生きる意味。
ポコタ
生きる意味。
私は今、感情をなくしている。
何故かって?
それは、精神的に追い詰められた過去があるからだ。
そう、私は今、鬱なのだ。
私は、一般の家庭に生まれた、ごく普通の大人しい女である。
しかし、他の人と違うのは極度の人見知りで、内向的かつ恥ずかしがり屋である。
側から見れば、優しい人間だと思われているような人みたいだ。
そんな私にも、話しかけてくれる人がいた。にも関わらず、いつも親の後ろに隠れ口を塞いでいた。
幼少期から、私は友達もできず、何に対しても臆病だった。
親、友達の顔色ばかりを気にして、自分の感情を表に出すことすらできなかったのだ。
この性格を直したい、改めたいと思いながらも克服できないまま中学にあがり、女性グループという組織の中で日々を過ごすことになっていく。
これが私には憂鬱で、心苦しくて仕方なかった。
女性グループが出来上がると、その組織を壊さず、上手く凌いでいかなくてはいけないのだ。
少なからず、女性なら皆そう、思うはず。
特に私は、悲観的な考えしかもっておらず、より一層その意識が強かった。
対人関係が苦手な私は、周りの意見に左右され、話を聞くだけ、頷くだけ、時には質問したりはしたが、話を飛躍することもできない。
案の定、あの子は何を考えてるのかわからない、不思議ちゃん扱いを受ける。
話さないのが原因で、時に誤解を招き、仲間外れにされることが多々あった。
独りでも孤独、グループ内でも孤独状態だった。
自分はなんて価値のない、情けない人間なんだと、、、、、。
学校では、自分の本来の感情の表現ができない分、家ではわがままばかりを言っていた気がする。
内弁慶であるが、家でも相変わらず孤独であった。
私には、2つ上の姉がいる。
容姿も頭も性格も、雲泥の差だ。
比べられることは非常に辛かった、苦しかったし、悲しかった。
言葉ではいい表せないくらいに。
孤独な学校生活で、唯一楽しめたのは恋愛であった。
私は、1人の男性に恋をした。
教室内から窓越しに廊下を見ると、友達同士楽しそうに歩いている所を見た。
無邪気に笑う所が頭から離れなかった。
その後、彼を目で追うようになった。
見た目も、声も私にはストライクゾーンだった。
いつしか季節は変わり、学年最後のクラス替えが行われたのち、クラス内でのグループ活動があった。
4人で机を並べての話合いだ。
まさかその彼と、同じクラスになり、ましてや同じグループになるとは思わなかった。
心底、嬉しいという感情が湧き起こっていた。
内気な私は話しかける事ができなかったが、彼から私に、話しかけてきてくれたのだ。
嬉しいさ半分、恥ずかしさ半分で感情が右往左往していた。
そして、これは運命なんだと思った。
そして、こんな私を、
好きだ。
と、言ってくれたのだ。
もう、脳内がおかしくなりそうだった。
言うまでもなく、その彼とお付き合いをし、初めてだらけで付き合うってなんなのか、わからなかったが好き。と、いう感情だけでやっていけた。
何よりも私を、必要としてくれる事が嬉しかった。
彼の、愛情表現は抜群で、日々癒されていった。
もうこの人の為なら死んでも構わないと、本気で思っていた。
私は、好きで好きで仕方なかったのだ。
だが、日が経つにつれ、事が一変する。
彼が、あまりにも束縛が強く、自己中心的で、わがままで更には、DV男だったのだ。
私はもう、奴隷かのように彼に服従していく事になる。
この頃には、私は社会人になっていた。
少しでも気に食わない事があれば手を挙げられ、引きずり回された。
寒空の中、裸で外に追い出されたこともある。
身体にはアザができ、ご飯もろくに食べさせてくれなかった。
私は身体中痛めつけられ、腕を上げることすら出来なかった。
我慢してでも生活の為に仕事には行っていたが、彼はろくに働きもせず私のお金で生活をしていた。
所謂、ヒモだ。
財布からお金を抜き、パチンコ屋へ行っていた。
お願いだから働いてくれと、伝えても納得してくれる事もなく、のうのうと生活していた。
私の方が全うに生きているのにどうしてか、私の方がダメ人間に思えてきた。
私は、毎日涙を流しながら、こらえながら仕事に行き、部屋に帰っては罵声を浴びせられ、DVされ、無理矢理、性行為をさせられた。
もう、洗脳されている。自分を見失ってしまったのだ。
身体は拒否しようとするのだが、心はもう狂っていた。自分では正しい判断ができなかった。
食べ物が無くなり、それをきっかけに実家に帰った。何も聞かないでと思いながら、食べ物を物色する。多分あの時、両親は特に何も思わなかったのだろう。
実家の部屋にこもり、悲痛の思いを友達宛に手紙に綴った。
この時、彼と一時的にも離れている事に、私は安心したのか、眠りに落ちた、、、、。
そして、彼の元に戻り、またあの苦痛な日常を過ごす事になった。
ある時、母から電話が鳴った。
あんた、大丈夫なんかね?
