第1話 なんかみんな俺より強ぇんだけど

 2000年ぶりに復活して早々、俺は言葉を失った。


「うっそだろオイ……」


 眼前で群がっている、俺よりレベルの高い民衆たち。


 うそだ、嘘だと言ってくれ。そんな、俺は勇者だよ? 一生かけて上げたんだよ45までを。流石にそのレベルがこんないるわけ……


「よくぞ、よくぞ再臨してくれた。大勇者エーデルハルト!」


「あ、ああ。貴方はこの国の王ですね……っ!」


 その時、俺の目に飛び込んで来た。このおっさんの頭上に浮かぶレベル58の字が。


 まぁぁぁぁぁぁじぃぃぃぃぃぃぃぃぃかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


 てめぇが魔王倒せやこんちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


「勇者よ、どうかこの世界を救ってくれ!」


 あんたイカれてんのか? こちとら本来なら最盛期である今の状態でお前以下なんだぞ。そんなの無理だわ。


「任せてくれ。このエーデルハルト、必ずや魔王を討伐してみせる」


 言えるわけねぇよぉぉぉぉ! これでも真面目に勇者してきたんだ。こんな目ん玉輝かせてる連中の期待を裏切れるわけねぇよぉぉぉぉ。


「うおおおおお勇者様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「やった、これで魔族の支配から解放される!!」


「長きに渡る因縁、これにて終止符だァ」


 歓声を上げるな。良心が傷つく!


「して、勇者よ。お主のレベルはいくつだ?」


 禁断の質問が来てしまった。この状態で期待を裏切るような真似をするのは大変心苦しい。

 だが勇者の性というものは恐ろしいもので、嘘を付こうかと難儀しているときにはもう俺の口は真実を語っていた。


「よっ、45です……」


 その言葉を発した瞬間、場の空気が凍り付いた。


「ま、まさか……ありえん! 歴代最強の勇者を召喚したはず、なのに。なのに……」


 ハハ、終わった。まさか2000年後にこんな形で失望されるとは思わなかったな。でも良いや、これで良いんだ。


「お待ちを陛下! 御心配には及びません」


「ぱふぇ?」


 突然声を上げたのは王の臣下らしき眼鏡の男だった。男は眼鏡の位置を直しながら手元の資料を読み上げる。


「過去の文献にて既に調査済みです。エーデルハルト様の生きた時代と我々の時代とでは、ステータスの鑑定石や方法が異なっています。それゆえの誤差かと」


 いや、いやいやいや。確かにそうだったよ? 俺の時代でさえ鑑定石の改良とか誤差はあったよ。

 でもこちとら見えとんのよ。お前らのステータス。そしてそれ見た結果、俺明らかに戦闘力平民以下なのよ。


 てかよくみたらレベルから30〜40代のやつ全員子供やんけ。

 前世の俺のお気に入り魔獣とか、良い年して戦士やってた仲間のおっさんと同等なんだけど。頼れる仲間だった奴らの名誉が地面に墜落してんだけど!


「それは誠か!」


「はい。そして陛下の召喚によって受肉したとはいえ、勇者様の魔力は2000年も前のもの。よって現在の鑑定方法では、勇者様の強さは測れぬと存じます」


「ということは無限の可能性を内包しているというわけか。流石は勇者、復活してなお成長するとは!」


 どんな都合良い解釈してんだよてめぇら。脳内の花畑で毒草栽培してんのか?


「い、いやぁそんな。あはは……」


 なんて言う度胸なんてある訳ねぇですごめんなさいすいません。もういいや、どうにでもなぁれ。


「では勇者殿の装備は明日にでも用意するとして、早速だが仲間を呼ぼう」


「仲間?」


「この時代を代表する精鋭たちじゃ。勇者のパーティーにはふさわしいだろう」


 満足そうに笑うと国王は臣下に目で何かの合図を送った。


「いざ参れ、王国の戦士達よ!」


 王の声と共に、王の間の扉が重そうな音を立てて開かれる。扉の向こうから、並々ならない闘気を纏った戦士たちが歩いてくる姿が見えた。


 あ、やば。アイツら魔王の幹部よりも強ぇじゃん。

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