第13話 私の命を懸けて
「オイ! メイドの女が逃げ出さないように縛り付けろ。男は殺してもいいぞ」
「「「りょうかい!」」」
動けなくなった馬車の周りを、盗賊たちが取り囲む。黒色の馬に乗った盗賊たちのリーダーらしい男が、剣を振り回しながら部下に指示を出した。
このままでは、私のことを助けてくれたゲオルグたちが目の前で殺されてしまう。マイユたちも、悲惨な目に遭う未来しか想像できない。
どうにかしなければ。
こんな状況に陥ってしまったのは、私の不運が原因なのかもしれない。
少なくとも、私を助けようとしなければこんな場所で厄介な盗賊と出会ってしまうこともなかったはず。
せめて最期は、助けてくれた彼らをどうにかして逃したい。命を懸けて、ゲオルグたちを助けたい。
そう思った私は、足元に偶然転がっていた弓矢を拾った。どこから飛んできたのか分からないが、盗賊たちが放った矢だろう。矢の先に鋭く尖った金属が付いていた。これが身体に刺さったら、死んでしまうだろう。
私は矢先を片手に握り、盗賊たちの前に出ていった。
「待ちなさい!」
「ん?」
「誰だ?」
「おい、女だぜ。馬車の中に隠れてたのか!」
「アイツも捕まえろ」
盗賊たちの視線が私に集中する。下品な視線で、ジロジロと舐め回すように身体を凝視された。気持ち悪いが、今は耐える。
「お、お嬢様!?」
「なぜ、出てきてしまったのですか……ッ!」
ゲオルグたちも驚いていた。なぜ、馬車の中に隠れていなかったのか、と。だが、隠れていてもいずれ見つかってしまうだろう。なので、自分から前に出てきた。皆を逃がすための作戦を行うために。
「ちょっと待て。アイツ、何か持ってるぞ」
「弓矢じゃねえか」
「自分の喉に向けてるぞ」
「あれで、何をする気だ……?」
持っていた弓矢を、自分の喉元に突きつける。彼らも気付いたようだ。このまま、コレを喉に突き刺せば命を絶つことが出来る。自分の命を取引の材料として使う。
「私はラフォン家の娘です。私の身に何かあれば、我が家が黙っていないはずです。兵を出して、貴方達を滅ぼすでしょう」
「ラ、ラフォン家だって!?」
「ヤバイ! 大貴族じゃねぇか!?」
ラフォン家という名前に、恐れをなす盗賊たち。まだ彼らは、私がラフォン家から追い出された事を知らないようだ。私にとっては、好都合。
「彼らを見逃してくれるのなら、私は貴方達の言うことを聞きます。断るのならば、ここで命を絶ちます!」
「オイッ! ちょ、ちょっと待て……!」
リーダーらしい男が手のひらを前に出し、私の行動を必死で止めようとしてきた。交渉の余地がありそうだ。
「彼らを解放するの? しないの? どうするの! 早く答えなさいッ!」
「ぐっ、うぅ……」
恐怖で身体が震える。だけど、それがバレないよう必死に押し殺して、盗賊たちに判断を迫った。
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