第3話
私の隣のデスクは、営業担当の島垣さんだった。私より五つ下の男性社員で、話し方が落ち着いていてパソコンのタイピングが恐ろしく速い。
速いのに、毎日のように残業している。社長のムチャぶりが半端ないせいかもしれない。きっとソレ。
神経質そうな見た目をしているが、そんなこともなく、特に忘れ物が酷い人だった。
「お前・・・わざとか?行きたくないからか?」
私と社長と小谷さんと島垣さんの四人で、仕事終わりにゴルフの打ちっぱなしに行く予定になっていた日、彼はやらかした。
ゴルフ道具一式を、家に忘れてきたのだ。
正気か・・・島垣さん、社長がどんだけゴルフに熱入れてるか知らないはずないだろ!!
「車のトランクに積んでると思い込んでて・・・すみません、わざとじゃないです・・・」
必死の弁解で何とか場は収まり、結局、打ちっぱなしには行った。
島垣さんは、社長が使ってないクラブを貸すと言ってくれたのを断り、私のクラブを一緒に使った。
レディースなのに・・・
社長の本気仕様の高級クラブを使いたくない気持ちはわかるので、許した。
なんかの武器みたいだからな、社長のクラブ。
島垣さんは、腎臓の持病がありエナジードリンクや栄養ドリンクを絶対に口にしなかった。医者から止められているのではなく、腎臓に負担がかかるのが怖いから飲まないようにしているらしい。
島垣さんは少し顔色が悪く痩せていて、持病があると言われた時に、やけにしっくりきてしまった。本人には悪いが、不健康が似合う人なのだ。私個人的にだが。
ワイシャツはいつもアイロンがかけられピンとしてるし、就業まで柔軟剤の香りがするのに・・・本人はゾンビに近い。
島垣さんは、私の勤務期間中に結婚し子供ができた。男の子で奥さん似らしい。島垣さんは、奥さんが世界の中心というか世界の全てみたいな人で、本当に幸せそうだった。あんに愛されたら、奥さんも幸せだろう。
ただ、幸せと体の健康は別ものなのだ。
彼は、息子が三歳になってすぐ入院した。
私は、既に退職した後だったので人伝に聞いただけだが、持病が悪化して腎臓移植が必要になったという話だった。
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