第182話 すべてを変える、小さな声①
クラリスの発した言葉に、一番驚愕しているのはユリゼンである。
憑代であるクラリスは当然のこととして、ユリゼンの影響を大きく受ける。
いや、支配されているといっても決して過言ではない。
クラリスという人間を気に入っているユリゼンは、その意志を奪うことまではしていない。
だがその気になればそれも簡単にできてしまう。
事実、『聖戦』という
それが今、己の主たる
絶対の主が
己の主神であるアルビオンはもちろんのこと、
ユリゼンが絶対にできないことを、その憑代であるクラリスがやってのけた意味。
同時に「私大丈夫かしら? 左府様あたりに消し飛ばされるのかしら?」という不安も同時に得ているのではあるが。
憑代は己の一部、それが口にしたことはユリゼンの、ひいては主神たるアルビオンの責任でもある、と言われてしまえば返す言葉はないのだ。
驚愕しつつも内心の汗を止められない、相変わらずの
「具体的な対処法の伴わぬ
だが他の
それだけで冗談ではなくユリゼンなどは震え上がる。
いやユリゼンだけではなく、その声を聞いたすべての
『は……いっ――もちろんです』
それでも黙することは無く、己の意志を貫き通す。
その姿勢こそ、不動であった
そして主が興味をもてば、他の者からのすべての
「――聞こう」
聞く気にさせたクラリスの、まずは勝ちである。
あるいはヒイロを知るクラリスゆえに、
『みんなと話す時間をつくってください、一秒でも長く。抑えきれなくなるか、話しても無駄であれば――』
だが語る方法といえば、とどのつまりはただの説得。
冴えたやり方があるわけでもなんでもなく、ただ愚直に話をする時間を
しかしその声は懇願ではなく、文字通り提案――これが策たりえるという確信に満ちている。
そして、それでもどうにもならなかった時は――
「諦めるか」
『私が殺します』
ハッキリと告げる。
大切な相手がもう
倒すだとか、処理するだとか、そこを言葉遊びで誤魔化したりはしない。
それはその一度の機会を絶対に活かしてみせるという強い意志でもある。
最期に話をさせてくれなどという、
少なくともクラリスはその確信を持っている。
「――話してどうなる」
そのクラリスの確信に、
このどうにもならない、取り返しがつかない状況をひっくり返すたった一つの冴えたやり方を、年端もいかぬ少女の口から語られることを待っている。
『目を醒まさせてみせます。私たち人の意志は、想いは――天使なんかに身体を奪われたくらいで自由にできるものではないと証明してみせます!』
「根拠は?」
天使という異形に塗りつぶされたであろう人としての意識を今一度呼び戻す。
そして奪われた身体の主導権を再び取り戻させるということだ。
たとえ身体は天使に堕したとしても、意志は人のものにしてみせると。
当然、許可を与える責任者として
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