第2話 ミュージックオフィス♬ピッコロ入所
ザワザワガヤガヤ
記者会見の舞台である。と、言う前に、まずはピッコロ楽団の仲間に挨拶をしな
ければいけない。
「え、えっと・・・・・きょ、今日からここでご一緒させていただきます、西堀良平
と言います。ギターとピアノができます。まだ小6ですが、この場で活躍できる
ように頑張りたいと思います。ご訓導ください。今日からよろしくお願いします」
パチパチパチパチパチ
この手をたたく音を聞くと、数カ月前を思い出す。あの演奏が終わってからの拍手は
大音響であった。それに負けないくらいのデカさ。当然、クラスメイトは当時
23人だったがマイクを片手に深々とお辞儀をする僕の前には300人以上いる。
「すごいよねー。まだ小6なのにこんなにしっかりとした挨拶ができるだなんて。
感心しちゃうよなーみんな」
コクコクと頭を上下に振るみなさん。
「この子、将来はすごいピアニストになるよ」
「そうだよな」
「今日からよろしく!!しっかり者の新人君!」
歓迎や称賛の声があがる。まあ、最初はたじろいだけど、視力AAの目で小さな
スケッチブックをとらえ、それを復唱するだけなのだから。予定通りスムーズに
動いた。
目の前には、先程とは全く異なる重苦しい雰囲気が漂う。記者がボールペンを
手に持ち、ノートを膝に置いている。
「それでは、記者会見を始めたいと思います。主催は、私ミュージックオフィス
代表取締役社長、
最初の挨拶で、「すごいよねー。まだ小6なのに・・・」と言っていた人は、
一本杉さんだ。
「本日は、新しく『ミュージックオフィス♬ピッコロ』に加入してくれた新入生を
ご紹介させていただきます。小学校6年生の西堀良平君です!」
「オー!!」
記者陣から歓声が飛び散る。
「え、本日より『ミュージックオフィス♬ピッコロ』に入所させていただき
ました、西堀良平です。僕は今小6でですね。小5のときに学校のピアノ発表会で
ピアノを弾くと、驚くほどの拍手が出たんです」
「オー!!」
「そうそう、これくらいの歓声もあったんだろうね」
「ハハハ。ひとまずですね、そこから大手新聞社が取材しに来たんですね。心が
躍っていることを感じられました。そしたら、4月2日。6年になったんだなぁと
思ってカレンダーをめくるんですよ。そしたら、入所手続きと書いてあるのでそりゃ
またビックリですよ。それで、おどおどしていてちょっとした恐怖心もあったんです
けど、みなさんに挨拶をするとみんな歓迎してくれたので行けると思いました」
今回は、カンペなどない。全て自分の暗記・・・・・と手元の原稿用紙が頼り。
少し子供っぽさを演出させながらも、最初のところはピシッと決めてやった。
そこから、話を続けると。
「これで終わります。何か質問等あれば挙手をお願いします」
我ながら大人っぽい言い回しに自尊してしまう。
「はい、どうぞ」
「ピアノとギターが弾けるとおっしゃっていましたが、ピアノで話題になったと
いうとピアニストとしての活動になるのでしょうか?」
「う~ん、そうですね。ピアニストとしての活動もあるでしょうが、元々の趣味で
好きなのは、ギターなので、そっちもたくさんやりたいと思います」
「ありがとうございました」
あの人、どこかで見たことがある気がする。脳みそデータベースを検索すると、
ぼやけた画像が出てくる。なんとなーく覚えてる気がするのだが・・・。
まあ、気のせいだろう。
その後、東京を行きかう鉄道のように質問は飛んできた。
「それでは、本日の記者会見を終了します。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
テレビで見る首相会見のように記者会見は終了し、僕と一本杉さんは引き揚げて
いった。あの見覚えがある新聞記者に、またまたもやがかかってしまった。
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