ギャァぁぁぁぁあっ

「子供騙しなんですけどね」


「怖ぇよ」


どうしようもなくカッコつけられない。


涙が止めどなく溢れて、手持ちのティッシュで拭ってる。


全部、怖くなかったねと、視界の端で親子が話してるのを気の所為だと思いたい。


「かっこ悪っ」


「可愛いと思うけど」


「可愛いってなんだよ。幻滅しただろ」


「いーえ。愛おしさが増しました」


「そうかよ」


ストレートな物言いに耳が赤くなるのを感じる。




「お店のグッズ売り場見たい」


仕切り直して、柳の希望のグッズ売り場へ行く。


このテーマパークのキャラクターグッズが並べられてる。


柳はキラキラと目を光らせて、一つ一つ丁寧に見ていった。


その中で、キーホルダーをじっくりみて悩んでたかと思ったら、急に俺の方を見た。


歴代の前カノを思い浮かべたら、経験則で買って欲しいって言われるのかな?


「鈴木君、このキーホルダーどう思う?」


「別に良いんじゃない?」


そのキーホルダーを持ってレジに向かう


「鈴木君も、そのキーホルダーを気に入ったんだっ!!」


ん?

前カノ達なら、自分の為に買ったと信じて疑わないんだが...。


「柳のだけど」


「え?なんで、鈴木君が買うの?」


「ダメか?」


何かを考える素振りをしてから


「ダメ......って訳じゃ。えっと、お店の前で待って貰っても良い?」


俺は彼女に言われた通り、お店の前で待った。


「お待たせ」


彼女はお店の袋を手に持っていた。


「これ」


俺が買ったキーホルダーを渡す


「ありがとう!はい、これ、鈴木君の分」


渡された物を確認すると、俺があげたキーホルダーの赤色バージョンだった。


「私は青で鈴木君が赤で、ペアのキーホルダーだね!」


「普通、赤青なら色が男女逆じゃないか?」


「だって、私はどっちも買おうと思ったのに、鈴木くんが早とちりして青を買っちゃいましたもん。買ってもらった方を持ちたい」


柳は、ぷくぅっと頬を少し膨らませて拗ねた。


「あ〜ごめ...ん?ありがとう」


「私こそ、ありがとうございます」


凄く、嬉しくて大事そうな笑顔を向けられて、思わずときめいてしまった。


父さんが言ってた。

男は単純って...いやいや、珍しいってだけだ。



園内を全て見回って、デート終わり。柳を家の前まで送る。


「ここまで、ありがとう」


「どういたしまして」


彼女は俺の右手首を掴んで、指先を軽く口つけた。


「はあ?」


「ご馳走様」


今までに見た事無い位に良い笑顔で自宅に入っていった。


意味が分からず、ただ分かるのは俺の顔が赤くなったのは夕日の名残だ。

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