足元に何が咲いていた?

@mippopo

視点

ここ何年か、私は大事なことを忘れていた。

「忙しい、忙しい、」

常に目の前の何かに追われて、考えたり感じたりすることをやめていた。

休みの日や、暇があればスマホをいじる毎日。スマホをいじれば、自分より良い生活の人を見て羨ましがって劣等感を抱く。LINEの返信を待つためにずっと画面を眺めている。

文字は電子媒体で打つばかりで、いざ紙とペンで文字を書くと漢字すら浮かばない。


私は変わってしまった。


数年前まではもっと今の自分よりなんでもできていたし、何より、輝いていた。すべてのことに興味を持って全身で感じていた。それを言葉や文字にしていた。性格は何も変わらないが、行動は別人のように変わってしまった。

常にどこか虚しくて苦しくて何かに追われていてちょっとしたことで折れる。1つのことが上手くいかなければ、この世の終わりかのように、うちひしがれてしまう。


それはそのはず。

最近は自分のことばかりだった。

自分で精一杯、周りのことは考えているつもりでも実際考えられていない。考えられていないのはもちろん、何も感じ取れていない。余裕がない。



あるひ、どうしたらいいか自分でもわからないくらいどうしようもなくなって外へ出た。

久しぶりに天気が良い日。工事の音にイライラしながら、人の視界から隠れるように裏庭へ行くと、こんなにしっかりと見たのはいつぶりだろう。枯れた花の隙間からつくしがたくさん生えていた。

裏庭に、いつも何が咲いていたっけ?

そんなことすら知らないで過ごしていたらしい。そのつくしは、真っ直ぐにたくさん生えていた。


最近は、お花が可愛いなと思って、流行りのドライフラワーや花束を買うことはあったが、自然に生えているものに対して目を向けることすらしてこなかった。

人目につかないところでこんなに立派に生きているんだ。なぜ気づかなかったのだろう。

スマホの画面ばかり覗き込んで、遠い世界ばかりを見て。こんな身近な立派なものを見逃していた。

その下にミミズがいた。いつもなら、気持ち悪い!となってしまうが、その時は不思議とそうは思わなかった。今までは自分本位で考えていたからミミズを気持ち悪く感じていたが、周りを感じながら見てみると、ミミズも一生懸命生きている仲間だと思えた。


私なんかよりずっと立派だ。

普段の私の方がよっぽど気持ち悪い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

足元に何が咲いていた? @mippopo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