一年前、正來蒐
11話
──家族の秘密。家族にも秘密。
▽
暗い。寒い。怖い。寂しい。感情に名前があることも知らないまま生きていた。
5歳の時。押し入れの扉が開いた時、初めて光を知る。扉の向こうにいた二人の女の子は私を見て不思議そうに目を丸め、こう笑った。
「きれいなあかいろ!」
日光が後ろから差し込みさらに彼女達が眩しく感じられた。
それが初めて二人に会った日。
以降姉達は母の目を盗んでこっそり私に会いに来てくれた。
上の姉、碧は言葉を教えてくれた。懐中電灯と教科書、お古の絵本を抱えて読み聞かせをしてくれた。それから、碧は私の赤い髪が大好きで「太陽みたいな希望」と呼んだ。
下の姉、希和はお気に入りのおもちゃ、お気に入りの髪飾り、お気に入りのシール。何でも私の元に持ってきてはそれをくれた。お気に入りのお菓子を一緒に食べた時はアレルギー症状が出て死にかけた。父に叱られたのはあの時だけ。
身体的成長と精神的成長は連動していて、心を知らない子は体も成長しないと誰かが言っていた。
私も例に漏れずそうだった。 母は言わずもがな。父も父で食事面は気にかけてくれたけどそれ以外は放任的なところがあった。
碧と希和に会ったばかりの私は5歳には見えないほど小柄だったらしい。それが一気に平均身長まで伸びるから、父はすぐに二人がこっそり私に会ってることに気付いたと教えてくれた。
人なんだか、人じゃないんだか。
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