第7話 エルフぅぅぅぅぅぅ!!
走行要塞『ダチョバーダー』で平原を走り抜けて3日、俺達は目的地だった光と魔法の森に到着した。
「げほっ、おえっぷ……」
俺は船酔いのような症状に襲われていた。頭痛と吐き気が止まらねぇ。おえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
「ほら、このポーションで口ゆすぎな」
「げほっげほっ、ありがとなガウエン」
道端の雑草の上に嘔吐していた俺に、ガウエンは少し多めのポーション入りの水筒を渡してきた。ひとしきり吐くと俺はポーションをグイッと飲み干す。
何だろう。最初は1番怖そうだったけど、何だかんだガウエンが1番優しい気がする。
「にしてもここが、光と魔法の森か。懐かしいな」
ここに最初に来たのは、俺が7歳の時だったかな。
「アンナ、フォル。あいつらは元気かな……」
アンナ、フォル。俺が幼少の頃に知り合ったエルフの女の子と男の子だ。
森に迷い込んだ俺を村に連れて行って、遊んだり数週間ほど飯の世話にもなった。村の頭の固いオヤジたちやビビってた奴らも徐々に心を開いて、最終的にはこれがきっかけで人とエルフの間を俺が取り持つことになったんだよな。
魔王城突入前なんかは、協力して連合軍が作られた程度には親交も深まってたし。エルフは何千年も生きるという長命の種族だ。もしかしたらじいさんばあさんになったアイツらに会えるかもしれねぇな。
「エーデルハルト殿」
「ん?」
「とても言い難いのですが──」
あれ? このパターン、前にも見たことがあるような……
「エルフ族はおろか、亜人族のほとんどは1200年前にもう絶滅しています」
またかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁマジかよクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
「なっ、なんでだ!? ガリレウスの時と違って、種族が全滅するなんてどんな天変地異が起きたんだよ!!」
エドは残念そうに落ち込んだ顔をして事の詳細を語り始める。
「亜人族は私達人間とは生活圏が離れています。しかし、亜人族間の集落は比較的密接な関係を築いていました」
俺の時代の前に戦争やっちまってたからな。適切な距離を保つためにも、生活圏は離してたんだっけ。
「そして1200年前、エルフ族は究極魔法の1つを成功させたのです」
「究極魔法、だとッ!?」
「はい。彼らが発動させた究極魔法はその中でも難易度の高い魔法、『別世界を覗き見ることが出来る』魔法でした」
そいつはヤバいな。この世界より発達した世界の技術を習得するとか、出来るもんな。その魔法の利権争いになったとか?
それともまさか、覗き見てたことがバレてで異世界との戦争か何かが起きたのか!? プライバシーの侵害的な。
「彼らはその魔法で別世界を覗き見た時に絶望し、暴動が起きたのです。『なんで俺らが本の中でこんな酷い目に会うんだ』と」
「……ふぁ?」
「『なぜエルフは無条件に森を焼かれるんだ』とか、『エルフの娘に人権はないのか』とか、『人の子など孕みたくない』とか」
「???」
えっ、何それ?
「そんなことを叫びながら、彼らは村で暴動を起こして自ら全滅していったらしいです」
はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!????
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だろ!!!!????
転生してから1番意味不明な答えが更新された。なんでそんなことになってんだ。村とは言っても、亜人族全体で見たら結構な規模だぞ!? エルフ以外にもドワーフやゴブリン、ケット・シーとかもいるし。亜人族同士のハーフやウォーターも!
あまりの衝撃で言葉を失っていると、ラセルやガウエンが追撃情報をぶち込んでくる。
「エルフ以外の種族も『なんでゴブリンが化け物扱いなんだ! 俺らだって顔のことは気にしてんのに……』とか『耳やしっぽが生えてるだけで私達は汚ぇおっさんの餌食になるんだ!』とか言ってたらしいよ〜」
「ダークエルフの奴らも『俺達は普通のエルフと対して変わんねぇだろ! ハイエルフとダークエルフでなんで待遇に差があるんだよ!!』って言ってたって、師匠から聞いたことがあるな」
理解不能理解不能理解不能理解不能!! 一体別の世界の何を見たんだあいつら!!! ていうか異世界人怖すぎんだろ!!!!
そんなアホな理由で自滅するんじゃねぇよ亜人族!!!!!
「まあそんな昔話もそこそこに、森の中へ進みましょう。この先に村があるので今日はそこで休みましょう」
ちょいちょいちょいちょい、俺にとっては超重要な話なんだけど! マジで根こそぎ長命種のダチがバッドエンド迎えてんだけど!!
──俺は半分放心状態になりながら、森の中へ進んだ。
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