第2話 心機一転

良い天気の日曜日。

こんないい日には友達と‥‥なわけではなく、自分の趣味のために今は外に出ている。

趣味と言っても運動などをするというわけではなく、ラノベあさり。

中古の本屋で物凄く安いラノベのために色んな所を回るというわけだ。

読まないと言ったら嘘になるが主に資料集めのために。


「天気良いよなー」


ほのぼのとする天気。

春なので暖かく自転車の風も涼しい。


* * * * *


「お、ここ結構あるじゃん‥‥」


自転車でサッと着いた古本屋。

大手の系列店舗なので普通の店と比べて比較的大きい。

さらに古本屋の中には他の店も入っている。

そんな日々通っている俺は入って直ぐにいつも通りのコーナーでラノベを漁る。

今日はいつもと違って多く本が並んでいた。


「あ、圭祐じゃん?こんなところで何してんのさ」


後ろから急に声をかけられた。

その声と呼び方ですぐに後ろに誰が居るのか分かった。


「なんだ恵理か。お前こそここで何してんだよ?」

「なんだって言い方何よ!佐那ちゃんに頼まれて買い物に来たついで。悪い?」


恵理が少し怒ったように言い返してきた。

なんだろう、機嫌悪いのか?


「いや、ちょっと意外だったからさ」

「意外って?」

「ラノベとか興味なさそうじゃん恵理って」


普段教室で陽キャをしている恵理がラノベを見ているなんて思わない。


「そう?周りには言ってないけど案外好きだけどなぁ」

「へぇー。なんかそんなイメージないんだよな」

「ま、そう思っておいていいわよ。私あんまりみんなの前で言わないし」


みんなの前で言わないから学校の様子から想像することができなかったのか‥‥

今まで長い事関わってきたはずなのにそんなことについては全くもって知らなかったため本当に他の人には言ってきていなかったのだろう。


「圭祐はなんで居るのよ」

「それ必要ある?」

「‥‥質問を質問でさっき返されたから聞いてるんだけど?」

「あはは‥‥えっと、まぁ暇だから来てるだけなんだよ」

「‥‥」

「おい!聞いといてスマホを触るな!」


俺に聞いてきたくせにスマホを触って全くもって聞いてなかった。


「それじゃ私はこの辺で‥‥」

「え、あ、ああ。またな、気を付けて」


恵理はそのままスマホを触りながら出入口の方に歩いて行った。

全く何だったのだろうかあいつは。

まぁ別に話すことなど全くないわけなので俺はそのままラノベを漁る。


* * * * *


「佐那ちゃん。これ買って来たけど‥‥」


私が佐那ちゃんに頼まれたのは料理の本。

家まで持って来てほしいと言われたため今は佐那ちゃんの家の玄関。


「ごめんね、小山さん。わざわざ買ってきてもらって‥‥」

「全然それは構わないんだけどさ?なんで料理本?」

「料理の勉強しよっかなって」


料理の勉強か‥‥

お菓子ぐらいだったら作るけど流石に料理はしないんだよね‥‥私。


「あ、そうだ。小山さん、一緒にご飯作って圭祐君に食べさせない!?」

「え、私!?」

「うん。やってみたくない!?」


佐那ちゃんは凄く笑顔で勧めてくる。

さっきまでは申し訳そうな雰囲気だったがそれも一変して楽しそうな雰囲気。

そんな楽しそうな顔をされたら断るほど心の強い人間じゃない私だ。


「ま、まぁ別にいいけど‥‥」

「よし!それじゃいつから始めるか話そ!あがってあがって!」


しっかりと了承してしまった。

こういう時に流れに流れてしまう性格を直したい。

‥‥まぁ佐那ちゃんの笑顔は悪くないけど。


* * *


「それじゃ、早速始めたいんだけど‥‥小山さんって料理できる方?できない方?」

「お菓子作りとかしかしないからできない方かな」

「え!お菓子作れるの!?」


佐那ちゃんが目を輝かせて見つめてくる。


「まあね。バレンタインとかよく作るよ?」

「バレンタインかー。作ったことないなー。誰に作ってたりするの?」

「まぁ友チョコだから女子ばっかだよ?あ、あと圭祐にも作ったことあったっけ」

「えぇ!?圭祐君にも!?」


佐那ちゃんの頭の上に?が浮かんでいた。

‥‥これあんまり言わない方が良かったかな。

少し困った状況になった、私の失言で。


「友チョコ!友チョコだから!」


バレンタインと言ったら本命だけと言うことは無い。

私が渡したチョコで男子と言えば確かに圭祐だけ。

でもその時は‥‥友チョコ。


「ふーん。また今度圭祐君に聞こっかな~」

「聞くなあぁぁー!」


佐那ちゃんが少し後ろに下がった。

私が大きな声をつい出してしまったために少し驚かしたかもしれない。


「あ、ごめん。急に大きい声出して」

「いや、いいよいいよ。私も悪かったし」


* * *


「よし、それじゃ小山さん。早速料理しちゃいますか!」


エプロンをつけてやる気満々の佐那ちゃん。

佐那ちゃんのエプロン姿、可愛い。


「ちょっと待って、エプロンとかないんだけど私‥‥」


佐那ちゃんに気を取られていて忘れていたが私はおつかいを頼まれただけなので自分のエプロンなんて準備していない。


「エプロンだったらもう一つ持ってるから大丈夫!」

「それじゃ、それ借りよっかな」

