第2話 鈴木陽葵と努力型
いつもと変わらない街並み、そして、そこを歩く私もいつもと変わらない──そう思っていた。あの先輩に出会う前は。
「やっぱり朝は余裕を持って出なくちゃね〜」
今は七時四十分。八時十五分までには登校しなきゃだけど、この様子なら絶対に間に合うと思う。そんな呑気なことを考えているのは、私──
「ううっ、んぅ〜」
誰かが辛そうに地面にうずくまっていた。というか、あの黄色の派手な髪色って、絶対うちの学校の人じゃん。私は話しかけるべきか迷ったけど、困ってる人を見過ごすわけにはいかなくて、声をかけた。
「あの……どうかしましたか?」
「うう………い、ね……い」
「えっ?なんて言いました?」
「ねむ……い」
はっ?眠い?そんなんで倒れてたの?なんだか助けようとした自分が馬鹿らしくなってきた。
「鞄の……中……薬……」
どうやら、鞄の中の薬を取ってほしいらしい。
「あっ、じゃあ、鞄の中、触りますね」
私は、鞄を開けて気づいた。そう、この人はうちの学校の風紀委員であり先輩である
「薬……早く……」
「えっ?!あっ、はい!」
私は速攻で薬を見つけると、
「ありがとう。えーっと……
「あっ、はい。鈴木です。どういたしまして」
「どうして、名前知っているんですか?」
「あら、不審に思われちゃった?これでも風紀委員だからね」
「風紀委員だというのは知ってましたけど、全員覚えるのは大変じゃないんですか?」
「んー、まあ大変だけど、みんなの名前がわかったほうがいいかなぁって。あっ、でも、絶対に覚えなきゃいけないって訳じゃないからね?」
どうやら、
「なんで、そんなふうに思えるんですか?」
気付けば私は、
「ふふっ、だって、学年関係なく仲良くなりたいじゃない?」
私はあ然としてしまった。だって、仲良くなりたいっていう理由で頑張っているんだから。
「でも、自分で待っているだけじゃ何も変わらないから」
「あの、無神経な質問ですみません。なにかあったんですか?」
私が聞くと、
「昔ね、私、友達がいなかったの。今では色々な子たちから、先輩って言ってもらえてるんだけどね。でも、いつかみんな、
そう言う
「大丈夫です先輩、私は先輩のことを慕っていますよ。だから、あまり頑張りすぎないほうがいいんじゃないんですか?」
「そうかしら?私、頑張りすぎてる自覚、ないんだけどなぁ」
「えっ?!ないんですか?!それは
「うそうそ、ちゃんと思ってるよ?ああ、無理してるなぁって」
「じゃあ休んでくださいよぉ!」
先輩はもう笑いに耐えられなくなっている。
「そういえば、学校はいいの?もうすぐ遅刻ギリギリだけど……」
「ええっ!す、すぐに行きますぅ!」
「ふふっ、変な子……」
私は焦りすぎていて、
五十音は、十人十色 五十嵐 怜 @yukiharamio
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