本当の僕
「今日は歌枠配信でーす。みんな何の歌歌ってほしい?」
「ん〜ん〜」次の日、ゆいかは全く声が出てこなかった。
(絶対昨日の配信のせいだ)そんな恨んでも意味のないことを恨んでいるゆいかの持っているスマホがこの音楽の授業の時間ずっと震え続けている。
「昨日ゆいちゃんにリクエスト聞けてもらえたー」
「それな、ゆいちゃんってほんとリスナー思い」クラスラインが動き続けているのだ。ちなみに、音楽の先生はおばあちゃん先生なので別に怒られない。
ピコン「でも神会って人の歌多くなかった?」「それな俺も気になる。でも歌声良かった。」と悠が送っている。
なぜゆいかが昨夜、嫌いなクラスメイトのリクエストも聴きながら歌枠配信をしたのかと言うと、悠、神会の歌を歌いたかったからだ。神会は歌をつくっているがあまり売れていない。でもゆいかはそんな歌が大好きだった。そんな彼に歌声が良かったと言われて、あの学校ではいつも無表情のゆいかが舞い上がってしまった。
「なにニヤニヤしてんのキモいよw」とアカウントネーム″うさぴ〟が言った。(あーこいつのリクエスト拾ってやったのにな〜)
「何ですか?、僕だって」ゆいかが言い返し、話を続けようとしたら
「キーンコーンカーンコーン」チャイムが鳴った。
(僕、運悪すぎ、)ゆいかはその時気づかなかった。学校ではいつも一人称を私にしているのに「僕」と言ってしまった事に。
ゆいかは屋上に向かった、、サボりに。
ガチャガチャガチャン!本来屋上には上がれないが、ピン留めで開けられることに気付いてしまったゆいかは時々ここでサボっている。
すると、
シャララーンとギターの音がした。
(ん?演奏中?)
そっとドアの隙間から覗くと、カメラの前に立つギターを持った男の子がいた。しかも、マントのようなものを着ている。そして、ゆいかは撮影中だな、ということに察したのに何故かそのままドアを開けてその子の方へ行った。
そして
「サーシャさんじゃないね?」と意味わからない質問をした。
「いいえ」その男の子はハッキリ違うと言った。そしたらゆいかはにっこりと笑った。
サーシャというのはネット活動者で動画の中でも「もしも僕らしき人を見つけたら、サーシャさんじゃないね、と言ってください。驚かずにいいえと答えたらそれは僕です」と言っていた。
サーシャと呼ばれる男の子は笑いながら
「バレちったー」とおどけたように言った。優しい人だとゆいかは瞬時に思った。というか、、
「あなたこそゆいちゃんでしょ。」
「僕もバレたか〜」二人はよく実際に会ったことはないがコラボをしているので声ですぐ分かるのだ。そこから初対面を喜び、たわいのない会話をした。
でもゆいかへの質問ばかりだったのでゆいかが
「サーシャの話も聞きたい」と言うと、しばらくの間があった。
そして、サーシャが「あちー」と言い、マントを脱ぎ、、ゆいかは驚いた。
「びっくりした?僕は、、いや私の名前は山田幸だよ。」サーシャがスカートを着ている。そう、サーシャは本当は女の子だったのだ。
「びっくりはしたけど、全然気にならないよ。」とゆいかが平然といった。すると、サーシャ、いや幸の方が驚いた顔をした。
(えっ?何でそんな顔するの?)とゆいかは思った。
いや、そういえばどこかで見たことがあるかも知れない、サーシャは昔友人に自分の好きなもの認めてもらえなかったこと、コラボ相手に実際にあったら幻滅されたことがあるという投稿を。
「話してくれる?」とゆいかはおそるおそる聞いた。
すると、幸がぽつりぽつりと自分のことを話してくれた。
なぜ、コラボを実際に会ってしてくれなかったのか、本当は男の子として生まれたかったこと、生きにくかった今までの事。
「現実の私を見たら引かれると思ったんだよ。前、コラボ相手に一回会ったことがあるんだけどそう言う感じなんだね、って引かれた。だけど、現実の私本当の僕じゃない、、、
だからゆいちゃんには会いたくなかった。…よくわかんないよね、ごめん」
要するに幸は体は女の子だが、心は男の子という、トランスジェンダーなわけだ。
「んー難し!」とゆいかが言い、幸が無理だったかと諦めようとした時
「でも、そんなんどうでもいいかな、好きなように生きればいいんじゃない。」とゆいかが言い終わると幸が「ぼくこれでいいのー?」とゆいかに抱きつき泣き出した。
ゆいかは一瞬戸惑っとがすぐに、
「良いんだよ、幸“くん”」と言った。
そして長い1日が終わり、ゆいかは現実のなんでも話せる友達が一人出来た。
だが、その後授業をサボったことにより二人仲良く先生に怒られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます