第4話 理科準備室登校
唯の通っている神薙中学校は築数十年の古い学校だった。灰色くなった学校の壁は荘厳さというよりは薄気味悪い古めかしさを演出している。壁や窓枠には気が使われており、すり減って逆立った木が年季を物語っている。
唯の理科準備室登校は唐突に始まった。生徒たちの使う昇降口から入るのでは他の生徒と鉢合わせしてしまうかもしれない。そういった配慮から先生方の使う通用口を使うことになった。理科準備室は北棟の一階にあり、教室は北棟と南棟の二階と三階、通用口は一階の東側の北棟と南棟の間に合った。他の生徒と鉢合わせしないよう授業中に登校、唯は恐る恐る理科準備室へと滑り込んだ。
とても暗い部屋だった。過去数十年の理科の実験を蓄えているであろう棚たちは唯の背丈を優に超える。ガラスの張られた棚の中には試薬が並んでいるようだ。理科準備室の両隣にはそれぞれ第一理科室と第二理科室があり、授業の声が聞こえてくる。
その声に少し緊張する。
「こんにちは。よく来たな」
古賀先生は理科の先生らしく白衣を着て唯を出迎えてくれた。理科準備室の窓は北側を向いており常に薄暗い。古賀先生の表情は暗くてあまり見えなかった。
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