第3話 先生がやってきた

 唯は不登校のまま、中学の一年目を終えた。担任の先生とはほとんど会わなかった。クラスメイトは名前は知っていたけれど、どんな人かは知らなかった。知りたくもなかった。きっと、「春日井唯は学校に来ない」が当たり前になっているからだ。学校に来ない春日井唯がある日突然学校に来たら、一体みんなどんな表情をするだろう。唯は毎日そう思っていた。心の中では、学校に行きたくないわけではないのだ。


 中学二年生になった四月、担任の先生が変わった。古賀先生という男の先生で、去年は育休をとっていたとのことだった。その先生との出会いは唯にとって大きかった。


 「こんにちは!」

 さわやかな第一声から、唯はこの先生を好ましく思った。恋愛的な意味ではなく、ああ、何かが変わるかもしれない。そう思った。

 「今年度から春日井さんの担任になった古賀です。理科を教えています。早速なんだけど、春日井さん。理科準備室に来ませんか?」

 なんと変わった誘いだろう、と唯は思った。なんで学校でも教室でもなく理科準備室なんだろう。そりゃあまあ理科の先生だから?それなら納得が、いくようないかないような。


 今までの先生とは何か違うような気がした。なんとなくだけれど、ほんとになんとなくなのだけれど、学校に行ってみてもいいような気がしたのだ。


 唯は不登校を終えた。理科準備室登校になった。

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