母は泣きながらそう訴えてきた。
以前、友達宛に書いた手紙を、そのまま置き忘れたことを思い出した。
ああ、私は気持ちが少し解放された。知られてしまったんだ。
誰かに助けを求めることさえも忘れていた。
それほど私の心は病んでいた。
彼に依存していた。
話せる事がこんなに楽になる事なんだ、誰かに頼ってもいいのかと安堵した。
両親、姉と共に私の様子を伺いに、毎日1時間近く離れた私のマンションに、わざわざ訪ねてきてくれた。
彼はまだ、私と一緒に暮らしている。
ある日、マンションの階段で口論になった。
口論と言っても彼からの一方的発言だったが、地べたに倒され殴られる寸前、偶然にも両親と鉢合わせになった。
そんな男とは離れなさい。両親ともに私に言ってくる。
正直私は、こんな男でも心から好きなんだ別れたくない。と、思っていた。
馬鹿だと言われてもわかってる。自分でもわかってる。
何度も何度も、もう1人の自分が、別れなさいって、私に言っていた。でも、もう自分を失ってるこの感情、洗脳されている自分にはどうする事も出来なかった。
両親は彼にも言ってくれた。
この子が貴方に何か悪いことしたのか?
彼は、両親の前では丁重に謝っていた。
しかし急に、彼の態度は一変。
私を引き寄せ、
殺す。
そして、自分もここから飛び降りて死ぬ。
え、どうゆうこと?もう意味がわからない状況になった。
そして、母が言った。
そんな勇気あるなら、飛び降りなさいよ。
もうやめて!私は、頭がパニックになった。
もう終わりだ。もう、終わりにしよう。
私は我にかえり、こんなにも私を、心配してくれる両親。周りに多大な迷惑をかけているという事に気づいた。2人だけの問題ではないんだ。
私は、少し冷静になった。
彼は間もなくして、私の部屋から出ていき他県に行ってしまった。
それでも彼を好だった気持ちを、抑えつつも平凡な日常を取り戻した。
時は流れ、その日は身も凍るような寒い日だった。昼くらいに何気なく見たポストに、手紙が入っている事に気づいた。
なんだろうと思い封を開けてみると、あの彼だった。
謝りたい、好きだ、他の人は考えられない。
会って話がしたい。何処どこに来てくれないか?