「ちょっと待っててね、取りに行ってくる」


急いで部屋に取りに行った。

私はその間に初めて入った佐那ちゃんの家のリビングを眺める。

一番目に着いたのは観葉植物。

部屋に緑っていいよね‥‥私も置いてみよっかな。


「はい、お待たせ!絶対これ小山さんに似合うと思うんだ~」

「え?」


佐那ちゃんが持ってきたエプロンはピンクのフリフリエプロン‥‥

笑顔で持って来ている佐那ちゃんだがその笑顔が逆に不気味で悪魔にしか見えない。


「えっと、佐那ちゃん?」

「これが良いと思うんですよ~。小山さん可愛いし?」

「ちょっと待ってくれないかな?」

「え、なんで?いいじゃん可愛いし」


エプロンを持ちながら笑顔でこちらに向いてくる。


「できれば‥‥他のエプロンって、ないのかな?ごめんね」

「もう一つあるけど地味だよ?」

「一回その地味な方を持って来てくれる?」

「はーい」


ヒラヒラエプロをリビングの椅子に掛けてまた部屋に行ってしまった。

少し残念そうに見えたのは気のせいかな?


「小山さん、これなんだけど‥‥」


佐那ちゃんが持ってきたエプロンは言っていた通りだった。

でもさっきのが派手過ぎただけで普通の真っ黒のエプロン。

ただの普通のエプロンだった。


「あ、これ使う。ありがと佐那ちゃん」

「これ使うの?さっきの方が良いと思ったんだけどなぁ~」

「あれは佐那ちゃんの方が似合うと思うんだけどな‥‥」

「それじゃまた一緒に着よっか。二着あるし」

「また今度ね」


あのエプロンが二つあるらしいけど、着ない。


「よし!じゃあ準備が整ったことだし!初めて行きますか!」

「それで?今日は何を作るの?」

「えっと‥‥待ってね‥‥」


料理本を開いて料理を見ている佐那ちゃん。


「佐那ちゃん?料理は先に決めるものじゃないの?」

「どうにかなるから大丈夫!」

「まぁ、佐那ちゃんに流れとか任せるから」


佐那ちゃんの流れに任せていく。

本を読んでは料理を一品一品作っているその姿はとてもかわいい。

女の私から見ても物凄くかわいく思えるのはすごい。

圭祐は今まで女子が私以外近寄っていた印象はなかったため時代の流れだなぁとつくづく思う。

‥‥圭祐?


「あ、佐那ちゃん。これ料理作るのはいいけど圭祐どうするの、ご飯冷めちゃうよ?」 

「あ‥‥作ってたらそっちのこと忘れてた‥‥。どうしよ」


やっぱり忘れてたのか‥‥

今日会った感じはすごく暇そうだったので今から誘おうと思ったら別に無理じゃないだろうけどなぁ‥‥


「どうすればいいと思う?今から呼んだってすぐには来れないだろうし‥‥」


佐那ちゃんがご飯のウィンナーを炒めながら悩んでいる。

やっぱり誘った方が良いのか、それともこのままにしておくべきなのか。


「今回は普通に食べよ?また今度に圭祐呼んだらいいし」

「やっぱり今日は無理だよね‥‥ごめんね?私がそう言って誘ったのに」

「そんなのは気にしない!別に圭祐はどうでもいいでしょ」

「ありがと」


佐那ちゃんは案外すぐ謝る。

明るいキャラでも人の心をすごく気にしてしまうためなのか‥‥


* * *


「いただきまーす」

「いただきまーす」


圭祐の件に関してはなかったということになったので二人だけで楽しく料理をすることができた。

変な空気じゃなくなって肩の荷が降りたのは言うまでもない。


「うわっ!これマジうまいわ。佐那ちゃんって実は料理できるんだねぇー」

「そう?なんだかそんなこと人に言われることなんてないから嬉しい。でも小山さんの料理だっておいしいよ?これとか」

「私料理の才能あったかも!?」

「私もあったかも~」


二人で食べたご飯は物凄くおいしかった。

一緒に食べるということよりも一緒に作ったということが少しでも距離を近づけることができた良い要因かもしれない。


「ねぇ佐那ちゃん」

「ん?」

「私の事さ、小山さんじゃなくて恵理とか下の名前で呼んでくれる事ってできるかな‥‥なんか距離感じるからさ、その呼び方」


もっと距離を近づけるために佐那ちゃんに聞いてみた。

小山さん、小山さんと言われるとやはり距離を感じてしまっていたから‥‥


「それじゃあ恵理って呼ばせてもらうね、恵理」

「うん!ありがとう佐那ちゃん!」


今日のこの時間は最高に楽しかったし嬉しかった。

もっと佐那ちゃんのことを知っていきたいとも思ったしもっと一緒に思い出を作っていきたいとも思った。


「よろしくね!恵理!」

「よろしく、佐那ちゃん!」









                                                                                                                                                                                                         















  






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