第6話(後) すれ違い
「佐那ちゃん!待って、待って‥‥ハァァ‥‥ァハァ」
「‥‥ごめんね、恵理。急に来ちゃって‥‥」
駅の裏にある住宅街。
佐那ちゃんを急いで追いかけ着いたのがこの場所。
いきなり飛び出したものなので圭祐はほったらかしで来てしまった。
「急に出ていくからビックリしたよ‥‥」
「‥‥圭祐君は何も分かってない。友達だって、私たちって友達じゃないの?別に私、嫌と思ってないし言ってない。周りの目なんて気にもならない。楽しかったのに‥‥」
「佐那ちゃん‥‥」
佐那ちゃんの目には大粒の涙。
その場で佐那ちゃんの足が崩れてしまった。
何か声をかけようとしてはみたが何も言葉が出なかったので泣き止むまで背中をさすって無言で傍に居た。
「だってさ!?なんで圭祐君ってあんなに自分の評価低いの!?おかしいじゃん!私の為!?私が嫌って言ってなのに何が‥‥何が‥‥ッ‥‥ッッ」
せっかく落ち着いてきたはずだったのにまた圭祐の事を話し始めると泣き始めてしまう。
「佐那、愚痴だってなんだって聞くから落ち着こ?一回深呼吸深呼吸」
「ッスー、ッハー。ハァー。‥‥ごめん恵理」
大きく深呼吸をした佐那ちゃんは少しは落ち着いてきたようだった。
「私が近くに居るからあんな考え方になっちゃってるのかな‥‥」
「え?」
落ち着いたかと思ったら今度は少し分からないことを言い始めた佐那ちゃん。
私は言っていることの意味が深く理解できなかったため、とりあえず聞くことにした。
「私の為だって言うんだったら私が離れたら良い話じゃん」
「‥‥離れるって」
「そう、圭祐君が私の為。言い方を変えたら私のせいだって感じでしょ。それだったらいっそ、距離を置こうかなって‥‥」
佐那ちゃんの顔は冗談を言っているようではなく至って真面目な顔。
心の中では恐らく、自分の為だと言ってくれた圭祐でも見方を変えると佐那ちゃんのせいになる。その考えが相当嫌だった、彼女の頭の中は見えないけど恐らくそれで合っていると思う。
「え、でも佐那ちゃん圭祐の家でバイトしてるんでしょ!?」
「‥‥うん」
「それでどうやって距離置けるの‥‥」
「一回圭祐君のお父さんに相談してみる。今から行っても圭祐君は居ない、今店の買い出し中だから」
「今から店に行って話すの?」
「‥‥そうしよっかなって思う」
「‥‥」
「一緒に来てくれない?ちょっと不安だし‥‥」
「いいよ、私は佐那の味方だから全然」
圭祐との大きな壁ができた佐那ちゃん。
この件に関しては私の立場ではどっちが悪いとはハッキリ言えない。
圭祐だって圭祐なりの考えがあったからだと思うし。
でももう強く決心した佐那ちゃんを止めることは出来ない。
私だって出来ることはしようと思うけど‥‥
出来る限りは中立の立場に居られるようにしよう。
* * * * *
「圭祐君とちょっと関わりづらくなってしまって‥‥こんな融通が通るなんて思ってはないんですけど、一時辞めさせてもらうことってダメですか?」
私と佐那ちゃんは一緒に店まで来た。
佐那ちゃんの言う通り圭祐はまだ家には帰っておらず、お父さんだけが居る状態だった。
「‥‥まぁ、圭となんかあったんだったら構わん。ただしっかり解決したら戻って来いよ?小松君は結構働き者でうちに必要な人材なんだから」
「すいません‥‥」
案外佐那ちゃんの融通はすっと通った。
「小松君は本当に帰って来てほしいから、ことぼりが冷めたらしっかり帰ってくること。それだけは約束だ」
「はい!ありがとうございます」
「はいよ、圭が帰ってくるからさっさと帰った方が良いぞ」
圭祐のお父さんは深くまでは聞かずに了承してくれた。
自分の息子との問題だから気になったと思うけど、佐那ちゃんの様子で何かを察してくれたのかもしれない‥‥
* * *
「それじゃ佐那ちゃん、またね」
「ありがとう恵理」
佐那ちゃんを家に送った。
圭祐と喧嘩をしているため二人が合うことは無いんだろうか。
二人の間に居る私の身からしたら‥‥
「エリリ?ちょっといい?」
「え?」
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