和解
姉さんからのラインがきた。
私はそこで、亮太君が四葉ちゃんのところへ行ったことを知った。
それと、私が照れていた理由も。
本当の意味で好きになったから、照れが生じたんだって。
でもその気持ちをちゃんと伝えないと、誤解されてしまう……とアドバイスをもらった。
「…………」
姉さんの言葉を聞いて心が軽くなった一方で、申し訳なさを覚えた。
私は、姉さんと再開してから今日まで、ずっとひどいことを言ってきてしまったから。
豚とか、きもいとか。
『どうしたの、ゆづきちゃん?』
「あ、いや……」
どうしよう。
今更謝って、許してもらえるだろうか。
……わからない。
でも……さっき姉さんは行ってみないとわからないって言っていた。
……嫌われてもいい、でも、やっぱり言っておきたかった。
「姉さん……ごめんなさい。ひどいことばかりいって」
姉のことを嫌悪していたのは、彼女が亮太君を横取りするんじゃないかって、思っていたからだ。
『何言ってるのゆづきちゃん? 駄目よ』
……ああ、やっぱりだ。
許してもらえないよ。
『もっともっとひどいこと言ってもらわない!』
「…………はぁ?」
『わたしはね、目覚めたの! ご主人様とゆづきちゃんにひどいことされて! おまたぶしゅぶしゅのぐっちょぐっちょになってしまう、この姿こそが本当の自分なんだって!』
……頭が痛くなってきた。
さっきまで、理性的だった姉さんは消えいた。
おかしい、電話の向こうには同じ人物がいるはずなのに。
『ゆづきちゃん、お姉ちゃんに謝らなくて良いから! むしろもっと雑に扱って! てゆーか姉さんってなに!? 違うでしょ!?』
……ほんと、なんなんだろうか、この人。
憧れの人で、大好きな亮太君の元カノで……。
私の……。
「姉豚」
『そうそうそれそれぇ!』
「……ごめんね」
でもやっぱり、姉さんなんだ。
この人は。
頭のなか性欲しかない、人間とは思えない豚でも。
それでも、たった一人の、私の双子の姉だったのだ。
「今まで……ごめん」
『ゆづきちゃん……いいんだよ。家族なんだもん、別にひどいことされても、気にしないわ』
「家族……」
『そう。何をしても、許される絶対の存在。それが家族だよ。ゆづきちゃんからひどいこと言われても、わたし大丈夫』
……そっか。
家族って、そういうもんなのだ。
『だからね、ゆづきちゃんは遠慮無く、わたしのこと豚豚豚って罵ってくれていいのよってゆうか罵ってくださいぃいい!』
「……もうわかったよ、豚足」
『豚ですらない! おほぉおおおおおおおおおおおおお! んぎぃいいいもちぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
「耳障りだ死ね」
電話から声が聞こえなくなった。
さすがにやりすぎただろうか?
『あへぇ~……♡ あひゅぅ~……♡ おほぉお~……♡ ゆづきちゃんの罵倒が一番きくぅう~……♡』
……もうなんというか、いろいろ台無しだった。
でも私は、やっと姉さんと向き合えた気がする。
過剰に、見上げる存在じゃなかった。
敵視する存在でもなかった。
もう一人の、私。
対等の存在。
それが……家族。
それが姉さん。
「姉さん。ありがとう。私……がんばる。亮太君に、ちゃんと思いを告げる」
そうして、新しい一歩を踏み出すんだ。
私はつよく、そう決意した。
『…………』
「姉さん?」
『えへへ……♡』
姉さんが嬉しそうに笑う。
私の成長を、喜んでくれてるのだろう。
『ゆづきちゃんにいっぱい罵倒してもらって、お漏らししちゃった♡』
「……………………………………一生黙ってろ豚貯金箱」
『ついに無機物になっちゃったぁ!? だが! それがぃいいいいぎもぢぃいいいいいいいいいいいいいい!』
私は乱暴に電話を切った。
ラインの着信拒否に姉さんをいれておいた。
電話の着拒にもいれておいた。
すがすがしい気分で、私は言う。
「ありがとう、姉さん。あなたのことは忘れないわ」
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