第7話 光安先生
「こんにちは」
高級な真っ白な絨毯のような柔らかな声だった。緊張していたはずなのに、驚くことはなかった。とても自然体で柔らかな女性が立っていた。細身で身長は唯より少し高いくらい。パンツにチェックのシャツを着ていて髪はセミロングくらいだろうか。
「春日井唯さん、かな?こんにちは、スクールカウンセラーの光安穂希です。今いいかな?」
柔らかな声はすぅーっと唯の中に入っていく。いつしか緊張は解けていた。
「良ければカウンセリング室に行って話をしたいんだけれどどうかな?二階にあるんだけれど、廊下を歩くのは嫌?」
光安先生はカウンセリング室の場所を説明し始めた。二階に上がって東側、北棟と南棟の渡り廊下にあるとのことだった。唯は緊張していた。正直準備室から出たくはなかった。でも、行ってみたいという好奇心は旺盛だったようだ。唯は行くと伝えた。
「ほんと?じゃあ行きましょうか」
光安先生の先導で唯は理科準備室を後にした。
「はい、どうぞ」
カウンセリング室にはソファ一組とテーブルがあった。壁には柔らかなタッチで描かれた山の絵が飾ってある。校舎の無機質な感じとは正反対の、柔らかい印象を与える壁紙が貼ってある。そしてそれらを暖色系の明かりが照らしている。
「じゃあ、座って」
言われるがまま、唯は光安先生の向かい側に座る。周りの音は聞こえてこなくてとても居心地は良かった。
「来てくれてありがとう。今日は春日井さんの今の気持ちを聞きたいなと思って、私から古賀先生にお願いをしました。古賀先生や他の先生に知られたくないことがあったらすぐに教えてね。秘密にするから」
「秘密にするから」が少しいたずらっぽい表情で、唯の緊張はほぐれた。
「じゃあまず、春日井さんの家族のことから教えてください」
初めてのカウンセリングが始まった。
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