第3話11月の話し

亡くなる前の年の秋、実家に遊びに帰った。失業保険をもらっていたから、余裕が少しあったからだ。

2週間滞在した。

父親とドライブに出掛けたり、夜は酒をしこたま飲んだ。

親父も、薄目の焼酎だが7杯飲んでいた。

それから、帰るとき空港で親父は僕にお金を掴ませた。僕はありがとう、また来年帰ってくるからと、言ってわかれた。くしゃくしゃなお金は一万円札であった。丁寧に財布にしまった。



それが、父親との永遠の分かれになるとは。

飛行機に乗り込むタラップの窓から、手を降ったら、両親が手を振っていた。


僕は親父が亡くった2日後の夜、1人で酒を飲み、親父の遺影に向かって文句を言っていた。

悩み事があるなら僕に話せばよかったのに!

病気なら、なんで病院に行かなかったのか!

事故なら、なんで夜に散歩何かにいくのか!


僕はくそ親父が。と言いながら涙が止めどなく流れてきた。

1人は寂しいから、嫁さんちに行っていいか?尋ねたら、ダメだ!と言われた。

コロナで実家に帰れず、僕は1人きりで喪に服した。

どうしても思い出す。やっとの思いで給料をもらい、それをポケットに仕舞い僕にあのしわくちゃな、一万円札が忘れられない。

ダメだ!思い出すと泣きそうになる。

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