と、いう内容だった。
会いたい!ああ、私必要とされてる、私しかいないんだと、また自分を見失う感情に陥ってしまう。
心を落ち着かせ、冷静に考えた。また、同じ事を繰り返すのか、私は変わるんだ。そう自分に言い聞かせここは、我慢した。
我慢したつもりだったが、やはり気になる。
私は夜、車を走らせ、彼が待っている場所に様子を見に行った。
寒空の中、地べたに座っている彼を見た。
車に乗せてあげたい、話したい、抱きつきたい、そう思いながらもその場を通過した。
ふと、いつから待ってるんだろう。
ポストに手紙。昼から夜にかけて、ずっと待ってる事になる。
彼が、他に行く所なんてない。
胸が張り裂けそうだった。
結局、その日は会わずに自分のマンションに帰宅した。
その後、周りからの情報で聞いた話だか、彼は車で1時間かかる実家まで、自転車で帰った後、大風邪を引いたと。
それから、また新たに彼氏ができた。会社の同僚だった。
私なりに幸せに暮らしていた。
だが、そんな幸せは束の間だった。ある夜、また事件が起きた。
その日、私は灯をつけたまま、テレビをつけたまま疲れて眠りについた。
ふと、目を覚ますと周りが暗い、自分の身体が重い、服の中に手がある、目の前に誰かいる。
寝起きで朦朧としている。ああ、彼氏が遊びにきたのかな。なんて悠長に思っていた。
考えてみたら合鍵なんて渡してないし、こんな夜中に来るわけない。
誰?
知らない男が、私の部屋に侵入している事に気づいた。
声が出なかった。
人間は怖いと何も出来ないと、その時初めて思い知らされた。
殺される、助けて!心の中で叫んだ。
だけど、密室に2人きり、誰も助けてくれるわけではない。
無我夢中で泣いた。
大丈夫かと言わんばかりに背中をさすられた。ん?なんか違うぞ。
殺すわけではないのか、私はそう思い、もしかしたらなんとか回避できるかもと、脳内でありとあらゆる作戦を練った。
何度か、泣く真似をしてみた。三、四回は行っただろう。その度に、私の背中をさする事がわかった。
これはいける、この隙に。
いまだ!
私はとっさに玄関の方へ走った。
鍵が掛かっている。なんで!?
ガチャガチャ。
必死に鍵を開け外に出た。
追いかけてきたりでもしたら、、、。
ドンドン!
二つ隣の彼の部屋を叩いた。
開けて開けて!気づいて。
ドンドン。怖い。
追いかけてくる早く!
ようやく彼が気づいて、ドアを開けてくれた。
良かった、助かった。
彼の布団の中で震えが止まらなかった。
その後、警察に通報し、調査してもらった。
犯人は、私の部屋の隣の住人で、最近彼女に振られたらしい。
ベランダに出たとき、たまたま私を見て、女の子が隣に、住んでいるんだと思っていたらしい。
侵入口はベランダからだった。しかも、お酒を飲んでいた。
私の階は、七階だった。
その男は、誤って落ちたりでもしたら死ぬとこだったに違いない。
私は、母に電話をし、事情を話した。
母からは、大丈夫かね?
と言う一言で、一旦電話を切られた。
その時、母はパニックに陥っていたらしい。
またも、両親に迷惑、心配をかけさせてしまった。
私ってなんでこう、ついてないんだろう。周囲に迷惑をかけるやつなんだ。と、自分を責めた。
これを、きっかけに、私は実家に帰ることになった。この時の彼とは、遠距離という事もあり疎遠になった。
その後も、DV彼を忘れられないまま、別の男性と付き合う事になる。
だけど、なかなかDV彼のように本気で好きになれる人は現れなかった。どうしても比べてしまうのだ。
ただ、時間と共に忘れられた気分がした。
そして、何度も恋愛を繰り返すうち、わかった事がある。
私は、人と関わる事が苦手で、自分の思うことを発言しないが故に、相手に誤解を招き、嫌な思い、イライラさせる事に気づいた。
自己肯定感が低い、自分の存在意義って?自分って?自分自分ばっかり気にして相手のことなんて何にも考えてなかった。
そうだった、私、昔からそんな人間なんだ。
何も成長してないんだ。
周りが悪いんだ、自分は不幸な人間なんだと悲観し、自分自身を落としていた。
実家の近くで転職をし、新たに人生をスタートさせる事にした。
新たに入社した会社では、またもや、私の性格のせいで息が詰まる思いをした。
