第二章、正來蒐

6話

──目が眩むほど鮮やかな赤色。それが私の秘密。




 ヒーローのマントと同じ色した赤い髪も本能のままに尖った歯も好きだった。けれどこの世界にはそれを恐れ嫌う人の方が多くて母もその一人だった。
 



 母は私が人を食べると知ったら私を真っ暗な狭い押し入れに閉じ込めた。自分と同じ雑食の姉達に見つからないように。



 そしてたくさんの言葉をくれた。「人を、食べたの…?」「こんなの手に負えない」「産まなきゃ良かった」「そこから出ないで」 「化け物」


 家の明かりが消えた深夜に父が持ってきてくれるお肉。それだけが生きる理由だった。


 でも父は私が14歳の時死んだ。


 それから知らない男の人が家に来て「ガキなんてどれも化け物だからなぁ」と笑いながら私を押し入れから出してくれた。それが父の旧友を名乗る店長。美輝はその時店長から紹介された。家族だから食べちゃダメだって。


 出会った時美輝はもうすでに鈴木優人と名乗っていた。優しい人、ぴったりの名前だと思った。

 そして、私には理子という名前をくれた。一生涯私が世界の理。これからは自分を信じて生きたら良いって。


 美輝は涼しい顔して何でも卒なくこなすタイプ、に見えて実際は馬鹿でどんくさい。

 盗撮犯もどうせ「もうするなよ」と咎めるだけだったんでしょ。だからまた撮られたんだ。
一度痛い目見せてやればいいのになんだかんだ人に甘いから。
 



 甘いと言えばあの七瀬って警察官に対してもそう。
ああいうタイプにはもっと分かりやすくしないと効かないよ。もっと突き放さないと。それにあいつは…。


 
美輝のバカ。お人好し。
 



 クソ七瀬思い出したらムカついてきた。何あいつ。私の美輝に馴れ馴れしく、

 ︎︎…私の、だもん。


 何気なく投げたダーツの矢が的の淵に当たりカタンと床に転がり落ちた。床に落ちた矢を拾い的の目の前に立って真ん中を突き刺す。目の前で花が咲くように光る赤い電気が眩しくて俯いた。


 カウンター席に戻るとちょうど晩御飯が並んでいた。


 私は昨日殺した男の肉を焼いたもので、美輝は、白いから…魚?いつも美味しそうに食べるから同じ物を食べてみたい。


 なんてね、嘘だよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る