ネットの世界では完璧でも現実では少し抜けてる配信者のお話

橋本 愛佳

出会い

「やっほーみんな!新規さん、いらっしゃい!…えーコメント読んでいきまーす。今日も声とってもかわいいね。○○さんありがとー。こないだもコメしてくれてたよね。新規です″ゆいちゃん〟とってもかわいー。ありがとー新規さん…

あーもうこんな時間だし僕明日も学校だからこれで終わるねー。バイバーイ」

“今日も見てくれてありがとう”という画像が画面に表示され、配信が終わった。

「あ゛ー疲れた」さっきの配信とは声自体は同じだが、テンションが全く違う声が聞こえる。

「今日の視聴回数は5万かまぁまぁいったな」

彼女はネットの世界で大人気の配信者、顔は出していないがイラストではピンク髪のツインテールだ。名前は『ゆいか』愛称、ゆいちゃん、一人称、僕。

運営の人との会話が配信に入ってしまったという切り抜き動画がバズり

「いつもと違うゆいちゃん、真面目な感じでかっこいい、逆に好き」と、逆に人気に火がついた現役高校生なのだ。

「明日も学校かー」やけに嫌そうな声で言う。そう、現役高校生なので夜中の2時まで配信をしても学校に行かないといけない。いろんな層の方に見てもらうために20時から夜中まで配信をしている。

「おやすみなさい」誰にも届くはずない部屋でゆいかはおやすみと言って寝た。


次の日の朝、

「おはよー昨日のゆいちゃんの配信見た?」ある女の子が言うとクラスメイトは

「見た」など、どこが「良かった」などと話し出した。だがゆいかはこの話には参加しない。

なぜなら、

「このクラスにもゆいちゃんと同じ名前のやつがいるのに…

 ゆいかはゆいちゃんと違って全然可愛くないよね」あるクラスメイトがゆいかを見て笑いながら言った。クラス中に笑いが起こる。ゆいかが言い返そうとした瞬間、

「お前ら席につけー」先生にさえぎられた。

(バカな奴ら。ほんもの向かってそんな口を。全員のアカウント名知ってるからな、、いや何人かは知らないけど)

そうネットの世界のゆいかはとってもかわいい天然キャラだが、現実世界のゆいかは超のつく腹黒女なのだ。


その日の夜の配信にて、

「今日学校でひどい事言われたー。みんなーなぐさめて…かわいそー誰その酷いやつ。なぐさめコメありがとー」

(まぁ、酷いやつっていうのはお前のことだけど)

(あっまただ、このアンチコメ。覚えたぞクマ野郎さん)


次の日の学校にて

(うーきぼぢわるい、夜中まで毎日配信してたからかな)

ゆいかの顔色は誰が見ても悪いと思うような顔色だが、何故かだれも気づいてない…

いや気づいてるけど無視をしているようだ。

ゆいかはこっそり教室を抜け出して保健室へ向かった。


ガラガラ

「失礼しまーす」ゆいかは静かに保健室のドアを開けた。

すると

「すーぴーすーぴー」と聞こえた。

誰かが寝ているようだ。

ゆいかも自分が体調が悪いということを伝えて誰かが寝ている隣のベットに寝た。


何時間かたちゆいかは目を覚ました。養護の先生は…いないようだ。

「ふぁー」あくびを一つ。

そして、スマホを取り出した。ちなみにこの学校はスマホ禁止。

(ツウィッター 見よーっと。あっ)

ゆいかはなにかを見つけた。その投稿を見ると「保健室なう」と書いてあった。

(しかも、このシーツの模様、、)

ゆいかは隣の誰かが寝ているであろうところのカーテンを開けた。

「うわっなにするんだよ」その男の子は驚き声をあげた。そしてはっとして、スマホを隠し…

「いや、これには理由があって、、」と言い訳をしようをした。だが、

「あなた、神会さんですよね」とゆいかがさえぎった。

「えっなんで知ってんの?…お前もしかして俺のフォロアー?」と神会と呼ばれる男が聞いた。

「いいえ、いや、実質そうなんだけど、、、、、私のこと覚えてませんか?」

とゆいかが言うと、神会は考え込んだ。

(あっこれ声だけじゃわからないか、)

ゆいかはスマホを取り出し配信者しか入れないページを開き、見せようとして、、やめた。そしてツウィッターの画面を見せた。

(身バレしちゃうとこだったー)とゆいかは心の中で思った。

神会はスマホを見つめると、

「あーお前めっちゃ俺を追いかけてくるウザフォロワーか」と言った。

「ウザフォロワー?」ゆいかはウザいという言葉が引っかかった。

「そうだよ。お前俺が何個裏垢作っても見つけて、バラすじゃん。」

(そういえば、そんなことをしたような、しなかったような)

ゆいかは家でパソコンにずーっと向かっているせいでそういう変な知識までついてしまったのだ。

神会がぶつぶつ文句を言っている間、ゆいかはそんなこと聞かず、神会の顔をじっと見つめた。

(全然気づかなかったけど、この人クラスメートだ)ゆいかは普段学校でほぼだれとも顔を合わせて喋らないから気づかなかったが、この神会という男はゆいかのクラスメートぽい

(んー名前、思い出せない、、)何度も言うようだがゆいかは学校で誰とも喋らないので名前なんぞわかるはずもない。

「えっと?マコトさん?」勘で言ってみた。

「えっ?誰やねん」変なツッコミを入れてきた。名前、違うようだ。

「あー名前な。クラスメイトの名前ぐらい覚えろよな、、俺の名前は」

と言いかけたところに養護の先生が帰ってきた。

「あー2人とも元気になったのね。ん?」養護の先生は2人がスマホを持っていることに気づいて怒ろうとしたその時、

「いや、俺ら連絡先交換したいなーって話してたんですよ」と顔を赤くして嘘を言った。

(何で嘘つくの?)とゆいかは疑問に思った。だが、養護の先生は

「そうだったのね。」とニヤニヤしながら許してくれた。

(そうか、養護の先生恋愛の話好きだもんな)とゆいかは思い出した。

そして、ピコン!いつの間にか本当に神会と連絡先を交換してしまった。

「じゃ、おれらもう元気になったので教室に戻ります。」

二人は逃げるように保健室から出た。そして、スタスタとゆいかだけ下駄箱の方に向かって行った。

「何でそっちに行くの?」神会が聞いた。

「早退です!」ゆいかはスマホの画面を見ながら言った。

「ズル休みじゃねーかよ」と神会、、いや、悠が言った。

(神会さん本名悠って言うんだ)ゆいかの口元が緩んだ。



その夜の配信はやけにゆいちゃんが元気だとリスナーに不思議がられていた。

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