何をするにも嫌味を言われ、怒られ、萎縮してしまう自分がいた。
仕事も、人間関係も楽しくない、自分の居場所も無い。
対人と話をする仕事ばかりしてきた私は、人と話さない仕事を探した。
工場で働こう。
そう思い、その時できていた彼と一緒に、他県に飛んだ。
何故か、彼氏だけは出来る方だった。
人と話さないでいい。そう思えるとなんだが気が楽になった。
私は、彼と一緒にこの会社で頑張っていた。
しかし、また彼と衝突する事になる。
口論になり、決別し、結局私1人が、工場勤務を続ける事になった。
会社の従業員は男性が大半を占めている。
それから私は、仕事に専念し、認められ工場のラインのリーダーとなった。いろんな苦難があったが、今まで生きてきた中で、一番自分が輝ける、こんな幸せな事はなかった。
この会社では、私を慕ってくれる、意見を聞いてくれる、指示に従ってくれる。
今までの私、では無い。自分は出来る人間なんだと勘違いさせてくれた。
自己肯定感、承認欲求、意欲、意識、モチベーション全て上がっていった。
また、そんな私が自立している、輝いて見えるのか彼氏が出来た。彼氏というものには恵まれている。
私、変われたんだ。
こんなにも仕事、毎日が楽しい、自分に自信がついた。人間関係も衝突はあったが、上手くやれている。定年まで頑張る。と、心に決めた矢先、上司の一言で、私はまたどん底に落とされる事になる。
係長になってくれ。これは、辞令だ。
はい?
私はそんな器では無い。中には、私の事をよく思わない人もいれば、蔑む人もいる。
そこまでの能力は、私には持ち合わせていない。
頭が良い方では無かったし、知識も管理する能力もない。人脈はそこそこあったが、深く
は接していない。女性ということもあって、今までは助けられてきて、ここまで成長しただけの話だ。
それからの私は、今まで味わったことのない状況に戸惑い、仕事に追われ、上司にありとあらゆることを言われ追い詰められた。
また、昔の自分に戻されてしまった。
自分はダメだ、ダメ人間なんだ。
インポスター症候群だ。
上司からは、過大評価されているが、自分自身ができないと思い込んで、勝手に落ち込んでいた。
ある日、心も身体もボロボロになり、異変が起きた。
前から、身体がなんだがおかしいなと思い、色んな病院に行ってみたが、医師に原因がわからないと言われ、心の問題、身体が疲れてるのかと安易に考えていた。
それを、なんとか自分で対策をとり乗り越えていた。
だけど今回は、今までに無い、我慢できないほどの違和感、身体が動かない、身体のあちこちに痛みが移動する、関節が痛い、下半身に斑点ができている。
私の身体に一体何が起きてるのか、恐ろしくなった。
とりあえず皮膚科へ行き、下半身に斑点出来、どうしようもなく痛いと訴えた。
その他の症状も、併せて申告した。
生検を行い、調べてもらうと、
ベーチェット病
が発覚した。
私、難病だったんだ。
そう言えば、幼少期の頃から、身体に違和感がある事を、小さいながらに感じていた。
これが持病だったなんて。
会社勤務しながら、病院通いをし、合わせて精神科も行くようになった。
身体も心も、いう事を効かなくなってしまったのだ。
結局、私は会社を、辞める事になった。
そして、彼氏にも愛想尽かされ、またもや決別する事になった。
最終的には仕事も、お金も、彼氏も、何もかもを失ってしまった。虚無感でしか無い。
もう私には、何も残されていない無様な人生なのだ。
私は、感情という感情を忘れてしまった。
彼氏も要らない、結婚願望もない、他人にも、世の中にも興味が湧かない、TVも無心で観ている、何の考えも浮かばない。
この先どう生きていったら良いか人生のプランも無い。
日々、惰性で生きているだけ。
私は一体、なんの為に生まれてきたのか
私という存在って何なのか、人生についての、先生がいるならば、今の私に教えて欲しい。
最後に、今後生まれ変われるのなら、世の為、人の為、自分自身を誇れる人間になりたいと願う。
私の、生きる意味ってなんだろう。
生きる意味。 ポコタ @pokopen0203
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます