第9話 この世界、元からイカれてたかも
「間違いない。この剣は魔剣『ダーウィン・スレイヤー』でございます!!」
やっぱりこれ魔剣だったか。だって闘気がこもりすぎてエンチャント出来るレベルの自我も芽生えちゃってるしな。
ていうか
「ダーウィン・スレイヤー? なんか聞いたことがある気が……」
「この剣はかの伝説の勇者……貴方様がお使いになられた聖剣エクスカリバーと対の剣でございます」
「エクスカリバーの対!? 一体どういうことだ」
えっ、エクスカリバーって洞窟の岩に刺さってたから俺が引き抜ぬいて適当に拝借させてもらっただけなんだけど。やっぱアレすっげぇ剣だったんだ。だって武器屋の最強武器よりも攻撃力とか高かったし。
「勇者様が魔王を滅した後、勇者様のお仲間であらせられた賢神アルスフォン様が持ち帰った魔剣でございます。アルスフォン様がエクスカリバーの製作者と直接お会いされ、この剣を授けられたと伝わっています」
えっ、アルスフォンがこれ持ってきたの!? 俺のパーティーで魔法全般やってくれてて、元は近所の弟分だったあいつが。頭回るし、パーティーもあいつがいたから上手くいってたとこがデカいんだよな。
はぇ〜今じゃアイツも賢神って言われてんだ。そういえば魔王倒す前も次元なんたら論文とか亜空間術式とかよく分からんすげぇ魔法研究してたもんな。いやぁ、2000年経ってから聞いた昔の知り合いの情報で良かったやつ初めてだわ。
「そしてアルスフォン様は魔剣を王国へ献上されると、褒美の財宝で何人もの女性や自分の子孫たちと交わり大家族を作って豪遊したという話は有名でございます」
さっきの言葉、クーリングオフさせて頂きます。合法ハーレムしてるやんけクソ野郎がッ! 羨ましいな畜生。こちとら一夜の過ち×3が今でも国の歴史単位で残っとんのやぞ。
……ていうかアルスフォン、お前自分の子供とかとも子供作ったの!!? ちょっと待てちょっと待てそれは流石にイカレてんだろ!!! あいつそんな変態性があったのかよ!!!! こんなことなら知りたくなかったわ。
「そんな豪傑であらせられたアルスフォン様だからこそ、このダーウィン・スレイヤーは人目の前に現れるようになったのかもしれませんね」
いや関係ないやろそこは。じいさん、それもう完全にディスってるよね。
──あれ、でもなんかおかしくね?
「1つ聞きたい。このダーウィン・スレイヤーはなぜここまで強いのだ? 対になっているという俺のエクスカリバーはこんなに良い性能ではなかったぞ」
「それは時代のせいでございますね。勇者様が眠っておられた2000年の間もこの魔剣は魔力を吸収し続け、今の力を手に入れたのです」
ああ〜それなら納得。てかそれなら、エクスカリバー以上の力あるし魔王とか余裕じゃね? 握れないけど。
まあ最悪、この間みたいにほん投げれば良いか。なんとか弱いのがバレないようにしてアイツらに守ってもらいながらイージークリアでも別にいっかな。
「しかし難点もございます。聖剣は勇者の魔力と同性質の力を持つ剣ですが、これは魔王に近しい力を持ちまする」
「ということは、効かないということか?」
「いいえ、滅することは適います。問題は所有者である勇者様がこの剣にて魔王にトドメを刺した時、力が反発し合って死んでしまう可能性があることです」
え、やだそれ。そんじゃ使いたくない。ラセルに捨てさせよ。
「ですが災いを免れる方法もあります。それは三人の聖戦士の存在でございます!」
「聖戦士……! それは一体──」
「伝承によれば『橙の獅子と微笑む遊び人、暴風の賢者と
うん、それって完全に
てか最後の魑魅魍魎って何、怖っ。え、地獄にでも行くの?
「それとたしか自爆機能もあるとかないとか……」
ちょちょちょちょちょ、ちょっ待てよ!! なんでそんなもん付けた製作者!? 俺の生きてた時代にもそんなデンジャラスサイコパスいたのかよ!!!
「まあまあ。勇者様とそのお仲間の皆様であれば、きっと心配ありませぬ。この先、ご武運を」
俺は村長から聞かされた情報の数々で頭が混乱していた。何よりもベクトルを見失ったショックが山ほどある。
……でも、まあ。
「ああ。そのお言葉、感謝する」
なんだかんだ言っても、俺は勇者なんだ。
この世界を守る使命や待ち受ける試練は、2000年前にはもう固まっている。この時代が規格外のバケモンばっかで、そこらを散歩するだけでも命の危険だらけで、レベルも上げられないドM縛りの冒険だが、それでも甘んじて受け入れるさ。
たとえこの命が尽きようとも。どうせ1度は死んだ命、惜しくもない。
それこそが勇者、エーデルハルトだ。
忘れかけていた初心をほんの僅かに取り戻し、俺の決意は固まった。2度目のこの人生も俺は世界のため、魔王を討つために賭す。それが勇者である者の誉れだ。
と、我ながら少しは格好のつく独白していた訳だが、そんな余韻に浸る間もなく村の屋根の上からラセルが声をかけてきた。その右手に、人の顔の倍はある獣の生首を握り締めて。
「エーデルハルトさぁーん! 見てこれ、パズズみたいな魔物のあたま〜」
ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 前言撤回、こんな奴らとの冒険なんてやだ、無の空間に帰りたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!
いっその事、楽に死なせてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
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