第10話 やはり俺のパーティーメンバーはつよくなりすぎている。
襲撃してきた魔物を返り討ちにして血祭りに上げるとち狂った奴らが住む村で夜を越えて翌日。俺たちは日の出の前にここを出発した。
「勇者様、どうかご無事で」
村長は村人たちを叩き起して俺たちを見送ってくれた。ちょっと申し訳なくなる気もするが、村人達は迷惑そうじゃないっぽいし大丈夫かな。
※ ※ ※
光と魔法の森を俺たちはただ淡々と突き進んだ。ここの魔力と勇者の魔力の相性が良いおかげか、歩いていて疲労感はなかった。
「エーデルハルトさん、疲れてたっぽいけど少しは休めた?」
「まあ、ゆっくりは出来たよ」
「安心して寝られるのもあと何回かだな」
「そろそろ旅も折り返し地点まで来ましたからねぇ」
えっ、待ってたんま。そんな魔王城近いの? ヤバすぎウケないんですけど。
前世はそりゃレベル上げや色んなとこで人助けしてたから若干遠回りはしたけど、こんな高速で半分終わるの!?
「ここからは戦略を立てながら慎重に行きましょう。それに当たって、お互いの基礎情報を開示しませんか?」
「そう、だな。俺はもちろんだけど、お前たちのスキルとかを確認したい」
本当だったら『鑑定スキル』で技や魔法以外にも、攻撃力や防御力なんかも俺の『蒼の窓』に情報として記載される。
のだが、この世界だとみんなレベルがインフレし過ぎてて俺のスキルで全部見ることが出来ないみたいなんだ。一部の表記だけが砂嵐の中みたいにザザっとブレて読めなくなっている。
しかもコイツらに関してはレベルがおかしいせいからか、他の情報が一切見れねぇ。
ちなみに現在奴らのレベルだが、ラセルがレベル438。ガウエンはレベル672。そしてエドがレベル756。なんでたった1週間で数倍まで上がるんだよ。お前ら初期値100後半から200ちょい越えだっただろうが。
そんな文句を心の中で吐き切りスッキリさせ、俺は自分の情けないステータスを公開する。
「まずは俺だな。ステータス数値は省かせてもらうが、俺は勇者のスキルを中心としている。剣技と中級の攻撃魔法と補助魔法。あとは浄化作用のある勇者の魔力ぐらいだ」
一応、当時はどれも歴代最強クラスだったし勇者にしては使える魔法の数も増やす事が出来た。とはいえ、この時代だとぶっちゃけそこらの村のガキと大差無いんだけどな。
「じゃあ次は俺かな〜?」
ラセルは手を挙げ、次は俺の番と言って己のステータスを明かす。
「俺は魔法とか技は全く覚えてないんだなぁ。あるのはユニークスキル1つだけ。スキル名は『フルスロット・ギャンブリング』」
薄々勘づいてたけど、やっぱりギャンブルに関するユニークスキルか。
「俺の行動や起こる事象に『賭け』をする。賭けはスロットとかサイコロとかの確率が基準。攻撃を入れる時も食らう時も賭けをして、当たれば俺の都合の良い状況になる」
「じゃあ攻撃の時は攻撃力や会心効果に、防御や回避時は受けるダメージにスキルを発動するのか!」
「そゆこと。あとはベッドや確率を大きくするとリターンも増えて、防御力や攻撃力もアップする。特にスキルを瞬間に絞って使うと効果が倍増」
凄まじいスキルだな、と俺は率直な感想をラセルに伝える。するとやつは嬉しそうにへへっと言って鼻を擦った。
「この能力のために俺は、幸運値を200まで上げたんだ」
えっ、幸運値って100が上限だよね? だってあれ、基本ステータス数値はパーセントが基準だもん。ってことは常にラッキーってことやん。は、チートじゃん。
ラセルの驚異的なスキルと幸運値の高さに俺が仰天している中、続いてガウエンが話し始める。
「次は俺だな兄ちゃん。つっても、武芸百般のガウエンと名乗ってるぐらいだ。ステータスなんて大体分かんだろ?」
「ああ。ガウエンは体術や武器術を中心とした技やスキルが戦闘の主体だろ?」
「その通り! だが俺は武器術や体術に関しちゃ、スキルじゃねぇよ」
えっ、スキルじゃない……?
「俺は獣人族の唯一の生き残りだった師匠に拾われてな。スキル依存でしか武器術を極める者がいない世で、俺は地力で武術を習得した」
「なっ! ということはもしかして……」
「ああ。スキルの恩恵やバフなんてねぇ。ただ己の肉体と技術で培ったもんばっかだ。地味なもんだが、役には立つぜ」
いや、そんなことはねぇ。てかコイツ相当な努力家だな。俺の剣技もそうだけどさ、普通はユニークスキルがあるか、武器スキルを先に習得するとかしねぇと複数の武器なんてあんなの使いこなせるもんじゃねぇよ。
そういう適性があるか作るかしてやるのが主流なのに、お前はそれを蹴って自力で体得したのか。ましてやガウエン、槍とか剣以外にも見たことねぇ武器色々あるやん! 戦い方もそれぞれ違いそうなのに。
改めて見直した。ガウエンだけは純粋に尊敬出来るわ。人としてもこいつはこの中じゃまともだしさ。それに比べたら俺の剣術の師匠なんか屁でもねぇや。
「最後は、私ですね」
真打登場、と言わんばかりの雰囲気を纏ったエドが語り始めた。正直、こいつが1番気になる。
「私も大したものではありません。貴族出身の魔術師ですので魔法や座学はそれなりに修得しましたが、実力はそれほどでは」
「謙遜なんかしなくて良いって。俺はお前が凄いってことは知ってるんだぜ?」
だってお前、この中で1番レベルたけぇーじゃん。
「とはいってもあとは魔法の同時発動、無詠唱発動。即席の神獣召喚と、魔力を自分以外の周囲から吸い集めて使う程度ですかねぇ……」
いやヤバかったヤバかった想像の遥か天空いってた!!
まず魔法の同時発動や無詠唱って、俺らの時代じゃ神しか出来ない技の扱いだったぞ!? 魔法発動の省略が関の山だった時代だぞ!!?
しかも後半2つはマジで頭おかしい。神獣は複雑な術式や色んなアイテムを捧げないと成功しないし、周りから魔力吸い上げんの魔王しか出来てなかったから! 永久機関完成してるじゃんかよぉぉぉぉ!!
むしろお前単騎でも爆発魔法ぶっぱするだけで昔なら魔王どころか世界取ってたぞ。魔法は色々修得してるって言ってたし、深くは聞かなくていっか。
そう俺は思っていた。だがエドが自身の実力公開を濁しながら伝えているのが分かると、ラセルとガウエンは笑いながら彼の肩を叩いた。
「何言ってんだよ。エドは俺らの中でも1番武闘派だよ〜?」
「間違いねぇな! この若造は頭の良い坊ちゃんの癖して、戦い方はド派手だかんな。ガハハハハハ」
「2人とも、止めてくださいよ……」
こっわいんだけど、エド。ラセルとガウエンが認めるぐらいってどんだけだよ。考えればこいつ、戦闘の時は決まって補助や回復に徹してたしな……
逆にちょっと怖くて戦ってるとこ見たくねぇな。
恥ずかしがるエドは頬を赤らめながら話題を元に戻した。
「まあこんな所でしょうか。このパーティーが強者揃いとはいえ、油断は出来ません。締まっていきましょう」
もうこれさあ、魔王余裕なんじゃね? 俺は口から出そうになっていたその言葉を喉の寸前で飲み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます