは俺だよ。」

鱗だらけの両手でルイの小さな頭を掴み、口づけでもしないと不自然なほどの距離で、目と目を合わせる。

ルイは大きな茶色い目をゆっくりと瞬き、ごくわずかに唇を笑わせた。

「そうよ。あんたよ。」

それは彼女自身をと言うよりは、ミンジュをなだめるような口ぶりで。

「あんたが殺したのよ。」

静かに繰り返されて、感情を崩落させて泣いたのはミンジュの方だった。黒い鱗が張り付いた頬に、涙の雫が続けざまに零れ落ちる。

愛していると、何度だって彼女に告げた。しかし彼女は一度たりとも本気でそれに取り合ってはくれなかった。その彼女が出した、最初で最後の答えがこれなのだろう。

殺したのはあんた。愛したのもあんた。あんただけ。最初から最後まで、あんた一人だけ。

そうやってミンジュを突き離し、彼女は本当の一人きりになるつもりなのだろう。

それだけは嫌だった。どれだけ傷ついても、死ぬほど苦しんでも、ルイの側にいたかった。

「なんでも言うこと聞くって言ったよな。」

「……うん。」

「俺と来い。」

ミンジュに頭を掴まれ、強制的に視線を合わせられたルイは、強くまぶたを閉じることで彼の視線から逃れようとした。しかし強すぎる彼の眼差しは瞼の上からでもはっきりと感じられる。絶対に逃がさないとでも言いたげな、その熱量。

ルイには今も昔も、ミンジュがここまで自分に執着する理由が分からなかった。

「心中するの?」

瞼を閉じたままの台詞は、戯れでも誤魔化しでもなかった。売春稼業を手広くやっていたロンの後ろには、やくざが付いていたという。この街を離れたとしても、その報復から逃げきることは多分難しい。ミンジュはどうしたって目立ちすぎるのだ。

これまで自分の身に厄介ごとが起きないように、上手いこと相手を選びながら人を殺してきたミンジュにとって、これは最初の失敗であったし、もう取り返しのつかないという意味では最後の失敗でもあった。

「そうだなぁ。」

ルイの頬に自分の頬を押し付けながら、蛇男はこの世のなにもかもに疲れ切ったみたいに苦笑した。

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