第11話 助っ人の手助け(4)
「圭祐、おはよ」
「ああ、おはよ恵理」
「昨日の事なんだけどさ、どんなロケーションで仲直りしたいわけ?」
「ロケーション?」
朝に学校でゆっくり席に座っていると恵理が俺に話しかけてきた。
恵理は昨日の電話の件について話に来たようだった。
「うん、どっか遊園地とか遊びに行った流れで謝ったりするとか。学校でしっかり合わせて謝るとかさ」
隣のまだ来ていない席に座った恵理。
「あーそういう事か。なるほどなるほど」
「な~に寝ぼけたこと言ってんのよ!そんなノホホーンな考えしてるからダメなのよ!」
教室には早めに来た俺と恵理だけなため、大きな怒号で俺の耳を潰しにかかってきた。
「ごめん」
「ったく、二人がそんな感じだから私が気まずくなるのよ。本当にいい迷惑」
腕を組んで怒った様子を見せている恵理。
やっぱり自分の友達の二人が喧嘩をしているとその間に居る人は本当に気まずいんだろうなと他人事のように感じてしまった。
「恵理には感謝してるんだよ、そこまで積極的に協力してくれるんだから」
「あんたはなんか昔と変わったよねー。というか最近佐那ちゃんと関わり始めてからだよね、あんたが女子との会話で変わったの」
「そんなこと気のせいだろ。俺は全く変わったつもりはねぇぞ」
「自分でわからなくても他人から見たら変わってる。前の圭祐を知ってるから言えるし」
「ハイハイ、そうですか」
「適当に流しすぎでしょ、もう協力しないよ?」
「ごめんなさい、協力してください恵理様」
「それじゃ、放課後残っててね」
「はい!わかりました!」
恵理はそのまま教室をでて何処かへ消えてしまった。
* * * * *
やっと一日が終わった放課後。
今日の朝に言われたように席でジッとその時を待つ。
「圭祐」
「お、おう」
待っていると後ろから恵理が小さな声で声を掛けてきた。
「ここじゃ話しにくいからどっかいい場所ないの?」
「いい場所ってまずお前は小松さんと帰らないといけないだろ?」
小松さんのストーカーの件で恵理が小松さんと帰るってことになっている。
なので今から俺と何処かに行ってしまうと小松さんを一人で帰してしまうことになる。
そっと小松さんの方に目をやると待つというか一人で教科書をまとめていた。
「帰ったあとよあと」
「あ、そういう事か。それだったらお前も一回行ったことあるコメロでどうだ?あそこだったら静かだから話しやすいと思うけど」
「おっけー。それじゃ行くとき連絡するから、また後で」
「はいよー」
恵理はそのまま小松さんと一緒に帰ってしまった。
まぁ昨日と同じで‥‥
「先輩!今日も帰りましょ~」
もちろん教室の前で待機している人が一名居ましたよっと。
* * * * *
今日は小松さんとの接触はなしで今から恵理との話し合いをする。
そのことを美咲ちゃんに伝えたところ『私もそこに行く!』の一点張りだったので一緒に行くことにした。
もちろん恵理に許可を取って‥‥ないし、何なら何にも言ってないが大丈夫だろう。
「恵理、お待たせ‥‥」
俺が恵理の場所に着くと目を細くして俺の後ろに居る美咲ちゃんのことをジッと見つめながら言った。
「あのさ、なんで後輩ちゃんが居るわけ?」
もちろんそういう反応になって当たり前だ。
だって何も言ってないんだから。
恵理が低いトーンでそんなことを言ったのでいつも元気な美咲ちゃんも少しびっくりしたのか俺の背中の方に寄ってきた。
「えっと‥‥俺の協力者だから?」
俺が説明にならない曖昧な説明をしたためなのか恵理は呆れた顔をした。
「はぁ、まぁいいわ。とりあえず後輩ちゃんも座って」
「はい‥‥ありがとうございます」
美咲ちゃんもいつもの元気はなく大人しい。
「えっと、この子は後輩の氷川美咲だ」
「氷川美咲です。よろしくお願いします」
「私は小山恵理。別に怖がらなくてもいいからね。よろしく」
軽く挨拶を交わす二人。
俺はその絶妙な空気の中何もしゃべらずにいた。
その空気の中、初めに喋りだしたのは恵理だった。
「それで?小山ちゃんはどこまで知ってるの?」
美咲ちゃんはその質問をされて少し眉間にしわを寄せてから答えた。
「えっと‥‥先輩が喧嘩したってことだけですね」
「全然話してないじゃん‥‥まぁいいか。とりあえず話進めるからね」
また恵理は呆れたような顔をしていたが話を進めることにしたらしい。
「私から言わせてもらうと、みんなで遊びに行って見るのはどうかなって思うんだけど」
「遊びに行くってどこにだよ」
「それはまだ決まってないけど仲直りするんだったらさ、気分が良い時に謝ったら案外すぐに仲直りしてくれそうじゃん。機嫌悪い時に言うよりはよっぽどいいと思うんだよね」
「遊びに行くか‥‥恵理がそう言うんだったら俺はそうする」
今の状況下では恵理に任せた方が良い方向に行ってくれるだろう。
「えっと、私から言いたいこといいですか」
小さな声で小さく手を挙げていた美咲ちゃん。
「みんなで遊びに行くんだったら買い物って言うのはどうでしょうか。そこで先輩がプレゼントを渡すんです。罪滅ぼしというか謝罪の意を込めて」
いつもだったら茶化してふざける美咲ちゃんだがやっぱり人前では本当に有能な女の子になる。
「プレゼントね‥‥いいじゃないそれ!小山ちゃんナイスアイディア!」
「ありがとう美咲ちゃん、めっちゃ良いじゃん」
「えへへぇ~」
美咲ちゃんの顔が溶けてる!?
いつもだったら絶対しないような顔、幸せなのか嬉しいのか。とりあえず喜んでいることだけはわかる顔だった。
「よし!それだったら今週の日曜日に早速実行にしましょうか!もちろん佐那ちゃんには圭祐と小山ちゃんが来ることは言わないから」
「え、私も行っていいんですか!?」
「当たり前じゃん。何なら圭祐抜きの三人で遊びに行きたいくらい」
「えーーーっと‥‥」
なんでだろうか、依頼主よりも依頼主の付き添いの人が一番仲良く楽しく話している。
「それじゃ日曜日は空けとくこと!」
「はい!」
「わかった。ありがとうな」
「良いって事よ。何か奢ってね」
「っゔ‥‥」
日曜日はおそらく、いや、絶対金が飛ぶ。
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