第15話 救援
「ぐあっ!?」
「ぎゃっ!?」
「うげっ!?」
「ひぐっ!?」
ヒュンヒュンヒュンと、空気を切り裂く音が頭上から聞こえてくる。
頭の上に弓矢が飛んでいるようだ。そして、私達を襲った盗賊の悲鳴やうめき声が次々と聞こえる。あちこちで、バタバタと地面に倒れていく男たち。
「ひっ!?」
私は怖くなって、頭を抱えて身体を縮こませる。地面の上で丸くなった。無意識に私の口からも、小さな悲鳴が漏れる。早く終わってくれと、祈ることしか出来ない。
唐突に、攻撃の音が止まった。
「うぅぅぅ」
「いたい、いたいぃぃ」
「い、一体、だれだぁ……」
どれくらい時間が経ったのだろうか。ほんの数秒なのか、それとも数分ぐらい経過しているかもしれない。私の時間感覚は、恐怖によって狂ってしまっていた。
「大丈夫か?」
恐怖で身動きが取れず、頭を抱えて丸まったままの状態で動かずじっとしていると、先ほど地面に伏せるように言ってきた若い男の声が間近に聞こえてきた。私は、顔を上げる。
「あっ……」
「ん?」
視線の先に、褐色肌で黒髪の青年が立っていた。ひと目見ただけですぐ、この国の人間ではないことが分かる見た目をしている。
スラリとした長身。精悍でありながら高貴そうで優美な顔付き。そんな彼の金色の目が、私の顔をジッと見つめてくる。カーっと、顔が熱くなるのを感じた。
こんなに美しい男の人の前で、地面の上で寝転がっているだなんて、みっともない姿を見られてしまった。
「は、はい! だいじょうぶです」
「危ない!」
急いで立ち上がろうとする。だけど、足に力が入らず倒れてしまいそうになった。その瞬間に、私の身体は彼の腕に支えられていた。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、大丈夫だ。それよりも、落ち着いてくれ」
「は、はい……」
彼の身体にもたれ掛かってしまった。慌てて離れようとするけれど、やはり足には力が入らない。彼に支えられたまま、顔を伏せる。
だが、すぐにバッと顔を上げた。私は、周りを見渡す。
「他の皆は!?」
「大丈夫です、カトリーヌ様。私達は無事です」
「幸運なことに、誰も怪我していません」
「よかった……!」
ゲオルグの返事を聞いて、心の底から安心した。他の皆も無事のようだ。
全員が無事に生き残ってよかった。
「それよりも、カトリーヌ様が心配です。盗賊に殴られていましたよね? 大丈夫ですか? 痛みはありませんか?」
「私も大丈夫。酷いことになる前に、この人に助けてもらった」
「間に合って、本当に良かった」
心配するゲオルグたちに答える。痛みもないので大丈夫だ。
会話している間に、落ち着いてきた。自分の足で立てるようになったので、助けてくれた彼から離れて感謝を伝える。
「危ないところを助けていただき、本当にありがとうございます」
「俺の名は、ラインヴァルト。ファルスノ帝国の人間だ。よろしく」
「私は、カトリーヌ。よろしくおねがいします、ラインヴァルト様」
私達は、挨拶を交わした。
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