第4話 パンダ
「佐那にはこれが良いと思うよ?」
「そうかな~。私ってこういう服着ないんだけどなぁ」
夕日が沈み、辺りが暗闇に包まれた時間帯に佐那と一緒に買い物をしている。
圭君と別れた後に遊びに来たのだ。
「いや、でも私は似合うと思うんだけどなぁ」
「そう?稟がそういうんだったら買おっかな~」
服を一緒に選んでいる。
私は元々服屋に用があったのでその近くの佐那の家によって会ったということ。
「あれ、あれって恵理?」
「恵理?」
恵理って誰?
「やっぱり恵理じゃん」
佐那が向かった先には茶色がかった長髪の女の子。
佐那が走って行ったので私も走って追いかける。
「恵理!恵理~」
「あれ?佐那ちゃん!居たんだ~」
「佐那?」
私はその恵理と言う女の子が誰か知らないので佐那に聞いた。
‥‥この人胸デカッ
「ああ、紹介するね。小山恵理、私のクラスメイト」
「小山恵理です」
「私は秋喜稟です、よろしくね、えっと‥‥」
「恵理でいいよ」
「それじゃあエリリって呼ぶね!」
「エリリかぁ~、良いじゃん、私はなんて呼べばいいの?」
「私は別に何でも良いよ?」
「じゃあ、リンリンって呼ぶね!よろしくリンリン」
「よろしく~」
―私はパンダだ。
でも恵理は凄く私と凄く馬が合いそうな感じする、胸もあるし。
おまけに性格良ときた。
‥‥なんだこの女神。
「そうだ!恵理、このまま一緒に遊ばない?」
「あ~、ごめんね佐那ちゃん。私これから用事あるんだ‥‥ごめんね?」
「そうなの!?こっちこそごめんね?忙しい時に」
「良いよ全然、それじゃ私は行くね!」
「気を付けてね~」
エリリが出口の方に歩いていく。
手にはスーパーの袋を持っていたので買い出しか何かをしていたのかも。
「リンリン!また今度ゆっくり話そうね?今日は時間なかったしー!」
「はーい、また今度はなそうね~!」
エリリは片手を大きく上げてこちらに手を振りながら出ていった。
エリリが出ていったので私と佐那は服の買い物を再開した。
「佐那!これ着てこれ!」
「稟の頭にエロが多いのは知ってるけどさ、さっきから露出度高い服多くない?」
「いや‥‥気のせい気のせい」
私が渡した服は確かに他の人と比べたら露出度は高いかもしれない。
ただ私から見たらこの露出度は普通に過ぎない!
だから普通!大丈夫。
そう思っても佐那は渡しても服を着てくれない。
「それだったら稟がこの服着ればいいじゃない」
「私がこの服着たら服に負けるもん!私は胸が佐那程ないの」
「胸なんて関係ないです。これは気持ちの問題だもん、だから返す!」
佐那は私に服を返してきた。
私は佐那みたいに胸が大きくないから少し露出度が高いのを着てもただの背伸びしている女の子みたいになってしまう。
だから!それだからこそ佐那が着るべきだと思うんだけどなぁ‥‥
「私はこっちの方が好きだけどなぁ」
「え~、これ?」
佐那が持ってきたのは白のセーター。
如何にも春の服で露出しているどころか首元まで布!
「これ布過ぎない?」
「いや、セーターだから普通でしょ‥‥」
佐那は私の反応に少し呆れた様子。
待てよ?胸が大きい人がセーター着たら‥‥
「佐那!この服試着してみない!?」
「ええ、何急に。さっきまで微妙どころか反対の顔してたのに」
「いや、佐那には似合いそうだな~ってさ‥‥」
「ふーん?」
佐那が私の顔をじっと覗き込んでいる。
この目は明らかに疑いの目。私が似合うと言っても疑ってくると言うことは、佐那に私の考えがバレているのかもしれない。
「ま、稟がそんなに薦めてくるんだったら着てみよっかな~」
佐那はそのまま試着室へ向かっていった。
少しは不審に思っていた様子だったが‥‥
* * *
「稟?これなんだけど‥‥」
試着室のカーテンをゆっくりと開ける佐那。
カーテンが開かれると体にピチッとした服が目に飛び込んできた。
佐那が選んだサイズは小さいのか物凄く胸が強調されている。
―良い。
「佐那、私から見たらめっちゃ良いと思うんだけど‥‥」
「ちょっとサイズ合ってないよね‥‥」
佐那が横腹の部分をすぅーっと指でなぞる。
スタイルが良い佐那は小さい服を頑張って着ている見苦しい人じゃない。
男子の目線を釘付けにするエロモンスターと化している。
「もう少しサイズ大きいので良いんじゃない?まぁ圭祐君に色仕掛けしたいんだったらそのままでいいと思うけど‥‥」
「しません!この服はダメダメ!」
サァァっと猛スピードでカーテンを閉めた。
私からしたら目の保養だったけど、頬を赤くしていた佐那は恥ずかしかったと分かる。
「いいじゃーん、買おうよ!」
「買 わ な い!」
「ちぇ~」
* * * * *
「結局は何も買ってないんだよね~」
「稟が変なこと言うからじゃん!」
「あはは‥‥」
服を買いに行ったが結局は何も買わなかった。
私が変なことを言ってしまったからかな?
―次こそは買わせる!
「まぁ今日はエリリに会えたし良かったかな?」
「二人が仲良くなったら私も嬉しいな‥‥」
「大丈夫だって。明らかに女神だからあの人は。胸も大きいし?」
「私だからいいけどその稟の執着心他に見せない方が良いよ?」
私がこんな感じで言っているのは昔からだから佐那は慣れている。
初めての人には流石に言わないと‥‥
『佐那に手出してないよね』
「セーフだよね。うんセーフ」
「ん?」
「あはは‥‥」
圭君は佐那に手は出してないだろうけど、いつ出してもおかしくないんだよね‥‥
あいつだけは一番気をつけないと。
「それじゃ、私は電車の時間もあるし帰らせてもらうね。またね佐那」
「うん、気を付けてね?」
「佐那もね?変な人についていくんじゃないよ?」
「私は高校生です。そんなことしません」
久しぶりに佐那に会うことができて良かった。
他にも会えたし。
‥‥大住圭祐。
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